俯瞰
残業を頻繁にするようになって、色々とわかったことがある。
一番よかったのは早く帰ることにそんなに激しく自責の念を抱かなくたっていいんだとわかったこと。いつまでも残ってたって、そんなたいそうな量の仕事なんかできないんだということも確かめることができた。
いや、だからといって残業なんて意味ないよなというわけでは勿論ない。ゆとりができる。プラスアルファに手が出せるから。細かいやり残しの整理もできるし。昼間とは違うテンションの皆さんが見られるし。
やはりひたすら真面目に書類とにらめっこしているからそのテンションに加わって親交を深める…というようなこともないのだけれど。
まぁ頑張れる時だけ。
帰りに久しぶりに元同僚Aちゃんと電話で話して嬉しかった。
私たちって何だかこそばゆい。お互いすごい好きだと思うんだけれど妙な距離があるんだよなぁ。心地の悪い距離ではないけれど。照れ合ってるみたいな。
…なんて書くと変な二人みたいだな。
きっとお互いまだわからないところもあるけど全面的におそらく大丈夫だ、という安心もありつつ、礼儀を重んじたいんだろうな。大事にしあっていると思う。戦友だし。
私たちは似たところがある。わかっているからこのぎこちない距離を苦にすることもない。
いつも私の才能を私以上に信じ、的確にアドバイスをし、お調子者の私に程よく勇気をくれるひと。
頼むから早く復活して稽古に一緒にいこう。
Aちゃんから聞いたのだが、私が可愛がっていた生徒が劇団Sをクビになり意気消沈して踊りをあきらめてしまったらしい。
そんなことで、とすごく惜しいと思う。劇団Sよりもいいところでやっていけるのに。とても可能性のある子で…
でもそういうのって自分にはなかなかわからないし人に言われても信じられないものだ。実感して勝ち取るしかないけれどその過程にはグアムの海岸のなまこほどの数の挫折を踏みしめてゆかなければならない。
第一歩は確かに大きかったかもしれないけど…滑るの早すぎるよ!滑ったのは、たぶん行くべき道じゃなかったからなんだ。
ああ、あのまま手離さないでいられたらな…
でも私に何ができる訳ではない。やはり自分が決めることだから…近くにいたらおせっかいもやけるのだけれど。
また霧が晴れたら踊りたくなるかもしれないもの。
お腹が空いた。
夏バテ知らずはこの食欲から、なんだろうな。
一番よかったのは早く帰ることにそんなに激しく自責の念を抱かなくたっていいんだとわかったこと。いつまでも残ってたって、そんなたいそうな量の仕事なんかできないんだということも確かめることができた。
いや、だからといって残業なんて意味ないよなというわけでは勿論ない。ゆとりができる。プラスアルファに手が出せるから。細かいやり残しの整理もできるし。昼間とは違うテンションの皆さんが見られるし。
やはりひたすら真面目に書類とにらめっこしているからそのテンションに加わって親交を深める…というようなこともないのだけれど。
まぁ頑張れる時だけ。
帰りに久しぶりに元同僚Aちゃんと電話で話して嬉しかった。
私たちって何だかこそばゆい。お互いすごい好きだと思うんだけれど妙な距離があるんだよなぁ。心地の悪い距離ではないけれど。照れ合ってるみたいな。
…なんて書くと変な二人みたいだな。
きっとお互いまだわからないところもあるけど全面的におそらく大丈夫だ、という安心もありつつ、礼儀を重んじたいんだろうな。大事にしあっていると思う。戦友だし。
私たちは似たところがある。わかっているからこのぎこちない距離を苦にすることもない。
いつも私の才能を私以上に信じ、的確にアドバイスをし、お調子者の私に程よく勇気をくれるひと。
頼むから早く復活して稽古に一緒にいこう。
Aちゃんから聞いたのだが、私が可愛がっていた生徒が劇団Sをクビになり意気消沈して踊りをあきらめてしまったらしい。
そんなことで、とすごく惜しいと思う。劇団Sよりもいいところでやっていけるのに。とても可能性のある子で…
でもそういうのって自分にはなかなかわからないし人に言われても信じられないものだ。実感して勝ち取るしかないけれどその過程にはグアムの海岸のなまこほどの数の挫折を踏みしめてゆかなければならない。
第一歩は確かに大きかったかもしれないけど…滑るの早すぎるよ!滑ったのは、たぶん行くべき道じゃなかったからなんだ。
ああ、あのまま手離さないでいられたらな…
でも私に何ができる訳ではない。やはり自分が決めることだから…近くにいたらおせっかいもやけるのだけれど。
また霧が晴れたら踊りたくなるかもしれないもの。
お腹が空いた。
夏バテ知らずはこの食欲から、なんだろうな。
片翼の蝶/カノン
今日は満月だったのかなぁ?
綺麗なおつきさまはずっと私を追い掛けていた。
この暗い空をどこかに渡ってゆく鳥。迷子じゃあないよね?帰りつける、風をよけるおうちはあるよね?
