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24時のブルース

映画・音楽などに関することを、ひねもすのたりと語ります。

はい、以上になります。


いや、異論が出てきそうな気がビンビンします。


何でヒミズが3位なんだ、とか。


裏切りのサーカスが下過ぎるだろ、とか。


てか裏切りのサーカスよりユニコーンの方が上かよ、とか。


宇宙人ポール低すぎだろ、とか。


最強のふたりちゃんと観てたのかよ、とか。


1位のスカイフォールは宇多丸の影響だろ?、とか。


全て受け止めますよ。

その上でね、これは俺のランキングなんだよ!

好きにさせろよ!って事なんですよ。


では下位3作と上位3作の寸評を。

中間の作品は今後追記していきたいと思います。


51位 生きてるものはいないのか

うーん、元が舞台ということで、舞台ならまだ分かるんだけど…

不思議な原作×石井監督×劇映画=採点不可能、って感じです。


52位 踊る大捜査線 THE FINAL

いや、途中は良かったんですよ。やっぱり事件発覚の後に

BGMと共に青島が走り出したりとか、OPの感じとか、

グッとあがる部分はあるんですよ。

たださ、割と前半で犯人が勝手にネタばれするじゃん?

おまけに犯人分かってるのに、観客には青島達と同じ

犯人は分からない視点で見せるから、緊張感でないわ違和感ありだわで。


まぁ後とにかく、バナナとトラックで結果げんなり、ってことです。


53位 スーパーヒーロー大戦

特撮映画としてもお祭り映画としても成立していない。0点以下。

てか自分のような全ての平成ライダーのファンにとっては、あの展開は絶対に

納得いかないし噴飯ものだと思う。そんな利用の仕方はないだろう、と。

とにかく、誰に対しても愛の感じない映画だった。

運命のガイアメモリ、MOVIE大戦MEGAMAXのように

他の秀逸な映画陣に肉薄出来るぐらい真摯に作られた良作に対して失礼だ。


3位 ヒミズ

震災以降ということを作品に盛り込んだ事や、

震災のイメージを過度に差し込む事に対する拒否反応が強く、

割と皆さんの評判は悪いのは承知の上です。

ただ、あの震災は拭い去れない事実であり、その地で生きる人は確かにいる。

であれば、この作品が生まれても何ら不自然ではないし、

震災のイメージはキャラ個々人の”時が経っても、それでも垣間見える絶望”を

表現出来ていると思うんですよ。

そして何よりも、原作ファンの自分にとって、

あのラストはとにかく嬉しかったんですよ。とにかく涙が止まらなかったんだ。

だから僕はこの作品が大好きだし、この順位です。


2位 高地戦

映画の楽しめる全ての要素がこの作品に詰まっていると思う。

戦闘シーンの、観客に主観視させるようなカメラワークに

とにかくぐいぐい引き込まれていきました。

もちろん人間ドラマもしっかりと練られていて、

2秒”があの言葉を記された写真を手渡されるシーンは…

ここまでの悲哀のシーンはなかなかないと思う。

そしてクライマックスの絶望的な地獄絵図…

今まで観てきた戦争映画の中でも極北だと思います。


1位 007 スカイフォール

宇多丸師匠のランキング結果は知っていたけど、

シネマハスラーは聴かずに臨んだから、あくまで初見みたいなもんですよ。

ただ、この作品は予告の段階、ボンドが列車に飛び移った後に

平然とトム・フォードのシャツのカフスをさらっと直す仕草で

「この映画は勝ちだ!素晴らしい!」と勝手に感じていました。

これは『桐島、部活やめるってよ』の予告で東出君のあのシーンが

流れていた時に桐島の作品としての価値と勝ちを確信した時と似ています。

そして、両方とも確かにその予想は的中したわけです。

物語自体も申し分なし、それこそ宇多丸さんのハスリングが

過不足なくこの映画を評価されていると思います。

この作品は何といっても特筆すべきなのはアバンタイトルからのOPでしょう!

