24時のブルース

24時のブルース

映画・音楽などに関することを、ひねもすのたりと語ります。

Amebaでブログを始めよう!

今年もやってきました、年間ランキング。

記録として残しておくこととして念の為書きますが、

大晦日に風邪をくらい、体調悪い中記事を書いています。

その為、例年のような短評は無理なので、トップ10については

超短評でいきたいと思います。

 

1    オーバー・フェンス 

2    キャロル 

3    シング・ストリート 未来へのうた

 

4    シビル・ウォー キャプテン・アメリカ  

5    ローグ・ワン スターウォーズ・ストーリー 

6    クリード チャンプを継ぐ男 

7    SHARING

8    この世界の片隅に 

9    シン・ゴジラ 

10    太陽 

 

11    FAKE

12    ちはやふる・上の句 

13    ヒメアノ~ル 

14    X−MEN アポカリプス 

15    クリーピー 偽りの隣人 

16    デッドプール 

17    何者

18    海よりもまだ深く 

19   怒り 

20   オデッセイ

 

21    スティーブ・ジョブス 

22   ヘイトフル・エイト 

23   帰ってきたヒトラー 

24 サウルの息子 

25 ゴースト・バスターズ 

26 貞子 vs 伽倻子 

27 ズートピア 

28 ドント・ブリーズ 

29 すれ違いのダイアリーズ 

30   ちはやふる・下の句   

 

31    HiGH & LOW THE MOVIE

32    バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 

33    ストレイト・アウタ・コンプトン 

34    ベテラン 

35    黄金のアデーレ 名画の帰還 

36    サウスポー 

37    ケンとカズ 

38    あなたを待っています 

39    ディストラクション・ベイビーズ 

40    永い言い訳 

 

41    ハドソン川の奇跡 

42    スーサイド・スクワッド 

43    溺れるナイフ 

44    アイアムアヒーロー 

45    ディーパンの戦い 

46    SCOOP!

47    君の名は。 

48    スポットライト 世紀のスクープ 

49    イレブン・ミニッツ 

50    リップヴァンウィンクルの花嫁 

 

51    ブルックリン 

52    アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち 

53    ブリッジ・オブ・スパイ 

54    砂上の法廷 

55    エクス・マキナ 

56    リリーのすべて 

57    10クローバー・フィールド・レーン 

58    マジカル・ガール 

59    スタートレック BEYOND 

60    マネー・ショート 華麗なる大逆転 

 

61    グランド・イリュージョン2 見破られたトリック 

62    裸足の季節 

63    ルーム 

64    アウトバーン 

65    ヒトラー暗殺 13分の誤算 

66    レヴェナント 蘇りし者 

67    ジャック・リーチャー NEVER GO BACK 

68    TMNT・シャドウズ 

69    日本で一番悪い奴ら 

70    モヒカン 故郷に帰る 

 

71    ブラック・スキャンダル 

72    イット・フォローズ 

73    ボーダーライン 

74    ピンクとグレー 

75    メカニック:ワールドミッション 

76    コップ・カー 

77    世界から猫が消えたなら 

78    完全なるチェックメイト 

79    クリムゾン・ピーク 

80    ファイディング・ドリー

 

81    マダム・フローレンス 夢見る2人 

82    ペレ 伝説の誕生 

83    エンド・オブ・キングダム 

84    64 前編 

85    さらば あぶない刑事

 

86    無伴奏 

87    64 後編 

88    グッドモーニングショー

 

はい、こんな感じです。

ではワーストの短評から。

 

86位 無伴奏

話自体は『マイ・バック・ページ』を彷彿とさせ面白いが、

とにかく不自然なまでの乳首死守映画という点が最後までノイズに。

 

87位 64 後編

吉岡秀隆を容易に使うのは本当に止めた方がいい。

なんなのあの声いじり。

 

88位 グッドモーニングショー

信頼できる大好きな映画好き友達と連れ立って

深夜のTOHOシネマズ六本木で鑑賞したが、

眠気と酔いが醒める程のクズのような映画でした。

何から何まで全部間違っているという点ではある意味評価できる。

 

以下は、トップ10の短評です。

 

10位 太陽

 

僕達の観たかった入江悠どころか、それを良い意味で覆す作品。

絶望的な行く末の中で、小さな希望の暖かさに救われる。

 

9位 シン・ゴジラ

 

気軽に言うのは良くないけど、ポスト3.11映画として秀逸。

公僕に従事する身としても勇気をもらえた作品。

 

8位 この世界の片隅に

 

極めて1位に近い8位です。

個人的には『この空の花 長岡花火物語』を想起しました。

現代と地続きでありながら、当時のこの世界に存在したすずさんに

思いを馳せずにはいられない。

 

7位 SHARING

 

ポスト3.11としては個人的にこちらに軍配をあげたい。

心霊表現に心の浄化を促された直後、

悪夢的なエンディング(二通りの解釈ができると思う)に

全身が総毛立つ恐ろしさを感じ、地に足のつかない感覚を覚えた。

 

6位 クリード チャンプを継ぐ男

 

大傑作です。これも極めて1位に近い6位です。

クライマックス、アドニスがダウンし意識が遠き、

走馬灯のように大事な人達が脳裏に過っていく中、

「最後に残るのは血だ!」と叫ぶような一瞬のカットに

興奮と涙を抑えきることができなかった。

 

5位 ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー

 

スター・ウォーズ史上最高傑作だと思っています。

「希望が紡がれていくこと」自体の希望に、目が失禁する。

この世界を構成する名も無き存在である自分であっても、

誰かに届けること、思いを紡いでいくことは出来るんだと

思わせてくれる、素晴らしい作品。

 

