お風呂やさんへ
池袋のサンシャインシティの近くにある大きなお風呂やさんの半額チケットがもうずっと前からあって、3月末までだから行こうね、とずっと約束していたのにおばあちゃんの体調が崩れたり、私が外国へ行っていたりでやっと今日その約束が叶った。
もう大人になってだいぶ年月が経つのにいまだに親元にいる私は、だけど高校生のころからちっとも家にはいなかった。
夜帰ってくるのも遅ければ、夕ご飯もほとんど家で食べない。休日も家にいない。寝に帰ってくるだけの薄情な子供。
だから両親は私に構いたくて仕方がない(特に父)。
たまの日曜日に家にいると父は「今日はパパと遊ぶ?」と訊いてくる。(もちろん遊ばない)
夏、珍しく早く家に早く帰って一緒にご飯を食べると、「食後にパパと散歩にいく?」と訊いてくる。(ママと行けば、と言うとしょんぼりする)。
お母さんと買い物に行くということもほとんどない。
お父さんやお母さんが嫌い、とかいうことはもちろんない。
好き勝手してきたから、親と行動するのが今更なんだかちょっと照れくさいというのはあるけど。子供みたいだ。
だから久しぶりの、母との外出。
お風呂は思ったよりも人がいっぱいいた。
じっくりあちこちのお湯に浸かっては水を飲み、たっぷり汗を出した。
ひとのからだっていろいろだな、と思った。
私はそんなに銭湯や温泉に行くほうじゃないから、たくさんのはだかのひとを見ると、ほんとうにその形や質量の違いに感心させられる。いや、そこまでじっくり見てるわけじゃないのだけれど…。
今日私が初めて見て知ったあることがあって、もし私が子供の頃銭湯でそういうひとを見たらあのひとはどうしたのかな、って考えるだろうと思った。そしてある程度の年齢になって知識としてそれを知ったときに、ああ、あのひとはそれであのような感じだったのだ、とそこでちゃんと繋がるのだろう。
だけどそこでふと、はっきりと見たり聞いたりしたことがないことでもどういうわけかほんのりそのことを知っているものだなあ、子供は、というふうに思った。
どうしてなのだろう。
意識してなくても大人の会話に耳をそばだてているからかな。本を読んだりしてるから?
知らず知らずのうちに色んな情報を繋ぎ合わせ、また解体して、今度はこっちとくっつけ…という作業を果てしなくやっていたんだろうな。
本当は、これからの子供は他の人の裸なんか見なくなるんじゃなかろうか、そうしたらひとの体の違いというものを感じることもなくて、多かれ少なかれあるその違いを「ただ、違うよね」という風に受け止められないんじゃないだろうか…っていうことを考えたのだけれど、きっとそんなに鈍感じゃないなという風に思い直した。
お風呂屋さんにはしゃれたレストランもついていて、そこで30品目のランチ、というものを食べた。お風呂にまだ入るつもりだったから二人でひとつのランチを頼んだ。ごはんも、お味噌汁も半分こ。
ひと汗かいてからリラクゼーションルームで『チャーリーとチョコレート工場』を半分だけ見た。
お風呂に4時間もいたからもう疲れちゃって夕飯の支度なんかやりたくないね、ということで父とも待ち合わせをし、外でご飯を食べることに。
Kzさんに教えてもらってそれからちょくちょく行っている池袋の「はーべすと」へ。
昼も30品目食べたのに夜もあらゆるものを食べて、健康な一日だった。
帰ってきたらちゅんは丸くなってふくれていた。
初日からつまづく/20.Feb