川に落ちる(まさしくスカイフォール…!)ボンド、そして地下に誘われると共に

流れるアデルの「スカイフォール」…

この時点で、私はもう映画が終わっていい、とまで思ってしまいました。

とにかく素晴らしいの一言。思わず射精するかと思いました。

そんな映画が1位にならない訳がありません。



ということで、以上が寸評となります。

今年はとにかく良作の、特に邦画が多かったように思います。

そして韓国作品のクオリティの高さには舌を巻くばかりです。

下位は割とサクッと決まったけど、中間以上が順位付け難しかったな…

言い訳がましいかもしれないけど、40位以上はどれも好きな映画だし、

もう一度見返したら頻繁に順位が入れ替わりそうな、とにかくそんな感じ。


来年はどんな作品が待ち構えている事やら…

今からとても楽しみです。

御晩でございます。


昨年末に引き続き、今月も個人的シネマランキングを開催致します。


今年は、今年新作に関しては53作品鑑賞。

新旧問わず全作品とすると84作品を鑑賞。

去年を大幅に更新する事が出来ました。


今年前半は色々あってかなり失速気味だったのが、

後半になって徐々に盛り返して行きました。

最初は大変だった仕事のシフト制をうまく使って、

業務後でも観に行ける率がかなり高くなったのと、

名画座を活用する事を覚えた結果だと思います。


年間50作品は達成する事が出来てとにかく良かった。

来年は欲をかいて70作品行ってみるかなー。


何はともあれ、さっそくランキングを発表したいと思います。


1.007 スカイフォール

2.高地戦

3.ヒミズ


4.桐島、部活やめるってよ

5.サニー 永遠の仲間たち

6.おおかみこどもの雨と雪

7.SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者

8.この空の花 長岡花火物語

9.アウトレンジビヨンド

10.黄金を抱いて翔べ


11.スーパーチューズデー 正義を売った日

12.哀しき獣

13.Documentary of AKB48 show must go on~少女は傷つきながら夢を見る~

14.ドライブ

15.バットマン ダークナイト・ライジング

16.アルゴ

17.アメイジング・スパイダーマン

18.アベンジャーズ

19.フランケン・ウィニー

20.トガニ 幼き瞳の告発


21.ポエトリー アグネスの詩

22.悪の教典

23.エクエスペンダブルズ2

24.エヴァンゲリオン新劇場版Q

25.先生を流産させる会

26.かぞくのくに

27.崖っぷちの男

28.機動戦士ガンダムUC ep5 黒いユニコーン

29.アイアン・スカイ

30.映画は映画だ


31.最強のふたり

32.アーティスト

33.デビルズ・ダブルス

34.裏切りのサーカス

35.凍える牙

36.宇宙人ポール

37.危険なメソッド

38.SHAME

39.素晴らしい一日

40.夢売るふたり


41.アリラン

42.J・エドガー

43.るろうに剣心

44.苦役列車

45.鍵泥棒のメソッド

46.ヘルタースケルター

47.MIB3

48.ツナグ

49.宇宙兄弟

50.僕達急行 A列車で行こう


51.生きてるものはいないのか

52.踊る大捜査線 THE FINAL

53.スーパーヒーロー大戦




今年はシネマハスラーの賽の目をなるべく追うため、
もしくは周りでの評判や好事家達の論評を元に
多くの作品を観ていこうと思い、ちょこっと頑張りました。
DVDも込みで年間100本を目標にしていたけど、
途中から仕事量が増えたため年半ばから失速。
結局のところ新旧合わせて80作品弱だったような気がする…
今年の新作だけでいうと43本という結果でした。

ということで、とりあえず今年の新作についてランキング作ってみた。
ランキングを考えてみて気づいたけど、宇多丸師匠は本当に大変だなと。
一般人とは違って色んな柵もあるだろうし、けど作品は正当に評価したいだろうし。

それと、順位をつける上で改めて実感したのは、
上位と下位は比較的サクッと決まるんだけど、
中間の作品が順位付け難しいなぁ、ということ。
やっぱり年初に観た作品は印象や内容も薄れちゃうから、
それがランキングにおいて変なバイアスかかっちゃうし。
「この作品は…なー!」みたいなw
「全体的にはボンヤリしてるけど…あのシーンとかメッセージとか…好きなんだよな-!」みたいなw

宇多さんも言っていたけど、あくまで個人的ランキングだから
作品の善し悪し、出来不出来以上に、個々の作品に対する
思い入れであったり嗜好が大きく影響すると思うので(言い訳
それこそ、僕の1位は他の人からしたら「何で?」と口あんぐりかもしれないけど
こればっかりはしょーがない!好きなんだもの!号泣したんだもの!