4位 シビル・ウォー キャプテン・アメリカ

 

MCU史上で暫定の最高傑作だと思う。

宇多丸師匠が仰っていた「キャップ3部作」としても見事な幕の閉じ方。

 

3位 シング・ストリート 未来へのうた

 

「全ての兄弟」の一人である自分の為のような作品。

主人公の妄想ダンスパーティーシーンは涙腺決壊もの。

兄がいたから今の自分がいることを再確認できた秀作。

 

2位 キャロル

 

こんなに美しい映画は観たことがない。

誰もが観るべき普遍的な「恋愛映画」である。

 

1位 オーバー・フェンス

 

社会という見えない壁に囲まれて、

存在意義すら疑ってしまうどん詰まりの人生でも、

勇気を持って少し前に踏み出すことで、そのフェンスを越えることは出来る。

それを教え讃えてくれる、救いと希望を与えてくれるラストシーンと

エンドロールのあの優しい音楽に、暖かい涙が止まらなかった。

 

以上、今年の映画ランキングでした。

 

本当に素晴らしい作品ばかりで、トップ10以上は

どれが1位になってもおかしくないような作品ばかり。

傾向として、絶望的だったり救いのない状況下で

一筋の光明と希望を見出させてくれる作品に

自分が心惹かれるのを改めて気付かされたランキングだった。

 

今年の最後に、キャリー・フィッシャー氏に

多大なる敬意と感謝の意を捧げたいと思います。

 

今年もやってきた、もはや誰も見ていないだろうし期待もしていないだろうから
自分の1年の軌跡の記録に成り果てたシネマランキング。

今年観た新作の数は計86作品。
毎年記録は更新できているのは驚き。
今年から休みも(ある程度)増えたことと
安定的な土日休みで、かなり映画館での鑑賞数も増やすことができた。

昨年同様、まずは全体のランキングを経たのちに、
ワースト3とベスト10の短評を書き連ねる、
敬愛する映画秘宝形式でいきたいと思う。

1 STAR WARS EP.Ⅶ フォースの覚醒
2 Mommy
3 はじまりのうた
4 マッドマックス 怒りのデスロード
5 ピッチ・パーフェクト
6 ミッション:インポッシブル ローグネイション
7 ベイマックス
8 アメリカン・スナイパー
9 駆込み女と駆出し男
10 ワイルドスピード SKY MISSION

11 アントマン
12 激戦 ハート・オブ・ファイト
13 恋人たち
14 海街diary
15 アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン
16 キングスマン
17 シェフ 三ツ星フードトラック始めました
18 海にかかる霧
19 ジョン・ウィック
20 きみはいい子
21 セッション
22 群盗
23 フォックス・キャッチャー
24 インサイド・ヘッド
25 傷だらけのふたり
26 野火
27 バケモノの子
28 君が生きた証
29 幕が上がる
30 超能力研究部の3人
31 グリーン・インフェルノ
32 百円の恋
33 ラブストーリーズ コナーの涙
34 ラブストーリーズ エリナーの愛情
35 007 スペクター
36 ピッチパーフェクト2
37 KANO
38 ソロモンの偽証 前篇
39 バンクーバーの朝日
40 オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分
41 私の少女
42 イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者
43 チャイルド44 森に消えた子供たち
44 サンドラの週末
45 ミュータント・タートルズ
46 薄氷の殺人
47 ラストプリンス 星の王子様と私
48 ジュラシック・ワールド
49 ジョーカー・ゲーム
50 ナイトクローラー
51 22ジャンプストリート
52 チャッピー
53 毛皮のヴィーナス
54 ラスト・5・イヤーズ
55 神の一手
56 龍三と七人の子分たち
57 きっと、星のせいじゃない。
58 ソロモンの偽証 後篇
59 バクマン。
60 イマジン
61 機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅰ 青い瞳のキャスバル
62 日本のいちばん長い日
63 進撃の巨人 ATTACK ON TITAN
64 イン・ユア・アイズ
65 ビッグアイズ
66 リアル鬼ごっこ 劇場版
67 マジック・イン・ムーンライト
68 博士と彼女のセオリー
69 ニンニンジャー&仮面ライダードライブ THE MOVIE
70 フレンチアルプスで起きたこと
71 ラン・オールナイト
72 自由が丘で
73 アリスのままで
74 劇場霊
75 ワイルド・カード
76 心が叫びたがってるんだ。
77 インヒアレント・ヴァイス
78 マップ・トゥ・ザ・スターズ
79 味園ユニバース
80 さよなら歌舞伎町
81 進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンドオブザワールド
82 マッド・ナース
83 バードマン

84 ザ・トライブ
85 予告犯
86 神さまの言うとおり

正直30位以上はどの作品がベスト10に入ってもおかしくない。
それぐらい例年通りの激戦ぶりだったように思います。
全部同率順位にしたいほどです。
特に20位からは上は、他の映画好きの方々が
ベスト10もしくは今年ベストに上げてる人も多い様子。
逆に言うと、皆評価してるから、僕は敢えて…みたいな感じです。

さて、ではワースト3の短評からいきましょう。

『ザ・トライブ』
この作品なんかは、今年のベスト10に食い込む人も多いでしょう。
でも僕はこの作品がどうしても好きになれない。
全編手話で構成してセリフも字幕もない、という触れ込みが
そこまで上手く機能してない気がする。
というかそもそも論として、個人的にとにかく不愉快。

