うたかたの秘密
たまねぎみたいに剥いで、はいで見つけたものは百でありゼロでもあった。
闇と透明がひとしい存在に見えるのと同じ原理。
全部の感情をごちゃまぜにされながら私はそれをてのひらでつつんだ。
すべての感触とすべての色と、すべての音と、
そしてそっくりそのまますべての要因の、反対側。
すべてがない、隙間でさえない、がわ。
あらゆるものが混ざってしまったからいちばん純粋になってしまった。
なにもかもが含まれているからそこから私がうみだせることばはない。
深くふかく潜っても私がここに持ちかえれるものは、そのたましいの見た、夢にすぎない。
でも私は、秘密を知ってしまった。
たぶん。
私の知りたいなぞやずいぶん遠くのこと、一番透明なものと一番の深い闇。
絶対と永遠。
光と時間。
これは螺旋のように降りてゆく旅。
冷えた地下水脈の街
夢。
バスに乗っている。
中央駅から離れていく景色を見て、フランスだと思う。
そのバスはツアーのバスで、今からお薦めのレストランに行くことがわかっているが向かう先は以前の経験からいってあそこだろう、と思い当たる店がある。いかにも観光客むけっぽいお店。
白っぽく翳んだ赤い壁のお家が立ち並んでいて、そうだ、以前ここに来た時に行けなかった中華料理やさんに行こうと思う。
そこで私は中華料理屋に行こうとしたのか…街並みの写真を撮っていて乗り遅れたのか…とにかくバスからは降りている。
バスはあたりにいなくて、でも私は特に焦るでもなくバスを追い掛けるかたちになる。
石畳にはたまに穴が開いていて覗き込むとこの街全体の地下に流れている川が遥か下方に見える。
穴はかなり頻繁に口を開けていて、歩きながら石の隙間から白く光った水面が見えると足元がぞくぞくする。
バスに追い付きそうになった時に今までずっと私と平行して歩いていた人が私の近くに立った。それは高校の時の女の子の友達だった。
私とその子の目の前には少し大きめの亀裂があってバスに辿り着くにはそれを飛び越えなければならなかった。
「そこに穴があるよ。でも恐いから覗かないで」
と私は友達に言う。
友達は意識の半分だけ穴を見て
「ほんとだ」
と言った。足がぞわぞわしたらしい表情だった。
その表情のわりに軽くそれを飛び越えたのを見て、ああ、この子はもうこれを飛び越えてしまったから恐いことはないのだ、と羨ましく思う。一瞬だけれど。
そして私も飛ぶ。
左手からは昔のこいびとが現われた。
同じバスに乗っていたらしい。
女の子が
「ここはどこらへんだろう」
というので、一度来たことがあった私は
「ザールブリュッケンだよ」
と教えてあげる。
すると彼が
「ここはフランスだからザールブリュッケンではないだろう」
と言う。
そうか、ここはフランスのごく南の、スイスに近いところだった、と思い出す。
だから街の地下を流れるのはアルプスの雪解け水だし、寒いのもスイスに近いからなんだ、と合点がいく。
実際にはフランスには行ったこともないし(ザールブリュッケンには行った)スイスはフランスの南ではないみたい。
やみよ。
今ならなにも恐くなく、たくさんのことを詰め込めるような気がするな。
単純だなぁ。
だけどそう思う。
悲しくても嬉しくてもその臨界点ぎりぎりが、いつも私の容量upのときだ。
夜の街を目の悪いまま歩くと本当に何も見えなくて自分が誰かから見えていることも意識しなくなる。
濃い夜の藍色は空だけじゃなくてそんな私のからだ全部、視界全部を包む。
でも昼間の雲の浮かぶ空とその下の空気とちがってそれは絶対みたいに透明だから吸い込んだと思っても動くことはない。すべてのもののなかに等しく浸透しているだけ。
あまりにもその色は深くて、だけど透明だからなにも染めてしまいはしない。
朝焼けや、夕空のようには。
影もその持ち主も、等しくその色に浸されて同じ温度にされてしまう。
私は、そんな世界のなかではどこにでも存在できる。
すべてに溶け込んでいるもののひとつひとつに存在を忍ばせて。
つきやほしがなくても。
秋のはじまりにもらったもの
すごーくぎゅっと色んなことを考えたなぁ。自分のありったけを使って推察して話をした気がする。
楽しかった。
アタマを使ったせいかすぐに寝付いて、5時間しか寝てないけどスッキリ。
今からリハーサルに出かけます。
今朝は起きたら本当に水分がぱあっと飛んでしまったような青い空で、一日のはじまり、という感じだった。
台風のあとのさらさらな空気に金木犀のかおりが混ざって吹き抜けていった。
今年初めてのかおり。
秋なんだ。
大好きな秋がきたなあって、もう一回空の匂いを吸い込んだ。
お友達からのメールを急いで読んで、そこにある新しい感覚に体があたたかくなる。
いつもこの胸やあたまにある感覚や気持ちのことばかり考えてそれを全身にめぐらすことを忘れていた気がするから。
今日はこの感覚を助けに、踊ってみよう。