さて、枕はこれぐらいにして、下記が2011年個人ランキングでござます。

1.仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ ムービー大戦MEGA MAX
2.ミッション:8ミニッツ
3.その街のこども 劇場版

4.スーパー!
5.劇場版神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ
6.英国王のスピーチ
7.ブラックスワン
8.ブルーバレンタイン
9.冷たい熱帯魚
10.X-MEN FIRST GENERATION

11.アジョシ
12.50/50
13.キックアス
14.わたしを離さないで
15.ソーシャルネットワーク
16.猿の惑星:創世記
17.ザ・ファイター
18.七つまでは神のうち
19.SUPER 8
20.メタルヘッド

21.モテキ
22.カーズ2
23.アンチクライスト
24.しあわせの雨傘
25.トゥルーグリッド
26.ツリー・オブ・ライフ
27.キッズ・オールライト
28.GANTZ
29.くまのプーさん
30.コクリコ坂から

31.ハングオーバー2 史上最悪の二日酔い 国境を越える
32.人生万歳!
33.オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー
34.怪物くん
35.アンダルシア
36.ピラニア3D
37.あしたのジョー
38.ノルウェイの森
39.ウォールストリート
40.素敵な金縛り

41.GANTZ2
42.もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
43.ツーリスト


前述の通り、トップ3とワースト3はさっくり決まった。
んで、僕はあまり評判の悪い作品は避けるタイプの人間なので、
なんやかんや言って30位以上の作品でも結構好き目です。

ワースト3について簡単に評価:

GANTZ2…
一作目は良かったんだけどなー。結局原作にはない
大衆的な「べき論」に落ち着いたのが気に入らなかった。

もしドラ…
最後ドラッカー関係ない!って町山さんが言ってたけど、
逆にそこは、マネジメントを駆使した結果+αでのK.U.F.U.で
勝利を勝ち取ったと感じたからそこまで気にならなかったけど、
とにかく主人公に魅力を感じなかった。嫌な女じゃん。

ツーリスト…
多くは語るまい。つまらない。ラストに至ってはもう…
『アイデンティティー』や『ユージュアル・サスペクツ』を観て出直してこい!

トップ3について簡単に評価:

その街のこども…
抑揚を抑えて、会話と表情でストーリーが淡々と紡がれる、
阪神淡路大震災をテーマにしたロードムービー。
クライマックス手前、マンションの一室の明かり…そしてそこから振られる手…
最後2人が別れてタイトルが出てきた後の献灯式。
阪神大震災のことはもちろんニュースや経過の報道で知っていたけど、
「あ、自分は震災に対して、知ったつもりで実は何も理解していなかったんだ」
と痛感して、被災者や家族がそれぞれの面持ちで献灯していくシーンに、
涙が溢れました。映画館で、ちょっと声を上げてしまう程に。

ミッション:8ミニッツ…
退屈さを感じさせないのは、スピード感のあるサスペンスだからだけでなく、
作中の経過等をすごくタイトかつ絶妙に演出やセリフで省いているところで、それが凄い。
そして、最後のミッションに向かう主人公の行動の真意に気づき、これまた号泣。
死が目の前に迫っていたとしたら、「その上で、生きるとは何か?」を主人公が、
語らずに行動で示していき、それが周りの人たちに波及していく、あのストップモーション。
あそこは本当に涙が止まらなかったし、屈指のメッセージだと思った。

ムービー大戦MEGA MAX…
語り尽くせないけど、生身の俳優のアクションや、
それぞれのボス級怪人と「2人のライダーで立ち向かう」構図という
初代仮面ライダーに対するオマージュがしっかりしていて好印象。
それと、仮面ライダー部の7人の友情には号泣。
それとそれと、とにかく真野ちゃんが可愛すぎる。やっぱり語り尽くせない!


そんな感じでございます。
その他の作品については…
逆に他の人と語り合いたいですね、酒の肴としてw


来年こそ年間100本、新作は50本という目標を達成したい!

がんばるぞー。
2004年、イラク・バグダッド郊外。アメリカ軍の危険物処理班は、路上に仕掛けられた「即席爆発装置」と呼ばれる爆弾の解体、爆破の作業を進めていた。だが、準備が完了し、彼らが退避しようとしたそのとき、突如爆弾が爆発した。罠にかかり殉職した隊員に代わり、また新たな“命知らず”が送り込まれてきた。地獄の炎天下、処理班と姿なき爆弾魔との壮絶な死闘が始まる――。(Wikipediaより引用)


ウィークエンドシャッフルでのシネマハスラーでも取り扱われ、
宇多丸師匠のハスリングに対し映画評論家の町山智浩さんが異を唱え、
ポッドキャスト上で論争となっていたので、いったいどんな作品なんだ?
と興味を持ち、最近ようやく観る事ができた。