『予告犯』
話のスケールが小さい。
原作はそういう話らしいけど、
戦隊モノ・特撮モノの敵キャラが、世界征服と言いながら
やってることは地域住民のたらし込み、的なスケールの小ささとも違う。
後、どうしてもこうも市井の人間の描写が下手くそなのだろうか。
最後も美談寄りにしてるけど、主人公以外の犯人達に対して、
「え、お前らはそれでいいの!?」と憤りを感じたのもマイナス。

『神さまの言うとおり』
主人公演じる福士君とライバルの神木君以外
全員バカで無能、っていう設定と話運びは下手としか言えない。
設定としては同じ部類の『悪の教典』は最高だったのに。
まぁ多作の三池監督なら致し方ないというところか。
映画館ではなくDVDで観たけど、何度観るの止めようと思ったことか。

あと、ワースト4位の『バードマン あるいは~』もどうしても言いたい事がある
1カット風に見せる画作りはスタッフ陣の血反吐ものの努力は素晴らしいと思います。
(まぁヒッチコックが既にやってるんだけどさ、というのは置いといて…)
でも、今作でどーーーしても引っかかるのは、不必要なまでの
アメコミやブロックバスター作品に対する軽蔑と尊敬のなさ。
それ故に、世評の高さに反して僕はこの作品を評価できません。

言いたいことは言い切ったので、ここからは褒め一辺倒でいきます。

10位 『ワイルド・スピード SKY MISSION』



この作品を観るまで、恥ずかしながらワイルド・スピード弱者だったんですが、
今作を観るにあたって過去作を観たことで、今シリーズが好きになりました。
ジャンル映画だしバカ映画だけども、ケレン味もちゃんと配して
バカっぽい描写も突き抜けて表現してるから最高にアガる。
孤高の敵、ステイサムの神出鬼没さも、笑いと同時に格好良さを
引っ提げてくるあたり、現行No.1アクションスターの貫録を再確認。
そして、何といってもラストシーンではないだろうか。
映画館で声を出して泣いたのは結構久しぶりで、
それぐらいに、”家族”への弔いをここまで過多でなく
上品にやってのけたのは素晴らしい。
ありがとうワン監督。ありがとうポール・ウォーカー。

9位 『駆込み女と駆出し男』



原田眞人監督、名匠やなーといった趣き。
台詞の内容はおそらく当時の江戸まんまをやっている為
一見すると理解が遅れたり下手したら理解出来なそうだけど、
適度な現代性や演者同士の掛け合い・表情(つまりは演出)で
そういった事態を回避すると共に観ていて素直に楽しいと思わせる。
大泉洋は”あの”三谷作品『清洲会議』でも唯一光っていたけど、
時代劇では彼の早口・抑揚・見栄の切り方がとても映えるように思える。

8位 『アメリカン・スナイパー』



『ハート・ロッカー』的風味の作品を、イーストウッドらしい
冷めた突き放しと優しさが同居した演出が冴え渡っていたように思う。
やや批判的になる的の設定についても、このドライな作品の中で
活劇性を持たせる意味として、個人的には評価できるところ。
終盤の主人公の”PTSD描写”の怖さもしっかり描いているし、
エンドロールの強烈さに顕著なように、イーストウッド的な
反戦メッセージがかなり胸に深く突き刺さる。

7位 『ベイマックス』



敢えて日本版ではなく本国版のポスターアートを。
感動押しの日本宣伝の是々非々についてはもうどうでもいい。
ある意味その功罪として、この作品の物語や設定、
つまりはイメージソースとなっているアメコミ的な
世界観に高揚したし、且つ適所に伏線や感動を程よく
散りばめるあたりも涙腺を刺激してさらに最高だった。

6位 『ミッション:インポッシブル ローグネイション』



ポスターアートに使われる飛行機捕まりシーンはいつかな!?
とワクワクしていたら「開始2分!?」というバカバカしさと
清々しさとアクションの凄さに思わず口があんぐり。
似たような展開になりがちなカーチェイスとバイクチェイスシーンを
画の見せ方と音の使い方で全く違う見せ方をしてるのがとても巧い。
そして特筆すべきはラスト、敵の顛末である。
円環構造・対比・伏線・ケレンを全て打ち込んだこのシーンは
思わずガッツポーズをしてしまうほどだった。
あと単純に、「とにかくトムは偉い」の一語に尽きる。

5位 『ピッチ・パーフェクト』



話題になっている頃は見逃してしまい、その後の
池袋・新文芸坐のリバイバル上映でようやく鑑賞。
とにかく楽しい映画。身体が勝手にリズムを刻むのを止められない。
『2』も良い作品だったけど、この作品において、
主人公達の敵は「自分達自身」という設定の巧さで抜きん出ている。
最後、主人公達の生まれ変わったパフォーマンスの素晴らしさに、
思わず映画館で拍手をしてしまった。こんな体験は
今は無き新橋文化劇場で観た『デス・プルーフ』以来。

4位 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』



”映画の楽しさ”の全部が詰まっている。
こんな歴史的な作品を、リアルタイムで映画館で鑑賞できた幸せ。
その巡り合わせの僥倖にただただ感謝するのみである。

3位 『はじまりのうた』



ストーリーが物凄く良く出来ている。
それは、物語を補強する音楽の素晴らしさ故に他ならない。
”音楽の楽しさ”を再発見できるという意味では上述の
『ピッチ・パーフェクト』も同様であるが、
個人的には「個々の楽器の音が重なり合って次第にグルーブしていく」
過程が、登場人物達の紹介とカットバックされながら巧みに
表現されているシーンが勝っている感じがした。
屋上で演奏される『Tell Me If You Wanna Go Home』は、
親子が音楽で分かり合うシーンとしても最高ならば、
UKギターロック的な曲調に5億点を差し出すしかない。

