アマヤドリ -173ページ目

楽しい残業、発表会メモ

バイト先の仕事がなかなか大変で、今日は夜の元生徒さんが出ている舞台を観に抜けさせてもらってからまた職場へ。
今帰り。
お昼くらいから息もしないで働いてたからどっと疲れもしたけれど、私はいつもこんな時間まで残業することができないから、残業時間のみなさんの生態に触れることも楽しかった。
おにぎりももらったし。
ただこんな時間に事務所にいるとみんなが心配する。やっぱり時間内に仕事はおわらせなきゃ。

でもバイトに時間や体力をこんなに奪われたらいけないな。
楽しい職場だしみんなギリギリまで頑張ってるから私も少しでも役立ちたい、とは思うんだけど…。
私はここのひとたちが好きみたいだ。ほんとうに。
だけど、踊らなきゃ。
絵を描いたり本を書いたり、写真をとったり。
仕事もある。
創るもののために打ち合せをしたり、触れたり、しなきゃ。


★  ★  ★


今日見に行った舞台のメモ。
やっぱり自分の土俵をもっと伸ばすことも考えなきゃいけないと思う。
いい振付家って少ないなぁ。難しい。
世界を作りすぎてもこちらの心がついて行けないし(だから発表会だということを考えて作品を作らなきゃ。質を落とすということではなくそこにいるひと、踊る場所やお客さんの心構えを考える)、表面の動きだけの踊りはショーとしてはかっこいいけど飽きてしまう。
あと衣裳。
もったいない衣裳が多い。
あと髪型と衣裳も合ってない。ピュアなイメージの水色のドレスなのに、シルバーピンクの巻き髪とか。
今回はアースカラーが多すぎてかぶってる。どこも先生同士つながってひとつの舞台にするのは難しいんだろうな。

照明と音のフェイドアウトの速度が合っていない。
あと1秒音を残せばいいのに、と思う。

音と振付けが合ってない。
コンテとロッキングの融合、みたいなのは、先生の下地がヒップだからああなっちゃったのか、狙いなのか、少しわからなかった。だけどやっぱり音と動きの質がぎくしゃくしてたように感じた。

いい動きだな、と思う子も何人かいた。
軌跡とキレ。


Sちゃんはとても上手になっていた。
勝手に親みたいな気持ちになって(私のほうが年下なのに)、ぎゅっと手に汗を握って登場を待った。
私の振付けを踊っているときとは違う。
うん、無駄が削られたね。ちゃんと鋭くなった。
だけど指先からダイレクトに動かなきゃいけないところと、中心から動きが生まれないといけないところが研究不足。手が棒のようだよ。
しならなきゃ。翼といっしょ。肩甲骨から伝えないと空気を動かせないよ。

だけどいきいきと楽しそう。初めて見る表現。
緊張して間違えるクセも直った。腰から下はしなやかになった。
床をたいせつにね。
ダンサーの足の指はピアニストの指だよ。
床から全部伝えられて、指先まで感じてね。どこかで漏電しないように。


酔っ払ったときに、Sちゃんが、いつでも先生の作品に出られるように自分を磨いてるんだ、と言ってくれた。
忘れてないよ。

きっと、いつかね。

曖昧な境界線/微睡み

夜の皇居のお掘りにいた。
目が悪いままいたから、なにもかもの輪郭がやわらかく夜に溶け込んでいた。
光は闇ににじんではじけ、緑はこっそりと、こんもりと、呼吸する。
白い大きなお豆腐みたいな石に座るとひんやり、その中心からいくらでも冷たい熱を伝えてきた。

立ち上がると、懐かしい香りに気付いた。なんだろうと見渡すと沈丁花の茂みがあった。


ちいさなころ、沈丁花にはいつもくまんばちが潜んでいた。もくもく、頭とおしりがわからないくまんばち。
きっとくまんばちは特に沈丁花の蜜が好きなんだろう。


夜の沈丁花はひとりだ。薄目をあけ、静かに匂いを放っていた。
まどろんでいるとき、どんなに強く香っているか、沈丁花は知らない。


全部がつまってる、ほんの世界のはしっこ。

ちゅんを放つ(夢)

ちゅんの夢。

ちゅんの友達がおうちの下の広場にいっぱいいる。
私は窓からそれを見ていたつもりなんだけどいつのまにかちゅんを連れて外に出ている。
楽しそうにはしゃぐヒヨドリたちを見てちゅんは手の中でテンションがあがってくる。
(手には籠を持っているわけでもないしてのひらでちゅんを包んでいるわけでもない。だからちゅんを止めているものがなんなのかわからないけれど)

私は、このままちゅんをここで遊ばせてもいいじゃないかと思い、ちゅんを放つ。
そのちゅんは本当のちゅんよりも青味がかった黒の羽根をしていて、つやつやしていた。
最初こっちを見て不思議そうにしていたが徐々に友達に慣れて、上手に飛ぶようになる。