結構面白かったですよ。

爆弾処理のシーンも、爆弾処理を直接行う
主人公の解体シーンだけでなく、そこを援護する
周りの兵隊達の鋭い殺気、目線、やり取り。
それを細かいカメラワークでパッパと切り替えるので
緊張感が持続する。故に常にチャプターの1つ1つに引き込まれる。

ただ、同じような解体作業シーンだけでは
ルーティンなものになってしまうので、特にはこちらも
静謐な緊迫感を持った銃撃戦を描いてみたり、
爆弾処理にしても、一筋縄じゃいかない様子を
主人公の心境の移り変わりと平行させて描かれている。

流れ的には、最初主人公はポッドキャスト内でもよく表現されていた
達観した「思考停止のススメ」を地でいくスタイルでいたにも拘らず、
次第に現地の少年と交流を深める事からそこが崩れていき、
うまくできたと思っていた「思考停止のススメ」は、彼の慢心で
構築されていたように思えるから、慢心が打ち砕かれる事で
思考停止が困難になり、徐々に失敗と焦りが露呈していき、さらにスパイラルしていく・・・

で、結末としてはどちらかというと僕も
宇多丸さんと同じような感慨を持ちました。
主人公の、その逃れられない自分の「才能」と言うか
安穏と日常を過ごす事のできない、極端に言えば
「悪癖」とも言える衝動故に・・・のラストではないかなと。
その為に僕もラストシーンの主人公には悲壮感を感じた。

それに反し、町山さんは「そうじゃない」と否定的。
『誰でもその才能があれば、再び戦場に向かわざるを得ない』
というのが、町山さんのラストシーンに対する解釈だったけど、
確かにその時に使われていたBGMの意味合いを考えれば
(僕にはもちろんその曲に対する知識はなく、ポッドキャストで初めて知ったわけだが)
そうともとれなくはないとは思うけど、
宇多さんが、2回目の爆弾解体へ向かう主人公に対し
タクシーで突進してくるイラク人と相対する場面で、
『あーいう場面ではアメリカ兵は躊躇せず引き金を引くはず』
と論じていた事に町山さんは
『統計や報道で示された事実じゃないのだから、乱暴なことを言っちゃいけない』
と批判していたけども、その言葉を借りるのであれば、町山さんの
その結論の出し方も「乱暴な」ものではないかなと思った。

そういう心境、もしくは行動に移るのはそれこそ千差万別だし
アメリカ国民の戦に対する姿勢や思想はわからないけども、
少なくとも自分が主人公と同じ立場でも、二度と戦場に行こうなんて思わないもの。
だからこそ、最後に主人公がとった行動は、主人公の生来の性格であったり
平和な日常生活に対する焦燥感故に、ではないだろうかと思う。

そもそも、ラストシーンの解釈に「絶対」はない気がするのだ。
それは登場人物達に自己を投影するか、ただ感情移入するかだけでも
解釈はかなり違ってくるんじゃないかなと思う。

と、ここまで書いて一度Wikipediaを閲覧したところ、
町山さんの映画評論のスタイルは、以下の通りなのだそうです。

論証対象の映画ができあがるまでの、原作者、脚本家、監督、俳優、プロデューサー等それぞれの、思想・考えや行動、偶然のできごとなどの、エピソードなどを事細かにとりあげ、論じている。いわばオーソドックスな「映画評論」のスタイルといえる。そのため、蓮實重彦が提唱して映画批評界に大きな影響を与えた「映画をその映画内に表現された内容のみで論じる」という「表層批評」と、大きく敵対している。

そういうことであれば、町山さんが主人公の最後にとった行動を
かのように推論したのは納得がいくなーと、上記の説明で
僕の考えが180度変わりそうになります。w

ともあれ、こういった論争を引き起こしかねない原因は最初の字幕、
『戦争は中毒』という言葉が、良い効果を持たせている気がするけど、
ある意味で「不足」、もしくは「蛇足」だったのではないかと思います。

なんやかんや言いながら、
面白い(というと語弊があるか)作品でした。
戦争映画は後味が悪いに限る、というのが持論です。
極端な反戦映画ではなくあくまでエンターテインメント作品なんだろうけど、
戦争を扱う以上、個人的にはこのラストは好きです。

今まで観た中で一番後味は悪かったのは『ノーマンズ・ランド』だったなぁ。


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【ストーリー】
ほんの出来心から顧客の金4万ドルを横領して逃亡するマリオン・クレーン(ジャネット・リー)。
街を出る際、社長に目撃されたり、警察に怪しまれたりする が、何とかくぐり抜けることに成功。
一軒のさびれたモーテルへ宿泊する。経営者の青年ノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)と語り合うことで、
もう 一度街へ戻り、やり直すことを決心するが、本当のサスペンスはそこから始まる。