2位 『Mommy』



『マイ・マザー』に続いて、グサヴィエ・ドランによる「母にまつわる物語」。
ドランは常に、「絶対的に抗うことの出来ない愛」を描いていると思っている。
今作でもその”抗えなさ”は顕在であり、抗えなさではトップクラスの母性である。
観た人によっては「ベタ」「あざとい」と思われがちなのではなかろうかと思う、
作中での画面アスペクト比を変える演出。
個人的には1回目にOasisの「Wonderwall」が使われたことで
この作品は今年ベストだと直感で決めたぐらい、とにかく無性に感動的だった。
物語は紆余曲折を経ながら、悲劇的な展開に落ちていくことになる。
でも、最終的に母と子のそれぞれの強い決意や明るい表情にこそ
ドランの優しい眼差しと親への”愛”を感じざるをえない。

1位 『スターウォーズ EP.Ⅶ フォースの覚醒』



『怒りのデス・ロード』を経た後も、『Mommy』のベストは
揺るがないと思ったけど、やはりこの作品には勝てなかった。
「STAR WARS」のロゴが あの盛大な音楽と共に宇宙の彼方に吸い込まれていくあの瞬間、
僕の心は『EP.4特別編』を初めて映画館で観た13歳の頃の自分に戻っていた。
複数回観たことで、作品内の設定な話運びに言いたいことが全く無いわけではないけど、
それを今後の作品に期待することや予想することも含めての映画体験であり、
それを今年の1位にしなくてどうする、という感慨の元、堂々の1位です。

今年は新作86作品、過去作も含めて映画館で観た本数はおそらく130作品程度、
鑑賞スタイルを問わなければ240本程度鑑賞することができた。

映画界隈のニュースといえば、個人的に大きかったのはシネマライズ閉館の報。
あの映画館で観た『(500日)のサマー』は生涯ベストの作品だし、
あの映画館に高校から大学にかけて通ったからこその自分がある。
しまおさんや宇多さんがPodcastで話していたけど、
あの時代にあの場所で単館系映画を観た経験、というのは
今では再現不可能だし、とても貴重な体験だったと思う。

これからも新たな映画体験に期待していきたいところです。
今年はとある受験で忙しく、9月頃まで
全然映画を観ることが出来なかった。
解き放たれ後は狂ったように名画座を中心に通い、
今年新作は62作品、名画座で古い映画を鑑賞したのを含めると、
今年は映画館では80本近く観れているのではないかと思う。
DVD等のパッケージを含めて総数116作品観れた。

毎年恒例、新作のランキングをつけると共に、
トップ10、ワースト3に短評を添えていきたいと思う。


1 her 世界でひとつの彼女
2 アメイジング・スパイダーマン2
3 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
4 とらわれて夏
5 ゴーン・ガール
6 ぼくたちの家族
7 ジャージー・ボーイズ
8 物語る私たち
9 そこのみにて光輝く
10 5つ数えれば君の夢

11 野のなななのか
12 ゼロ・グラビティ
13 ネブラスカ~ふたつの心をつなぐ旅~
14 マイ・マザー
15 劇場版 テレクラキャノンボール2013
16 ザ・レイド GOKUDO
17 ウルフ・オブ・ウォールストリート
18 サードパーソン
19 WOOD JOB! 神去なあなあ日常
20 キャプテンアメリカ ウィンターソルジャー
21 イコライザー
22 それでも夜は明ける
23 フランシス・ハ
24 グランド・ブタペスト・ホテル
25 エクスペンダブルズ3 ワールドミッション
26 インターステラー
27 ホドロフスキーのDUNE
28 大脱出
29 レッド・ファミリー
30 おとぎ話みたい
31 るろうに剣心~京都大火編~
32 オール・ユー・ニード・イズ・キル
33 寄生獣
34 紙の月
35 複製された男
36 インターステラー
37 ブルージャスミン
38 GODZILLA
39 思い出のマーニー
40 アナと雪の女王
41 トム・アット・ザ・ファーム
42 リアリティのダンス
43 Seventh Code
44 インサイド・ルーウィン・デイヴィス~名もなき男の歌~
45 花宵道中
46 私の男
47 日々ロック
48 サボタージュ
49 パズル
50 パリ、ただよう花
51 るろうに剣心~伝説の最期編~
52 ある過去の行方
53 オンリー・ゴッド
54 X-MEN:フューチャー&パスト
55 聖者たちの食卓
56 ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!
57 TOKYO TRIBE
58 仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル
59 アクト・オブ・キリング

60 エスケイプ・フロム・トゥモロー
61 サッドティー
62 渇き。


まずはワースト3の短評から。

60位 エスケイプ・フロム・トゥモロー
うーむ、結局何を言いたいのかがさっぱり。
何かしらの教訓やメッセージがあるわけでもなく、
一つの家族の結末としてはあまりにも悪趣味だし、
後味を悪くするならもっと露悪的にして欲しかった。
併映していた短編、入江悠監督による
『エスケイプ・フロム・フジQ』の方が遥かに面白かった。

61位 サッドティー
内田けんじ的な群像劇をやろうとしてるんだろうけど、
こんなの群像劇じゃないし、時折差し込まれるギャグが
一つも面白くなかった。所謂オタクに対する捉え方も浅薄で不快。
上映後のトークショーを聴く気にもなれず劇場を足早に立ち去った。
ただし、青柳文子という新しい才能の発見は僥倖だった。