友達のうちのひとりに鮮やかなピンク色の羽根が混じったのがいて、その子の気を引こうとちゅんは羽根を広げてくるくる回りだす。
思春期の子供を持った親ってこんな心境かな。っていう気持ちになった。



私はちゅんは女の子だと思ってるのに夢では男の子だった。
どっちだろ。

空気のまくと翅

今朝黄色い蝶とすれ違った。
夏の名残みたいに鮮やかな光を纏った蝶。

私は駅に急いでむかっていて、蝶は駅から離れようとしていたからかなりのスピードで私たちは出会った。
あっ、と振り向いたとき蝶は私のかきまわした風の流れに少しだけ振り回されて、それでも自分の鼻をたよりにまっすぐ進んでいった。


鳥だったらこうはいかないだろうな、と思う。
鳥だったら私のお腹にこつんとくちばしをぶつけていただろう。
羽根をぶつけて、肩がぐきっと痛くなっちゃっていたかもしれない。

だけど蝶は、私が空気をまとって動いているかぎり私にぶつかることはない。
そっと手を動かさないとどんどん逃げてしまうシャボン玉のように。


蝶には空気の流れが見えるのかな。
ダヴィンチが描く川の流れみたいに、渦巻いたり折り返したり、逆の層をなしたり、たちのぼったりしているのが。

プラネットアース/地下の世界

NHKスペシャル 第3集「洞窟 未踏の地下世界」

地球にはたくさん穴が開いていて、そこに水がつまっていることもある、ということを知ったのは7、8年前のこと。多分これと同じ、BBCが撮影したものを流していた番組を見てだと思う。

私は閉所恐怖症じゃないか?と思うくらい、狭いところが恐かった。

もちょっと書いたけれど、狭いところというよりは、自分の力だけで空間を動けないこと。それが恐かったんだと思う。
(単にじっとすることが耐えられない体、とも言う)
窓を閉めた車に乗るのも少し恐かった。


だから、洞窟とか地下探検とか、ましてやその洞窟に水が満ちているなんて!そんなこと考えただけでも目と目の間がむずむずするし身体の中心から四方八方に爆発しちゃいそうになる。
…はずなのに。
反面、すごくわくわくする。どきどきする。不思議なもので、やっぱりぎりぎりのところで相反してるんだな。


闇の世界はたくさんのきちきちした虫に覆われていて恐いし、目も耳も口も毛穴も、すべて開いてみても何の情報も入ってこないんだろう。

生物は超音波とか、温度を探知したりして地形や敵や獲物を認識してる。
きっと閉所恐怖症じゃなくても、暗所恐怖症じゃなくても、恐い。


だけど空気の粒全部が生きていて呼吸を潜めている感じ、すべてに浸透してしまう透明な漆黒。
満ちている闇。石膏の結晶とか、星空みたいに光る昆虫。

魅せられる。



一番好きだったのはメキシコにある、水で満ちた洞窟たち。
石灰岩でできた地形に雨水がしみ込んでいって鍾乳洞みたいなものができ、氷河期が終わって水位があがったために水が入り込んだのだという。
以前見たものはこれと似ていたけれど海水じゃなくて淡水だった。たぶんあれは本当に地下水脈の旅だったのだろう。
ある部分で淡水と海水が混じり、層を成している。光が届かない、透明な水。

なんて映像!

綺麗。光ってなんだろう。色ってなんだ。


7年前に見たときもそうだったけれど、私はもう今の人間の科学で行かれないところなど地球上にはそんなにないと思っていた。だけどやっぱり、たとえばこの水で満たされた洞窟はすべてを先端まで把握するわけにはまだまだいかない。酸素ボンベの問題もあるし、命綱の問題もあるし。そういうことを考えると本当に息苦しくなってくるけれど、まだまだ機械ではなくてひとの手作業で進むしかない部分なのだそう。

以前見た地下水脈も、どこでどう洞窟どうしが繋がっているかまだまだ未知なのだそうだ。

それより先に大きな空洞の反応があっても先に進めなかったり…。


人間が照らしているものは地球のほんの薄皮にすぎないのだなと思う。

海や洞窟はまだまだ深いし、宇宙はまだまだ遥かだ。



緒方拳さんが最後に地上に出てきて「やっぱり太陽はいいなあ」と言ったけれど、そうだなあ、と思うと同時にそんな台詞なかったらよかったのに、とも思った。
だって私たちに見えるものなんてほんの小さな一部だから。

たまたま私たちが生きている環境、明るい太陽を浴びている空気がいとしい。

その気持ちもあり、同時にでも、とも思う。


いろんな仕組みで生きている生き物たち。いろんな仕組みはなにひとつ欠けていない。すべてが妥当だ。
闇の中だからひっそりと、みたいな感じがするけれどきっと違う。