以前ほどサスペンス・スリラーに興味はなくなっていたけど、
先日タマフルにて宇多丸師匠による「シングルマン」のハスリングで、
『作中に出てくる「サイコ」のバカでかい看板』という説明が心に残り、
「シングルマン」とある種内容が似ている「めまい」を観た後に
この作品も手を取りました。
※ちなみに「シングルマン」「めまい」共に良作です。

ではでは内容に。
核心にバッチリ触れますが、読者は少ないのでそんなの気にしない。

車にて逃走を続けている時に、マリオンの妄想と
おそらく現実に交わされているであろう被害者や
関係者たちの会話がクロスするシーンは面白かった。
それだけでなく、徐々にマリオンの顔にも余裕からか
不気味な微笑が見え隠れしたりするのも味が出てて、
これぞ「加害妄想」みたいな感じでしたね。

逃走中雨がひどくなりあるモーテルに逃げ込むわけだけど、
豪雨・モーテルの寂れ具合・経営者ノーマンの不気味な爽やかさが相俟って
明らかに何か起こるフラグがビンビンに感じられる展開です。
後の二人の会話でも、それが次第に顕著になっていく。

そして、積み重なった緊迫感が頂点に達するバスルームのシーン。
これは演出の妙なのかもしれないけど、その殺人鬼によるいたぶり方が
え、もしかして身体に傷をつける程度に触ってるだけ?」と思ってしまう感じ。
まぁ、結局マリオンは刺殺されてしまったわけで、絶命の瞬間の表情が
壮絶な恐怖感を表しているんだけど、上記の事が気になって少し笑ってしまいました。

このシーンの前に、厳密に言うと二人が応接室で会話している
シーンの前に、この青年とホテルの真裏の一軒家に住む
母親との激しい口論(主にマリオンに対する口汚い罵倒)があり、
先の犯行をその母親が行ったと思わせる青年のある台詞があるんだけど、
ここが観客のミスディレクションを誘うわけですね。なるほど。
このトリック(とはちょっと違うけど)って今となっては割と
多用されている感もあるけど、サスペンスの基礎となる今作の
時代においては面白い手法だったのかもしれませんね。

そのモーテルへ、お金を横領したマリオンをおっていた
私立探偵アーボガストも辿り着くわけだけど、
真実に迫った段階でやはり殺人鬼の手にかかってしまう。
しつこいようだけど、ここでもミスディレクションを誘う演出が!

その後、マリオンの妹ライラと、マリオンと愛人関係にあったサムが
その二人の失踪を訝りやはりそのモーテルへと駆けつけ、真相を探ろうとする。
モーテル真裏の家に潜むノーマンの母親が怪しいと目をつけ
ライラが家に忍び込むと、そこに殺人鬼が襲いかかる!!
間一髪サムがライラを救出し犯人も捕まえるわけだけど、
その犯人というのが・・・

迂遠な言い方をすると、
隣人十三号」的と言いますか、「ハサミ男」的と言いますか、
「アイデンティティー」のジョン・キューザック的と言いますか、
とりあえずそんな感じの結末だったわけですよ。

なぜ犯人がそういう精神状態に陥ったかは
取調中に医師が精神分析を行って説明します。
いかにもトランスしてしまいそうな内容でございます。

先述の通りこの手のトリックは今では
多用されてはいるものの、この作品がそういった
サスペンス・スリラーの金字塔となり得ているのは
音楽とカットによる緊迫感の演出もさることながら、
クライマックスの2つのシーンだと私は思います。

ラスト前の犯人のあの表情は読んで字の如く正気の沙汰ではないし、
なんと言ってもその表情を出せる不気味な演技力に脱帽です。
それを助長させる「もう一人の犯人」の台詞も身の毛がよだつ。

最後のシーンでは、結末が知れているだけに
登場人物の心情を考えると悲壮感この上ない終わり方。
感覚的には「エレファント」に似てるなぁと思った。
あれも最後の最後には辿り着かずに話は終わったけど、
ストーリーのベースになっている史実の結末がわかっているだけに
待っているのは悲劇だけなので、後味悪い終わり方だったのを覚えている。
もちろん、あの終わり方が最上なわけだけど。


こんな感じですかね。

緊迫感とえも言われぬ結末だけでも私の好みの映画です。

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