蒼穹の月
細くほそく尖って
刺さりそうな月。
淡いあおむらさきの空に
頼りなげに光る
月に気をとられている間に
空はどんどん
夜に支配されて
それにしても
早すぎるんじゃない
もうネオンの似合う暗がりが
街のあちこちに落ちてる
日が昇るときと
日が落ちるときは
こんなにも静かなのだと
知らなかった訳じゃない
秋の匂い
日向はとても暖かい。
雲のない透明な空。昨日までの湿気はどこに行っちゃったんだろう?
でもまだあの高いたかい、耳がつぅんと遠くなるような空ではない。
墜ちていっちゃいそうな。
バイト先に通じる道添いにはポプラが並んでいる。
大きな葉っぱが道にぱさりと落ちている。忘れられた枕カバーみたいに。
期待を込めてゆっくりと踏む。時間をかけて踵から爪先へと。
くしゃ、という音をたてる。
ああ、まだだった。しゃりしゃりに乾くまでにはまだ時間が かかるのだ。
綺麗に髪を結った外国の妊婦さん。
盲人の杖をもってる人。
自転車に乗り前髪を吹かれているおじさん。
みんなが久しぶりの秋の日差しに包まれている。
三角関係
いつもどんなに気を引こうと手を振ったり口笛を鳴らしたりしてもつんと振り向かない猫がいる。
ベランダの柵の一番すみっこにはんこみたいな足を置き首筋をうんと伸ばして私を通り越したどこかや私のいないすすきのむこうのすずめたちをみてる。
猫は口元に意志があってほんの少し微笑むようにぴったり閉じてる。そんな口元が下から見上げる私には小さな決意の錠みたいにみえる。
その子が今日はメズラシク甘えた声をあげた。
今にも降りていきそうに真直ぐ見つめる先には花に水をあげるお母さん。
振り仰がず熱心にじょうろを傾けるお母さんの気を引こうと細く呼び掛ける。
まるで私がいつもやるみたいに。
そんな光景を、葉だけの紫陽花が今日もみていた。
彼らは午後の授業をうけない
大気はしっとり濡れていて、
呼吸が楽だ。
翼の白い小鳥が追い掛けっこをしている。
他の群れに阻まれても止めず
立ち止まっては羽に觜をうずめる。
やはり羽は重たくなるのだろうか。
薄い雲の下で
あちこちからさえずりが聞こえる。
会話なのか、
ひとりごとなのか、
歌なのか。
どこかで洗濯機の音がする。
かすかに、でも低く空気に混じりあって、
地響きにも似て。
見えない小さな風に翼を翻し、
あなたたちはどこまでゆくのだろう
潜水
ちゃんと社会復帰しなくてはな。
ちゃんとお買物をして、部屋も変えて、灯りをともさなければ。
多分ずるずると堕ちることは簡単だ。このまま布団をかぶって部屋を閉ざしていればいいんだもの。誰も邪魔しない。都合よく出掛けて疲れたらまた舞い戻ってくればいい。
きっと暗やみでばかり目を開けていても、日なたに出て いったら目が眩んでしまう。
聞こえるのは換気扇から漏れる音だけ。
私とは関わりのない人のくぐもった笑い声だけ。
そんなの、イヤなんだ。
ずっとこんな風にしているつもりはないんだ。
だから。