5.関索の投影を確認する ~楊雄~
楊雄のあだ名は「病関索」で、『三国志演義』に登場する関索に由来します。2人の関連性を探るため、どういった人物か整理します。
(関索)
・『三国志演義』に登場する架空の人物で、史書には名前が見えない。
・関羽の息子を名乗り、南征に向かう諸葛亮の元に登場する(『三国志演義』第87回にて)。しかし、しばらく戦いに従事した後、物語から姿を消す。
・『三国志平話』にもわずかながら登場する。
・『花関索伝』という、フィクション性が高い作品の主人公である。
・『花関索伝』では武器として黄竜槍、青龍偃月刀を使って活躍し、その姿は「上下不長四尺五(身長は四尺五寸に満たない)」「身材不抵拳来大(体は拳ほどの大きさもない)」と記されるほど小さい。
(楊雄)
・初登場時「あっぱれの生まれつき、からだ一面のあいずみのようなほりものをむきだしにして、二つの眉は鬢に入り、鳳の眼は天をさす、うす黄色い顔にはほっそりと何本かのひげ」「顔が少し黄いろいところから、人人呼んで病関索の楊雄」と形容される。(岩波文庫『完訳水滸伝』巻の44)
・武器として棒を使う
楊雄は「黄色い顔の関索」として「病関索」というあだ名がついたものの、両者を比べても明確な共通点はありません。
この件については、宋の時代に盗賊や軍人、相撲取りの中には、「朱関索」「賽関索」「小関索」のように関索を含むあだ名を持つ人物がいたという指摘があります(※2)。このことから、関索は架空の人物でありながら、あだ名として使われるほど、民衆に一定の人気や知名度があったことがうかがえます。
同様に楊雄についても、関索にあやかったあだ名がついていると考えられそうです。もちろん、楊雄は天罡星[天コウ星]の一人ですので、ある程度の実力や人気があることから、単に関索の名前を使ったのではなく、「黄色い顔した関索のようにすごい人物(病関索)」とされたのでしょう。
楊雄は関索と明確な共通点はないものの、関索の人気や実力に比されて「病関索」というあだ名がついたと考えられます。
この一回の内、
三国志の人物を投影しているが、能力に限定される好漢一名
楊雄
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(八・呂布の投影)」に続く
(関連ブログ)
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(一・はじめに)」
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(二・諸葛亮の投影)」
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(三・関羽の投影 前編)」
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(四・関羽の投影 後編)」
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(五・張飛の投影 前編)」
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(六・張飛の投影 後編)」前回
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(七・関索の投影)」本ブログ
「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性(八・呂布の投影)」次回(続き)
(※1)
本稿ならびに一連の記事「歴史人物が投影された梁山泊の好漢が持つ共通性」において、「好漢」は36の天罡星[天コウ星]、72の地煞星[地サツ星]を宿星とする108人を指します。
(※2)
金文京『三国志演義の世界【増補版】』(東方書店)などでの指摘を参考にしました。
ちなみに「賽関索」は、『水滸伝』の成立に関係するといわれる『宋江三十六人賛』や『大宋宣和遺事』において、楊雄(『大宋宣和遺事』での名前は王雄)のあだ名として使われています。