62位 渇き。
この監督の「逃げ」しか感じ取れなかった。
皆が絶賛する小松菜々さんについても、
僕は然程魅力を感じなかった。
あの役をやるなら『害虫』の宮﨑あおいに
匹敵するような魅力がないとダメでしょ。

そして、トップ10についての短評です。

10位 5つ数えれば君の夢


凄く歪な美しいものを観てしまったという感覚。
『おとぎ話みたい』を観て確信したけど、
山戸監督は平成の大林宣彦たりえる存在かもしれない(御大はまだご存命だが)。
この作品より以下に今年を代表する傑作を連ねる結果になったが、
とある方が仰っていたのと同様で、この作品をトップ10に入れることが
自分の意思表示になると思って、この順位となりました。
劇中新井ひとみさんの「人非人になっても構わない」という台詞と
『時をかける少女』もかくやの美しいカーテンコールに心が囚われたままである。

9位 そこのみにて光輝く


一分の隙もない作品、邦画編。
どん詰まりの中で燻っていた魂同士が、
微かな希望に賭けて互いに寄り添い再生していく様子に胸が打たれた。
演者の皆様どなたも名演でしたが、個人的には
菅田将輝くんに拍手を送りたいと思います。
ラストの美し過ぎる後光にも号泣。

8位 物語る私たち


サラ・ポーリー監督自身の出生の秘密を読み解く為の
手段的なドキュメンタリーかと思いきや、ラストには
自分を取り巻く家族、特に父と母に対する赦しの為の作品なのだと分かる。
中盤、吉田大八監督的手法を思わせる、虚実がシームレスになる
種明かしには、サラ・ポーリー流石だなと感心してしまいました。

7位 ジャージー・ボーイズ


実は物語の起伏・トーンは抑えめにしつつも、
音楽とその見せ方で5億点なシーンを連発させている、
そんな離れ業をしれっとやってのけるイーストウッド御大に驚く。
そして何と言ってもカーテンコール。
本編はリアリティに則り苦みのある終わり方だったけど、
カーテンコールには幸福しか存在せず、監督の優しさにやはり男泣き。

6位 ぼくたちの家族


石井裕也監督は奥さんが満島ひかりということのやっかみもあって
『川の底からこんにちは』以来観ていなかったのですが、やっぱり巧い。
母の罹る病が、家族関係にメタファーになっているあたりもさすが。
家族総出でどんどん窮地に追いやられていきながらも、
微かな光が見えてきてからの展開は、やや予定調和的と
思われるかもしれないが個人的にはグッとくるものがあった。
家族と会話をしたくなった、そんな作品です。

5位 ゴーン・ガール


年末にとんでもない作品が来てしまった。
家族失踪系のサスペンス、もしくはミステリーかと思いきや、
普遍的な家族・夫婦にまつわる話を寓話的に描いていることに気付く。
ベン・アフレックのダメな男っぷり、
ロザムンド・パイク(一世一代の名演!)のファム・ファタールっぷり、
エミリー・ラタコウスキーのおっぱい等、見所に枚挙の暇がない!
円環構造的な締めくくり方に、思わず「恐ろしい…」と声が漏れてしまった。
フィンチャー恐るべしといった作品。

4位 とらわれて夏


ジェイソン・ライトマンの新たな一面を見せつけられた傑作。
母子と脱獄囚の男が、「家族になっていく」様を淡々と、
しかし美しく描かれていく。
『懲役が20年長くなってもいい、君とあと3日過ごせるなら』
というジョシュ・ブローリンの台詞に嗚咽。

3位 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー


3位にしていますが、極めて1位に近い3位です。
僕は今年30歳になりますが、心のどこかではやはり、
「『スター・ウォーズ EP4』をリアルタイムで観れていない」
という劣等感みたいなものがあるわけです。
クライマックスで、幻の中で病床の母が主人公に手を差し伸べるシーン、
あれは劣等感を抱いて燻っている自分に、ジェームス・ガンが
手を差し伸べてくれているシーンでもあるのだと思い、号泣。
胸を張って、「自分にとってのスター・ウォーズ」と呼べる大傑作です。

2位 アメイジング・スパイダーマン2


「俺は絶対に負けない」
そう確信した時、真のヒーローが生まれる。
ヒーロー誕生の瞬間は、いつだって感動的である。

1位 her 世界でひとつの彼女


1~3位で悩んでいた時に、前年の1位を振り返った。
その結果今作をやはり1位に挙げなくてはと思った。
自分にとってやはり「ファッション」も作品を語る上で
大きな要素である、ということを再認識したからだ。
今作は演技・演出・世界観等々、全てを含めて完璧な作品だと思う。
『ゴーン・ガール』同様、SFではありながら、その実
男女の出会いと別れ(いや、寧ろ男女に限らず人と人の出会い全般か)、
という人生において普遍的なテーマをやはり今作でも寓話的に描いている。
その結果、既に逝ってしまった大切な人達への思慕が込められている。
「これは俺の映画だ」と思わせてくれた作品です。


あと、個人的にとある方に捧げる為に、下記の作品を特別賞としたいと思います。

『マイ・マザー』
『わたしはロランス』


こうやってトップ10を振り返ってみると、
普遍的なテーマを独特な語り口で描いていたり、
窮地に立った人間が現状を打開し飛躍していく、
そういう作品が好きなんだなと、自分の嗜好を再認識した気がします。


来年はどんな年になるのやら。


さてさて、毎年末恒例の個人ランキング。

今年は、新作は55作品、新旧含めると107作品を鑑賞。
昨年を大きく更新する事が出来たけど、新作についてはまだまだだなぁ。

そして周りの方も良く言っているけど、今年は豊作だったと思います。
それ故に、見逃している作品に今年を代表する作品が多いので、
個人的にちょっと今年のランキングにはモヤモヤが残ります。

