ダウンタウン のGrand St.と5th St.の交差点からMetro Rapid #720のバスで45分ほどでしょうか。

Wilshire Blvd.をずんずんと進んでFairfax Ave.との交差点のところにある自動車博物館 のすぐ近く、

そこにこれまた実に大きな美術館があるのですね。


略称LACMAと言われる「Los Angeles County Museum of Art(ロサンゼルス・カウンティ美術館)。
街灯をずらり並べたオブジェ越しに見る建物もなかなかに斬新な美術館であります。


街灯ふうのオブジェがお出迎え


折りしもレイバーデーの祝日でもって、

入り口では入場券を無料配布しているというラッキーに廻りあいました。
建物の狭間ではコンサートも開かれていて、まさしく祝日気分というわけです。


レイバーデーの祝日ムードでコンサートも


展示の方はといいますと、現代美術、企画展、ヨーロッパ絵画、アメリカン・アート、
さらに韓国美術、日本美術とそれぞれが異なる建物に収まっているという具合ですから、
ここもまたじっくり見るには間違いなく1日コースでありましょうね。


あいにく企画展は開催しておりませんでしたが、ともあれまずは現代美術から始めて、
ヨーロッパ、アメリカと回っていくコース取りを思い描いて、作品とのご対面開始です。


単に段ボール(中にはコーンフレークの箱が詰め込まれていたらしい)が積み重なって

無造作に床に置いただけといったふうでありながら、

なんとはなし関心してしまう(?)ウォーホルの作品や、

ジェフ・クーンズ作品などはコンテンポラリーといってびっくりさせられるというよりは、

スタイリッシュでもあり、また妙にカワイイ感さえあったのですね。
(こちらのjeffkoons.com をご覧いただくと、イメージをつかんでいただけるかもしれません…)


ところで、ヨーロッパ絵画の方に移りますと、

「んもう、どうしましょ!」てなくらいに素敵な作品が目白押し。


例によって一端を紹介されたくらいでは、渇きが癒せないんではないでしょうかね。

順不同に行っちゃいますけれど、まずはフラゴナールです。

ジャン・オノレ・フラゴナール「Winter」



ロンドンのウォーレス・コレクション で見た「ブランコ」のように

いかにもロココ的貴族趣味を反映しているフラゴナールですけれど、
この「Winter」(1755年頃)という一枚はユニークですよね。


冬の嵐に進退窮まった女性の傍らで二人の子供が果敢に挑んでいくといったふうで、
絵画的というより漫画的なその表情からは、

ついついノーマン・ロックウェル を思い出したりしてしまいます。


クェンティン・マサイス工房「聖母像」



こちらは見るからに「聖母像」でして、穏やかに祈りを捧げているようすがよく伝わってきますね。
ですが、とりわけこれに目を向けたのは、クェンティン・マサイスの工房による作品だというからなのですよ。


クェンティン・マサイスは伯爵夫人をおそらく実物を無視してことさら醜く描いた絵で有名ですので、
その工房の作とは言ってもこれだけの聖母像が描けるわけですから、
あの醜悪なる婦人像がいかに意図的であったかと思い知るわけです。


でも、そうしたことに気づいてしまうと、

聖母像の中にあの醜悪な婦人像の影が見えてきてしまうのには困りものでしたが。


そして、ここでも「おお、ここでお目にかかれましたか!」という一枚。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール の「マグダラのマリア」でありますが、闇が深いですねえ。

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール「マグダラのマリア」


さらに、コローモネゴーギャン と三連発。

カミーユ・コロー「Seine and Old Bridge at Limay」(1872年)


クロード・モネ「In the Woods at Giverny」(1887年)Chain reaction of curiosity



ポール・ゴーギャン「The Swineherd」(1888年)



コローはいかにもですが、モネとゴーギャンは独自の個性を発揮するちょっと前と言えるかもですね。

モネはだんだんと茫洋となっていく前ですし、ゴーギャンは思いのほか厚めの塗り具合。


別の画家の名前を言われれば「そうかも?」と思ってしまう一方、
やはりそれぞれに萌芽を宿していることが見てとれますよね。


これ以外にも20世紀初頭の、ピカソブラックマティスミロ などなどの作品の数々に目を奪われ、
ついでに写真撮影などしつつも、ボケボケになってしまったのが何とも残念ではあるものの、
後でまた図録でもって、記憶を甦らせるとしますか(って、これは一人ごとです)。


アメリカンアートのところにも、
その大自然を対象として独自発展した風景画を中心に素晴らしいものがありましたけれど、
違う意味で「らしい!」と思しき一枚をピックアップしてみましょう。


トーマス・ベントン「The Kentuckian」


トーマス・ベントンの「The Kentuckian」という作品(1954年)。
デビー・クロケットなんかを思い出させるアメリカらしい人物像ですが、
これに「The Kentuckian」というタイトルが付くのは、
ケンタッキー ってのは何かアメリカ人の心の故郷的なところがあるんでしょうか。


それからディズニー のミュージカル「美女と野獣」(ミュージカルしか見たことないもんで…)に出てきて、二カッと笑う姿が印象的なガストンをも、ついつい思い出してしまったり。


と言うことで、かなり端折ってしまったLACMAひと回りですけれど、
ここもまたたぁっぷり1日かけて見るところでありましょうなぁ。