タマのお家 -2ページ目

オレの純愛物語<8> 逢いに来たぜ

夏休み、俺は自分でも頑張ったと思う。
いいかげんになってた中学時代の教科書を引っ張り出して、復習を懸命にやった。
何をどうするにも、基本がなってなきゃ、なんねえからな。

中学時代の復習をしてみると、高校生になってからの勉強も、日がさしたようにわかり始めてきた。
高校1年生の、使い込んでねえ教科書も、よれよれになるくらいやったさ。
どうにか、まりもに質問出来るくれえの実力はついたと、思った。


勉強がメインなのか、まりもに教えてもらいたいのがメインなのか・・・ま、どっちでも、いっか。
まりもに逢いに行くには、ちっとはやれるようになっとかないと、質問することさえ、わかんねえからな。
勉強が進んでみると、やっぱり疑問点が、次々に出てくる。
俺は、まりもへの質問事項をメモした。



始業式・・・俺は、自分の学校の始業式はそこそこにサボって、はば学の校門前に立っていた。
通りかかるやつらが、俺を不審気に見て行きやがる。
「何?あの子、目つき悪ぅ!」
「殴りこみ?誰かにケンカ売りにきたんじゃない?」
聞こえてんだよ!
しかし、騒ぎは起こせねえからな・・・ここは知らん顔しとかなきゃな。
こんななりじゃ、ちょっとまずかったかな、と思い出した頃、まりもが女連れで出てきた。


俺に気付くと、走ってやって来た。
「天童くん!」
「よぉっす。」
久しぶりに逢ったまりも・・・んん?こいつ、なんだか綺麗になってねえか?
ちょっと女っぽくなったみてえな・・・気がした。

「どした?わかんないとこ、あった?」
話し出すと、いつものまりもだったけどな。


サテンに行こうと誘った。
周りの連中が、俺たちのこと見て、なにやら囁いてるみてえだったが、まりもは気にもとめてないみたいだった。

商店街のあんまり流行らねえサテンに入るまで、俺は夏休みの成果をまりもに自慢した。
そりゃあ、本気でやったもんな。
自分で自分を誉めてやってもいいくれえに。


まりもは、にっこり笑って、俺に応えてくれた。
こいつが嬉しそうな顔してくれっと、俺もなんだか嬉しくなるのは、なんでなんだろうな。

さっそく、疑問点を質問した。
まりもは、要領よく教えてくれる。


一段落ついたとき、俺は気になってたことを、聞いてみた。
「なあ、おまえ・・・あれから、そのぅ・・・仲直り、したか?」
「へ?」
その返事が、これだ。
ちっ、まったくとろいやつ。

「間抜けな声、出してんじゃねえよ。・・・葉月・・・と、仲直りしたか?」
そう聞いた途端、まりもの顔が、見る見るうちに赤くなる。


やっべえ・・・・こいつ、葉月と仲直りどころか、なんか、有ったんじゃねえのか?
こんなに顔、赤らめるようなことが。
「そっか・・・心配することも、無かったみてえだな。」
「うん、でも、心配してくれてたんだ、ありがとう。」
まりもは、嬉しそうに、そう言った。

ここは、確認しとかねえとな・・・


遠まわしに聞くなんざ、俺のガラじゃねえから、ズバッと聞いた。
「おまえ・・・葉月と、なんか、あった?」
ほんと、わっかりやすいやつなんだよな・・・・。
聞くまでも無く、顔見てりゃ、わかった。

なんか、あったんだな。進展が。
ひょっとして、葉月とデキちまったか。
そう考えた途端、胸がチクリとした。
なんだ、葉月の女になっちまったのかよ・・・・


けど、相手が、あの葉月って・・・マジかよ。
まりもは、可愛いやつだと思うけど、美女ってやつじゃねえもんな・・・・。

葉月はあれだけの男前だ。
モデルなんてやってて、ゲーノー人ってやつだろ。
パンピーのまりもと・・・本気なのかよ?
葉月、凄いモテんじゃねえの?
モデル仲間とか、アイドルタレントとか。
なんだか、噂も聞いたことあるよな。


俺は、思わず口にしていた。
「おまえなぁ・・・大丈夫かあ?」
「え?なにが?」
「相手は有名人だろが。・・・遊ばれてんじゃねえ?」
「珪くんは、そんな人じゃないよ。」
「そっかあ?俺でも知ってるくらいの、人気もんだろ?・・・しんどいんじゃないか?そういうヤツって。・・・俺くらいのにしといたほうが、いいんじゃねえ?お手軽、お気軽、ってさ。」
ついでに、俺をPRだ。


俺は本当に危惧してたんだ。
こんな普通の女が、葉月みてえな男に、本気で相手にされてるのか、ってな。
美女ばっかし見てて、たまには変わった女と付き合いたくなったんじゃねえかって。
だとしたら、飽きられるのは、時間の問題じゃん。
それでなくても、女をとっかえひっかえしてるって噂の男だぜ?
まりもの泣き顔なんざ、見たくはねえ、そう思った。


その時、まりもの携帯に着信が入ったみてえだった。
俺に、ごめんね、と断ると、電話に出た。
どこにいるのか、聞かれたんだろ、のんびりと
「え~と、どこだっけ?名前はわかんないけど、商店街の喫茶店。」
なんて、答えてやがる。
またあとで、と電話を切ったが、すぐに再コールが有った。

今度は、なんだか押し問答してるな。
勉強してる・・・とか、約束したんだもの・・・とか、まりもが言ってるのが、嫌でも聞こえる。
目の前で話してんだもんな、べつに聞き耳立ててたわけじゃ、絶対、ない。


