本日の読書感想文


 

 

長いコトバは嫌われる

横田伊佐男

 

「まだ終わらない」。その人の話は、私たちの想像を超えて続いていた。2020東京オリンピックの開会式での、国際オリンピック委員会・バッハ会長のスピーチだ。この方が、「長いコトバは嫌われる」ということを、知らないはずはないだろう。その場で思いつきで話したわけでもなく、きちんと原稿も用意してあったはずだ。

 

なのになぜ、長くなってしまったのだろうか?まさか、嫌われたかったのか?もしくは、オリンピック委員会の長である自分なら許されると思ったのだろうか?私は、そういう立場でもないし、あえて嫌われる必要はないので、好かれるスピーチがしたい。そしてできれば感動を呼びたい。そんな思いでこの本を手に取った。

 

 

 言葉はコミュニケーションのツール

まず、押さえておきたいのは、言葉はコミュニケーションのツールであるということ。ツールだから、目的があるし、その目的が相手に伝わらなければ意味がない。伝えるためには、伝えるための”型”がある。

 

起業家仲間と話していると、文章を書くのが苦手だという人が必ず一定数いる。文章が書けない原因は大きく分けて2つある。1つ目は、書く内容が見つからないこと。2つ目は、書く順序がわからないこと。「文章を書くのが苦手だ」という人に限って、よく喋る人が多い。

 

実は私はおしゃべりが苦手だ。過去に知人とドライブに行った時に「何か喋って」と言われて、何を喋ればいいのかわからずに、大変困った記憶がある。それはトラウマになって、今もドライブが好きではなくなってしまった。だから、私からしてみると、喋る内容があるということは素晴らしいことなのだ。それでも「書けない」と言うのは、書くための順番、つまり”型”を知らないからだろう。

 

 

 伝わる文章を書くコツ

本書によると、伝わる文章を書くためには、まず、”誰に何を”という主旨を決める必要がある。そして、”誰を”を明確にするためには、相手を知らなければならない。次に、大多数の人がわかりやすい”鉄板順番”で伝えることを考える。さらに、相手に印象を残すためには、言葉を短く磨かなければならない。となると、だらだらおしゃべりとは違うものなのだ。

 

これを踏まえて、先ほどのバッハ会長のスピーチを見てみると、弁解の余地が出てくる。例えば、”誰に”の部分だが、こういった挨拶の場合、大会関係者、選手、観客など色々な人を対象にしているので、”誰に”が絞りきれないのだ。しかも、”何を”の部分も、要は関係者への感謝と選手頑張れということなので、かなり漠然としてしまう。なにか象徴的なエピソードでもあれば良かったのだが。

 

今回のスピーチは、何かを主張するスピーチではなく、”挨拶”であるから難しかったのだ。これが、多くの人が悩む挨拶の特徴だ。バッハ会長のケースは、少々自己顕示欲が強過ぎて、自分が伝えたいことを順序も気にせず伝え続けたことが問題なのだ。せめて短いメッセージ性のある言葉でもあれば、印象にも残っただろうに。

 

とはいえ「では添削してみて」と言われたら、なかなか悩ましい。挨拶に限らず、文章術の本は、世の中に溢れている。つまりは、”良い文章”というのは難しいし、学ぶ必要がある人も多いのだろう。この本はストーリー仕立てになっているので、読み進めていくうちに主人公を応援したい気持ちが芽生え、一気に読めてしまう。しかも、例題として上がっている新店舗オープンの告知文は、実際にあった話だと聞くが、こんな文章が書けるようになったら人助けまでできてしまうのだ。

 

 

 行動こそが人生を変える

本は読んだだけではなにも変わらない。本は自分のために読むインプットなので、自分が行動することがゴールになる。一方の文章は他者へのアウトプットなので、他者が行動することがゴールになる。だから、”まず共感させること、次に納得させる、最後は行動させる”という鉄板順番がある。

 

どちらにも共通しているのは、”行動”に落とし込むこと。行動こそが人を動かし、人生を変えるのだ。

 

 

 さいごに

私もいろいろな場面で、言葉を、文章を、書いたり話したりしているが、自分の言葉で誰かを応援できたり、誰かを勇気づけることができたりしたら、こんなに嬉しいことはない。言葉ひとつで世界を変えることができるのだ。世の中は名作コピーで溢れている。ぜひとも言葉を磨いて、”コトバの力で感動を起こす人”になりたいと思った。

 

 

 

 

人生は1度きり。だから思いっきり楽しむべきよ。

by ココ・シャネル

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