そして、他の方のベスト10とか、凄いカッコいいんだなぁ。

何はともあれ、新作55作品のランキング、いってみましょう。
ちなみに、今年は一つ反則があるけど、それはご愛嬌で。許してつかぁさい。

後フォロワーさんの方法をちょっと拝借して、
今年は映画秘宝方式でトップ10について寸評もちょっと書いていこうかな。

殿堂入り もらとりあむタマ子

1 ビル・カニンガム&ニューヨーク
2 そして父になる
3 横道世之介

4 嘆きのピエタ
5 愛、アムール
6 パシフィック・リム
7 ジャンゴ 繋がれざる者
8 プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ ~宿命~
9 ルビー・スパークス
10 はじまりのみち

11 風立ちぬ
12 クロニクル
13 シュガーラッシュ3D
14 かぐや姫の物語
15 クロユリ団地
16 イノセント・ガーデン
17 ラストスタンド
18 凶悪
19 地獄でなぜ悪い
20 セデックバレ第一部・太陽旗
21 セデックバレ第二部・虹の橋
22 エンドオブウォッチ
23 劇場版まどか☆マギカ 新編 反逆の物語
24 ブリングリング
25 Documentary of AKB48 No flower without rain 少女たちは涙の後に何を見る?
26 パッション
27 ムーンライズキングダム
28 真夏の方程式
29 ばしゃ馬さんとビッグマウス
30 悪の法則
31 LOOPER
32 L・Aギャングストーリー
33 選挙2
34 清洲会議
35 TED
36 CABIN
37 サイド・エフェクト
38 グランド・イリュージョン
39 アイアンマン3
40 ハングオーバー!!! 最後の反省会
41 セレステ∞ジェシー
42 アフターショック
43 シュガーマン 奇跡に愛された男
44 仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム
45 ザ・マスター
46 クソすばらしいこの世界
47 ヒッチコック
48 アルマジロ
49 レ・ミゼラブル
50 リアル 完全なる首長竜の日
51 HK 変態仮面

52 ガッチャマン
53 脳男
54 R100


はい、殿堂入りについては異論の余地は許しません。
ランキングに左右される作品ではないのです。
まど☆マギ風に言えば、「円環の理」なんです。
もはや僕にとっては概念です。

まずはワースト3位の寸評を。

52位
バカな脚本とバカな監督。
面白いわけがない。兎に角穴だらけで、体積が少ない駄作。

53位
皆結構評価してるけど…そうか??
日本映画に多い悪しき「大衆の演出」と
「ステレオタイプな登場人物のキャラクター」の釣瓶打ち。
新世代の良い役者が出ているだけに、実にもったいない。

54位
29年間の人生で、映画の全てに殺意を覚えたのは初めて。
映画をやらないなら映画を撮るなよ。


そしてトップ10について。

10位
話は超ミニマムでも、普遍性とキャラの魅力、そして何と言っても
監督の溢れんばかりの映画愛が伝わってくる良作です。

9位
『(500)日のサマー』以降、新しいボーイ・ミーツ・ガールの可能性を感じました。
個人的に、主人公が書き上げた小説の表紙を見て、号泣。
大切な人の狂おしい程の愛おしさとは、ふとした時に垣間見えるもの。

8位
前半ももちろん良かったけど、僕は後半、
言ってみれば「ディン・デハーン」という新しい才気に魅了されました。
個人的に好きな「継承もの」であり、ほろ苦さも良い。

7位
期待値を超える作品というのは、実は意外に少ないのでは。

6位
映画の全てが詰まっている。ロボットアニメをこよなく愛する私にとっては、
「よくぞ…よくぞっ…!」という、号泣もののカタルシス満載。

5位
きつい。誰にも救いがなく、幸せがないのではないか?
ただ、クライマックス、主人公の魂が浄化されるシーンでは
比喩や誇張ではなく、涙でスクリーンが観れなかった。

4位
後半の主人公の地獄巡りに、13階段を上るような緊張感が増していく。
クライマックス直前、“ある3ショット”があるのだけど、
主人公の気持ちを考えると…心がズタズタに千切れそうになる。

3位
つい先日観たけど、生涯ベスト級かも。
僕も、思い出すと笑みがこぼれたり、会いたくなったり、
出会えた事が嬉しいけどそれと同じくらい哀しい、
そんな世之介のような人になりたい。
そして、吉高由里子に恋をしました。

2位
是枝監督、やっぱり好きだなぁと再確認。
小道具や役者の表情、構図や説明的でない台詞回しで
全てを語れる演出にはやはり脱帽。
『ある子ども』という作品の邦題のダブルミーニングに似た
このタイトルの意味に、作品を観終わって納得。
これはまさしく、「父になる」映画である。

1位
伏兵。でも、鑑賞中ずっと笑みがこぼれる、主人公ビルの存在感である。
ファッション業界の重要人物として関係者から崇められながらも、
本人は至って根無し草で朴訥とした雰囲気。
「ファッションが好き」というとにかくシンプルな笑顔、
そしてファッショニスタ達への敬意と愛、
ただどこか孤独を感じさせる雰囲気や、時に辛辣な言葉であったり、
単なる「良い人」の型に嵌らないのが魅力だと思う。
下手の横好きではあるが、ファッションも好きな自分にとっては、価値ある作品でした。


