冷えた地下水脈の街 | アマヤドリ

冷えた地下水脈の街

夢。

バスに乗っている。
中央駅から離れていく景色を見て、フランスだと思う。
そのバスはツアーのバスで、今からお薦めのレストランに行くことがわかっているが向かう先は以前の経験からいってあそこだろう、と思い当たる店がある。いかにも観光客むけっぽいお店。
白っぽく翳んだ赤い壁のお家が立ち並んでいて、そうだ、以前ここに来た時に行けなかった中華料理やさんに行こうと思う。


そこで私は中華料理屋に行こうとしたのか…街並みの写真を撮っていて乗り遅れたのか…とにかくバスからは降りている。

バスはあたりにいなくて、でも私は特に焦るでもなくバスを追い掛けるかたちになる。

石畳にはたまに穴が開いていて覗き込むとこの街全体の地下に流れている川が遥か下方に見える。
穴はかなり頻繁に口を開けていて、歩きながら石の隙間から白く光った水面が見えると足元がぞくぞくする。

バスに追い付きそうになった時に今までずっと私と平行して歩いていた人が私の近くに立った。それは高校の時の女の子の友達だった。
私とその子の目の前には少し大きめの亀裂があってバスに辿り着くにはそれを飛び越えなければならなかった。
「そこに穴があるよ。でも恐いから覗かないで」
と私は友達に言う。
友達は意識の半分だけ穴を見て
「ほんとだ」
と言った。足がぞわぞわしたらしい表情だった。
その表情のわりに軽くそれを飛び越えたのを見て、ああ、この子はもうこれを飛び越えてしまったから恐いことはないのだ、と羨ましく思う。一瞬だけれど。
そして私も飛ぶ。
左手からは昔のこいびとが現われた。
同じバスに乗っていたらしい。
女の子が
「ここはどこらへんだろう」
というので、一度来たことがあった私は
「ザールブリュッケンだよ」
と教えてあげる。
すると彼が
「ここはフランスだからザールブリュッケンではないだろう」
と言う。
そうか、ここはフランスのごく南の、スイスに近いところだった、と思い出す。
だから街の地下を流れるのはアルプスの雪解け水だし、寒いのもスイスに近いからなんだ、と合点がいく。



実際にはフランスには行ったこともないし(ザールブリュッケンには行った)スイスはフランスの南ではないみたい。