上空から地上を見ると、みずびたしな印象だった。
オランダは低いところにあって堤防に囲まれていることは知っていたけれど、上空から見るとその水路だらけの大地は土地というよりも水に薄く緑のシートを浮かべているように見えた。薄く不安定で、なんだか可愛らしい。
風車はちらりとしか見えなかったけれどさすが貿易の国。港が大きくて、コンテナがずらりと並んでいて、色とりどりの貨物がつんであるのが飛行機からも見えた。
アムステルダムのスキポール空港に着いてほっと一息。
でも想像以上のスーツケースの重さに愕然とする。しかも、石畳だから全然まっすぐ進んでくれないし、車輪は今にも壊れそうにがちゃがちゃいってるし…。
プリントアウトしてきたホテルの住所をインフォメーションに見せるけれど知らない、と言われてしまう。住所を見て電車でこの地域に行けばいい、というようなことを(多分)言われた。
鉄道のインフォメーションに訊くと「バスで行け」と言われ、結局バスに乗ることにする。
紙には「aalsmeerフラワーマーケットの近く。最寄のバス停までは1分」と書いてある。
肝心なバス停の名前をなぜ書かない??と何度も胸の中ではげしくつぶやく。
とりあえずそのなんとかいう市場に近寄ろうと思ってバス停の地図を見ると、aalsmeerという文字が湖の近くにあった。一番近いバスに検討をつけ、いくつもあるバス停を練り歩く。
色んなひとにホテルのことを訊いたが誰もそのあたりの住所を知らない(あとでその訳は分かるんだけど)。
霙に打たれながらバスを待ち、20分くらいしてやっときたバスに乗る。
途中後ろのおばさんに話しかけるとフラワーマーケットで降りるとのこと。
だけどホテルのありかの住所を訊くけれど知らないみたい。運転手さんに訊いても、首をひねる。
これはちょっとまずいかな、と思いはじめる。バスって自分の地元を走るものだし、それに乗ってる人が知らないって、ちょっとこれは困ったな。
どんどん人が降りてゆきとうとうきゅっとバスが止まり、終点だよ、と言われてる。
ああ、また終点まで乗っちゃった。去年もこれ、Groningenのホテルに行くときにやっちゃった。
見渡してもホテルらしきものはない。あたりは真っ暗。なにしろ中心地から大分離れていて、バスに乗っている間にもどんどん風景が変わり、どんどん日も暮れてきたくらいだったから。
バスの運転手さんは途方にくれている私を乗せて、その住所のほうに行くであろうバスの通るバス停までドライブしてくれる。
優しいなあ。
「あの7番のバスに乗ればいいからね!」、ばいばい、と手を振って行ってしまう。
よかったなあいい人で…と思ったのもつかの間、乗り継ごうと思っていたそのバスはもうとっくに終わっている時間だった。
お店もなく、人気もなく、ひたすら田舎。街灯すらてんてんとしかない。
はっきりとした地図もない。
車も通らない。
真っ暗で、深いふかい緑と、水の匂い。
いいところだなあ。
でもそれどころじゃないなあ。
どうすればいいんだろう。初日から本当に心細くなってしばらくぼおっと突っ立ってしまった。
泣いちゃおうかな、と思ったけれどとりあえずそのバスが進むであろう方向に歩いてゆく。この荷物さえなければなあ、と思いながら。
十字路に出ると灯りの灯っている建物があった。aalsmeerなんとかセンターって書いてある。もしかして、ここはそのフラワーマーケットと関係あるのかもしれない!