今年は良い映画ばかりで、正直46位から上位は
順位が本当につけられないぐらい作品のどこかに大好きなシーン、
もう一度観たいシーン、5億点なシーンがある。

来年は、とある試験の勉強やおそらく転職の為
なかなか映画を観れないかもしれない。

それが今から哀しいけど、なるべく週に1回、もしくは
2週に1回は観たいなぁ。

今年は改めて、「自分が映画が好きだ」と再確認出来た貴重な1年でした。

それと、皆さん良ければ僕と映画の話、もっとしましょう…


それではまた来年末に。
とある理由がありまして(その理由はあまりにも低級すぎて言えませんが)
現在前田敦子さん推しというか、ほぼストーキングに近い状態。

そんな私なので、前田敦子主演の『もらとりあむタマ子』を
素面な状態で評するなんてのはどだい無理な話だし、
何を言っても贔屓目に見られちゃうとは思うけども。

でも。
本当に、良い作品なんです。

派手さや話の高尚さばかりが映画の価値を決めない。
この作品が山下監督の手腕、向井さんの本の巧みさ、
そして前田敦子さんのカメレオン的演技を元に
証明されたと思います。

『もらとりあむタマ子』
「苦役列車」でもタッグを組んだ前田敦子と山下敦弘監督が、実家で自堕落な日々を送る女性タマ子の姿を描くドラマ。
東京の大学を出たものの、父親がひとりで暮らす甲府の実家に戻ってきて就職もせず、
家業も手伝わず、ただひたすらに食っちゃ寝の毎日を送る23歳のタマ子が、
やがてわずかな一歩を踏み出すまでの1年を追う。

もともとはCSの「M-ON!」のステーションジングルを
目的に短編以上に短編用に撮影されたドラマ。

それを約30分のドラマ枠に編集して今年の4月に放映されたが、
さらに春と夏を追加して、タマ子のモラトリアム期を1年間通して見つめた
一つの映画として編集され、完成したのが今作です。

さてと。

5億点の連続の映画なので、どこから言及すれば良いのか分かりません。

まずは何と言っても、冒頭のシーンでしょうか。
物語の始まり、布団の上で悶えるところから、
食事をしトイレである単語を絶叫しながら、
排泄しながら漫画を読む、という一連の流れをもって
全く説明セリフを用いずに彼女のパーソナリティと
父親との関係性を表現出来ています。

映画全編を通じて、前田さんの食事シーンが盛り沢山ですが、
正直な話、この食事の作法やその様子が全く可愛くない。
しかし、全く可愛くないのが超絶に可愛いのです。
このロジックはなかなか分かりにくいでしょうが、
映画を鑑賞された方には120%伝わると自負します。

そして、今作では何と言っても特筆すべきは食事シーンであろう。
父親の作る、派手ではないが日常的な風味が視覚から読み取れる手作り感。
そして、「クチャクチャ」と咀嚼音を強調する事で、鑑賞している観客に
その場に居合わせている感覚を巧く共有させていると思う。

今作は、ストーリーだけでなく登場人物の人間性や関係性や環境等、
観客のほぼ全員がベン図的にこの作品に心情を重ねられると思う。
それ故に、観客に「この場に居合わせている感」を抱かせる事は重要です。
だから、鑑賞した方々の感想の多くが似通っているのだと、僕は思います。

そして、例の「少なくとも………今ではない……!」のシーン。
僕はそのセリフの可笑しみよりも、演出上巧いなと思ったのは、
父親の康すおんさんと前田さんの、顔の筋肉をワナワナさせる感じが、
対立はしつつも口論しつつも、どうしようもなく父子なんだな、と
感情が昂った時の表情というか癖が同じというところで表せている。

冬のシーンにおいても、5億点シーンはあります。
伊東清矢君演じる中学生が交際中の女子の帰り道、
コートにぐるぐる巻きのマフラー(でも中身はジャージ)姿の
タマ子が、慈しみとじゃじゃ馬感を両立させた笑みを浮かべる。
この表情、5億点でしょ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ここについて言及する人いないから、強調しました。

そして、大晦日の夜。
父親に小言を言われながらも、携帯を駆使し新年のメール送付に勤しむタマ子。
その後、彼女はメールの問い合わせを繰り返すも、返信はない。
下手な監督だったら、タマ子の後ろから携帯の画面を映し出す
カットを描きそうなもんだけど、山下監督はそういう不細工な事はしない。
それに至る彼女のセリフと行動だけで、それを観客に伝えられている。流石。
そして、このシーンは『ソーシャル・ネットワーク』のラスト的な
悲哀も少し込めている。こういう所も抜け目なくて、やはり流石。

春。
僕は前髪パッツン×ボブカット×猫目、という三種の神器を兼ね備えた女性に弱い。
タマ子は髪型に満足いっていないようだが、僕は目がハートになる程大好きです。

フェティッシュの話はどうでも良い。

ここからは半分はステーションジングル用、半分は映画公開用に
作られていると思われる為、話に膨らみをもたせ始めている。

ここでは、タマ子の能動性を垣間見せている。
ここで、結果として分かるのは、やはり食事シーンでそれを表している事である。
なるほど、彼女は芸能界入りを密かに目標とし、動き出している。
それをやはりセリフではなく、彼女の食事の摂り方の変化で表せている事に、後になって気付くのだ。

そして、父が彼女の目指す目標の一端を目にしてしまう。
それを、相変わらず漫画を無防備に読み耽っている彼女の表情をバックに、
彼女自身のモノローグとして語られる。

僕がこの映画で一番目にハッとさせられたシーンである。
「今の自分は、本当の自分ではありません…」と語られるモノローグ。
これは破棄された履歴書の自己PRの一文であり、観客もクスクスと笑っている。