死のことを考えた。
自分が死を望む、というようなことではなくただ漠然と死のことを。
あのおつきさまみたいに、いつも私の左のほっぺから目を離さずにいるんでしょう?ずっとひたと、時にはくすぐったいような魅力的な音を掻き鳴らしながら。
たぶんそんなに欲望を撒き散らしたりはせず、ただそこに。
一緒にうまれてきた私を、きっとずっと見守ってきたのね。
静かに。
息をすることもなく、もしかしたら私がこうして見つめなければ存在することすらないかのように思わせて。
ずっと私の隣にいて、
あなたは何を見るんだろう。
冷たい指を私の首にひたす時、あなたは何を思い出すの?
月からは絶えずハミングに似たうたが流れていて、だから私はしょっちゅうその音楽に気付き振り仰いでしまう。
ふと氷のようなすべらかな指が私の顎をとらえ、融けて、音で満たし、増殖する。
あたしを待ってるのは
繰り返すこの旋律
綺麗なおつきさまはずっと私を追い掛けていた。
この暗い空をどこかに渡ってゆく鳥。迷子じゃあないよね?帰りつける、風をよけるおうちはあるよね?
死のことを考えた。
自分が死を望む、というようなことではなくただ漠然と死のことを。
あのおつきさまみたいに、いつも私の左のほっぺから目を離さずにいるんでしょう?ずっとひたと、時にはくすぐったいような魅力的な音を掻き鳴らしながら。
たぶんそんなに欲望を撒き散らしたりはせず、ただそこに。
一緒にうまれてきた私を、きっとずっと見守ってきたのね。
静かに。
息をすることもなく、もしかしたら私がこうして見つめなければ存在することすらないかのように思わせて。
ずっと私の隣にいて、
あなたは何を見るんだろう。
冷たい指を私の首にひたす時、あなたは何を思い出すの?
月からは絶えずハミングに似たうたが流れていて、だから私はしょっちゅうその音楽に気付き振り仰いでしまう。
ふと氷のようなすべらかな指が私の顎をとらえ、融けて、音で満たし、増殖する。
あたしを待ってるのは
繰り返すこの旋律
秘密基地
片付けをした。
片付けって一日じゃ終わらない。飽きないうちにおわったことがない。
音楽を聴いて、写真をひっぱりだして、レシートに心をひきとめられたり。
分類、いるいらないの仕分け、燃える燃えない。あちこちの山をまたぎながら子供の笑い声に耳を傾けたり。
もう使っていないしこれからもおそらく使わないだろうものたちはまた元の位置に納められて安堵のため息をつく。
そうでしょ?
こっそり。
えーと、あれもこれも。
駄目だ、たけのこの皮で創られたふくろうひとつ、捨てることができない。
薄暗い雨の日、傘をいくつも積み重ねてその下に自分だけの部屋をつくるのが好きだった。
傘を透かして肌の色を染める光。
山をやまのままに、
これから稽古だ。
★ ★ ★
写真は仲良くおでこを突き合わせている男の子を上から。
片付けって一日じゃ終わらない。飽きないうちにおわったことがない。
音楽を聴いて、写真をひっぱりだして、レシートに心をひきとめられたり。
分類、いるいらないの仕分け、燃える燃えない。あちこちの山をまたぎながら子供の笑い声に耳を傾けたり。
もう使っていないしこれからもおそらく使わないだろうものたちはまた元の位置に納められて安堵のため息をつく。
そうでしょ?
こっそり。
えーと、あれもこれも。
駄目だ、たけのこの皮で創られたふくろうひとつ、捨てることができない。
薄暗い雨の日、傘をいくつも積み重ねてその下に自分だけの部屋をつくるのが好きだった。
傘を透かして肌の色を染める光。
山をやまのままに、
これから稽古だ。
★ ★ ★
写真は仲良くおでこを突き合わせている男の子を上から。
向かい風に片目を瞑り
もうそろそろ起きたら、
と少年は言う
あのカーテンの隙間からさす光をご覧よ。
曇ってはいるけれどそれは確かに朝の光で
確かに世界は動いていた
ぐいぐい手首を引く少年を宥めながら
膨らむカーテンに触れ
風が醒ますのを待つ
色んな計画があったっけ
たぶん憧れみたいに
だけど憧れだけじゃ嫌で
きっと夕闇がきたら余計にそう思う
いつのまにか窓から飛び出した少年は
頬を紅潮させて空ばかりみてる
ほら、みてよ。
うん。
私も歩みを合わせて
次第に駆け足になる
みてご覧よ。
こんなに。
追い付けないくらい足が速くて
だけど世界に目覚めた足は許してくれない
みてご覧よ。
あんなに!
ずっと空を指差し、
ねぇ、
どこまで行くのよ
絡まりそう。
なのに笑いだしてしまう
喘ぎながら
空の全部と光のすべてを
このからだにおさめようと思う
うん、そうだ
あの少年のうしろすがたがあの蒼い空に霞んでいっても私は負けないくらい笑いながら追い掛けて、
そのからだを抱き締めよう
その白熱のからだを。