思い切ってそこに入ってみると若い男の子。
「ここはフラワーマーケットですか?」と訊くと、「え?」みたいな顔をする。全然違ったみたい。
不鮮明な(縮尺もないし方位も書いてないし道なのか川なのかも判然としない)地図を出してここに行きたいんだけど道を教えてくださいと言うと、そこはここから8kmくらい先にあって、その荷物で歩いてゆくのは無理だ、と言われる。
無理と言われても行くしかないから、行く、というと、「絶対無理だよ、危ないし、遠すぎる」と連呼する。
それじゃあ、ということで申し訳ないとは思ったのだけれどタクシーを呼んでもらうことにする。こんなことなら駅からタクシーに乗ればよかった。
(でもあとから分かったことだけど、駅からタクシーに乗らなくて良かった。とんでもない金額になるところだったから)
男の子は親切で、30分くらいタクシーは来ないからセンターに入って待ってていいよ、とにっこりしてくれる。
椅子に座ると体のあちこちがこわばっていて、すでに腕は筋肉痛だった。
何十時間も飛行機に乗って、そのあとこうしてさまよっているんだもの、疲れていて当然だ。
ぐったり椅子に腰掛けていたがいつのまにかほっとして体も緩んで、そこが何の建物なのかすごく気になってくる。
たまにジャージ姿の人が現れる。パンフレットがずらりと置いてあってヨガとかなんとかセラピーとか骨の絵が描いてあったりした。ダンスとかヨガのスタジオの感じはしなかったから、もっと医療に近いことをやっているのだろうか。リハビリとか。
訊きたかったけど邪魔をしたくなかったし、おとなしくしていることにした。
やがて来たタクシーの運転手は私がこの距離を歩こうとした話をすると豪快に笑った。
センターからホテルまでは車で10分もかかって、歩くのはやっぱり無理だったな、と思った。
部屋に着くとテレタビーズをやっていて、
これはちゅんちゅん(ひとのほう)が喜ぶぞ、
と思ったので写真を撮ってみました。
この子たちはふあー。とか、うにゅー。とかしか言わない。
夢/ユースホステル、弟
どこなんだろう、あれは。東京じゃないけれど外国の感じはしない。
ちょっと赤茶色のチョコレートに似た貨物倉庫のようなものがたくさん並んでいて、それが大きなユースホステルになっている。
私は弟(か、弟のような存在のひと)とそこに泊まるのだけれどユースホステルは一人ずつの部屋になっていて一緒のところにはいられない。必要なもの(何故かそのなかにいちごひとつぶが含まれていた)をひとつの荷物の中から分けて、私は私の部屋へ向かう。
どうやら弟は私よりも経験が浅いらしく、そのことを気遣っているようす。
自分の部屋へ向かう道は細くてわりと危ない。雪が積もっていて滑りやすい、少し高くなった場所にあった…のだったと思う。
すれ違う人々は日本のひとたちじゃない。大きなショールを頭にかぶったイスラム系の女性と目が合ったこと、彼女の子供たちを先に通してあげたことを覚えている。
自分の部屋に着くと案外必要なものを何も持っていないということに気付く。仕方がないからなぜか楽しみにしていたいちごをパンに塗って食べようと思う。
その時知っている男の人ふたりが表に見 える。昨日もこうして私に気付いてもらおうと外にいたな、と思い、私は煙草を吸いながら表にゆく。
いちごパンはおあずけだ。
ユースホステルは満員だった。
少し夜行列車みたいな匂いがしたかもしれない。
本番へ一歩目!
みんなは3月始めから入っていたから、私はやっと合流。
どきどきわくわく、昼からのバレエのレッスンも出よう!と決意していたのに寝坊。…時差ぼけのせい、ということにしちゃおう。
みんなと会うと時間が戻る。11月の本番以来なのに全然時間がたったように思えない。つい先月またね、って別れたみたい。
しっくり、稽古場にはいってゆく。
でも振りはしっくりはいる、というわけにはいかなかった。んー。頭が働かない。振り覚えが悪いうえにビデオからの振り起こし(再演なのでベースはビデオで研究!)は左右がまったくわからなくなるし。
しかし、踊りがいがありそう。
いつもより努力しよう、という決意を今回は固めている。
頑張ったり努力したりするのなんか、当然のこと。
なんだけれどもだからそこを、いつもよりも見なおして建て直そう。
オーディションにはことごとくふられてしまってそれをがっかりしていないというのはやはり嘘で、だからこそ。
私に足りないものをひとつでも多く吸収して、私がもってるものをもっともっと押し広げたい。
みんなと踊れることがうれしいから。
素敵な作品を見てもらいたいから。
がんばるぞー。
去年11月のくるみ割り人形の本番の記念に、社長が作ってくれたねずみストラップ。
本番のあのねずみ仮面も、社長が作ってくれたのです。
スゴい。
可愛い。