でも僕にとっては、『桐島、部活やめるってよ』の野球部キャプテンの独白シーンと同様、
「お前ら笑ってんじゃねーよ!!」と思わず憤りそうな場面だった。

これは、彼女が常日頃感じていた違和感の現れなんだと思った。
今までの彼女の言動を見るだに、ジョークとして描いていると思われるかもしれないが、
もちろん一部は誇張はされているだろう。だけど、この文を書いた履歴書を捨てているという事は、
「これはちょっと本気過ぎる」と彼女が判断した事の現れではなかろうか?
そう感じ取った僕は、このシーンがとても笑えるものではなかった。
この映画を通じて、彼女のある種の孤独感を描いていたと思います。

でもね、そんな感慨を吹き飛ばす、20億点のシーンがあるんですよ。
タマ子が中盤で「嫌がらせ?」とまで評するある写真が
春のシーンで撮影されるんですが、その写真の前田さんの可愛さが20億点なんです。
元国民的アイドルの不動のセンターが、アイドルとはほど遠い女の子を演じて
その子が振り絞ったアイドル感を出し切った表情、それを切り取った写真…
この写真自体が20億点ですよ。僕は昇天するかと思いました。
先述したロジックと同様、とにかく可愛くないけどそれが超絶可愛いんです。

僕は、春のシーンが一番好きです。


夏のシーンは、本格的に劇場用に撮影されていると思うので、
ストーリー性も増しているし、他の季節よりもガッシリしている。

タマ子は、父親の再婚話を知る。
今までは彼女は彼の存在自体を疎ましく思っていたが、
先述の通り、そうはいっても彼女はその父の子、
離婚している親とはいえど、それは認めたくないのだ。子の心理。
中学生をパシリに使ってその再婚相手を思しき女性に接近する
(その前後の2人のやり取りは本当に面白いけど、語り出すと終わらないので割愛)

そして、タマ子自身が父の交際相手に接近する。
交際相手を演じるのは富田靖子さんなんだけど、本当に、絶妙に魅力的。
絶世の美女と言うかけ離れた存在ではなく、市井の中で目立つ美人。
タマ子は口コミ的風評で彼女を断じていたけど、彼女の飾らない人柄を
認めつつも、やはり無意識に父を閉じ込めようと
(というよりも、現状の家庭というぬるま湯を変えない為に)
ある事ない事を嘯いて彼女に父親を断念させようとする。

けど、実際に彼女が少し(タマ子を含めた)父に少し懐疑的な言動を認めると、
「あ、ちょっと言い過ぎたかも」とすぐに自分の行動を省みて、
すぐ前まで言っていた事の正反対な事でその場を繕おうとして
とにかく言葉を重ねまくる。彼女の不器用さが、このシーンでわかる。

父の幸せを願いつつも、でも父は自分のものでもある。
そしてそれは、中途半端に繋がっている実の母、という存在も大きい。

その実の母の存在が初めて現れるのが、橋のシーンである。
ここが、本作でハッとさせられるシーンの二つ目。

タマ子は、母親に父の再婚の可能性を示唆し、明確に意図しないまでも
「これは可能性あるし、やばいよ」「寄り戻した方が良いよ」と暗に伝える。

ここで、タマ子は全編を通じて初めて、親子間における「子どもっぽさ」を垣間見せる。
離婚した両親を表面上は認めつつも、やはりその繋がりは絶対なものだと思っている。
でもここで、母は「タマ子にとっての母」ではなく「1人の女性」としての発言をする。
それに対し、タマ子は「冷たい」と言う。ここで、タマ子は父と母に関係性的にも依存している事を表している。
これはね、子としては当然だと思うんです。ただ、それは作中に今まで現れていなかった事なので、
個人的にはハッとさせられたわけです。
何て言うんだろう、「家庭というものは、もっと言えば血というものは、思っていたよりも強固じゃないんだな」って事がちらと顔を覗かせた場面だと思ったわけです。

その後の、父と子の物語上の最後の食事シーンは言うまでもないでしょう。
今までの描写と、直近の登場人物の心情やその吐露が全て結集された場面です。
タマ子が父に発したある短い言葉。上から目線と言われても仕方ないギリギリのラインかもしれないけど、
僕はこの場面、とても大好きです。坂井家にとって、父と子かくあるべき、というお話の集結として最良の掛け合いだった。

この作品は、本当に唐突に終わるし、そのラストに語られるやり取りというのは
作品を通じての結末、というわけでは決してないけれども、
僕には、超良い意味でのこの「呆気なさ」というには心地よいしリズム感も良いと思う。
というより、明確な「終わらせ方」を設けないのが、このストーリーにとって
大切なオチの付け方なんだと思った。
終わらせ方を明確にしてしまうと、その善し悪しが付帯されてしまう。
「モラトリアムな期間」というのは、人生にとって善し悪しではなく誰にもで訪れ得る、但し人生において必要な場面でもある、ということなのかなと。

そういった心地良い読後感を味わった後、とあるシーンが
エンドロールに差し込まれ、それに拒否反応を示される方も多いようだが、
僕は、この映画は『今の前田敦子のポートレート感』を魅力最大限に切り取った
映画だと思うので、あのエンドロールは丁寧なカーテンコールだと感じました。


……自分の文章を改めて見返したけど、長い。とにかく長い。

改めて言葉を重ねるけど、これは語りがいのある作品だと思う。
ベン図的に重なる部分が多い分、皆が自分の心境と照らし合わせて語りたくなる作品なのだろう。

演出や脚本、そして演者の演技のアンサンブルを含めて、
語りがいがあるというのはとても価値のある映画だと思います。


自信を持って言えます、オススメの作品です。



今日の一曲  季節 / 星野源