「珪くんの、心配するようなこと、なんにもないから・・・」
最後にそう言って、まりもは電話を切った。
あとでまた、電話するから・・・そう言って。

「葉月・・・かよ?」
「え?ああ・・・うん。」
葉月が、心配して電話をかけてきた?
俺と一緒だってことを、心配してか?
それって・・・やっぱ、そういうことになるよな。
マジかよ・・・葉月と俺・・・ケンカなら勝てるだろうが、他のことじゃ・・・まあ。勝ち目はねえな。けどよ、本気なのか?葉月のやつ。


「ふううん・・・おまえら、俺が思ってたより・・・仲、進んでんだ・・・」
「・・・・・ほら、次の問題、いくよ!時間がもったいないよ?」
まりもは、それ以上なんにも言わずに、またお勉強タイムになった。
昼は、俺がおごった。
教えてもらってるもんな、当然だろ?
かなり遠慮してたけどな、まりも。
この俺が、割り勘だなんて、ダセー真似、出来るかよ。
そんなとこ、まりものいいとこだけどな。


昼からも、みっちりやった。
本当に、無駄口もきかねえ、勉強会だったぜ。
俺、ちょっとはまりもと話したりもしたかったんだけどな・・・
今度、勉強だけじゃない・・・その・・・デイトにでも、誘ってみっか。
けど、こいつ、今、葉月と・・・・
そう思うと、言葉が出てこねえ。


勉強が一段落して、送るって言ったんだけど、まだそんな時間じゃないからいいよ、って断られた。
お前ともう少し、一緒に居たいんだよ、わかれよな、って思ったけど、こんなとろいやつにそう望む方が無理ってもんか・・・。
けど、別れた後、どうしてもこれだけは言っておこうと思ったんだ。

走って、取って返した。


「なあ・・・おまえ、葉月とダメんなっても、安心しろ。」
まりもは、はあぁ??って顔した。
心配なんだよ、お前のことが。
葉月に捨てられて、泣き顔見せるんじゃないかってな。
「俺が・・・いるからよ。おまえさ、あんな大層なやつと、マジうまくやってけっかあ?ムリあるんじゃねえ?・・・捨てられたら、俺が拾ってやるよ。」
俺・・・ひょっとして、こいつに、かなり惚れてんじゃねえの?


ところが、返ってきた返事が、これだよ。
「私、ゴミじゃないんだからね!その言い方、ムカつくよ?」
おいおい、お前・・・俺の言いてえこと、わかってんのかよ。
「突っ込むトコ、そこかよ!・・・たく、そのボケっぷり、てえしたもんだぜ。いいか?忘れんなよ・・・・俺が、いるって、こと。」

それ以上は、今は言えねえよな。
とにかく、それだけ言うと、なんだか照れくさくなって、俺は走り出した。


俺はこのとき、思ってたんだよな。
いずれそのうち、まりもと葉月が別れる時が、来るって。
そしたら、俺が、まりもを支えてやろうって。
ひょっとして・・・じゃねえよな。
俺、まりもに・・・惚れてんな。
しかも、かなり。

ながらく・・・

ながらく、放置(笑)しておりましたが、天童くん、完結させないとな・・・と思いまして、また少しずつ書いて行くつもりです。


亀更新だとは思いますが、温かく見守ってくださいますでしょうか・・・・・・。

オレの純愛物語 <7>やってやろうじゃん

「葉・・葉月・・珪!?」
俺は思わず、そうもらしていた。
まりものやつも、びっくりした顔をしている。


驚いてる俺とまりもを前に、妙に冷静な顔の、葉月 珪は、まりもの傍に近づいて、その肩を抱き寄せた。
むかつく野郎だぜ。
「俺、こいつとここで待ち合わせしてたんだ。・・・行こう、まりも。」
声までもが、無表情っつうの?淡々とそう言う。


俺はまだ呆気にとられていた。
あの人気モデルの 葉月 珪が、まりもの・・・彼氏だってぇ!?
んなこと、急に聞かされたってよぉ・・・・
「マジ・・・かよ?・・・まりも、マジなんか?」
かなり間抜けな問いをまりもにしていた。


まりもは複雑な表情をしていたが、俺の問いかけに、勢いよくぶんぶんと首を振る。
違う、違う、と。
「珪くんは、クラスメイトだよ。そんなんじゃ、ないの。珪くん、冗談にしてもタチが悪いよ。」
最後の方は、葉月 珪に向かって言った。


ほう・・・・冗談だってか?
俺は、目を細める。
こいつ・・・葉月 珪、俺たちをからかってんのかよ。
俺に対して、いい度胸じゃん。
俺は、俺に対するあいつの態度よりも、まりもに対しての態度が気に入らなかった。


立ち上がって、思いっきり、葉月 珪を睨みつけてやる。
「冗談?ってか?・・・葉月・・・珪。まりもをからかったりなんか、するんじゃねえよ。いくらおまえが人気のモデルか知らねえけどよ、人をオモチャにすんじゃねえ。」
そんな、人を弄ぶような真似が、気に入らなかったさ。
俺はいいが、まりもにそんなこと言うってぇのは、断然、気にいらねえ。


俺に睨みつけられりゃ、大概のやつは、びびる。
が、この男は、端整な表情を少しも崩さず、俺の視線をしっかりと受け止めて、この俺を睨み返してきやがった。
「冗談なんかじゃ、ない。まりもは、お前とつきあえるような人間じゃないんだ。あきらめろ。」
静かに、そう言った。
少しも激してないその声音が、かえって迫力を感じさせた。


ふん、お前なんかに言われなくったってな、この俺がよっく承知してるよ。
まりもは、俺みたいな男の相手するような、そんな女じゃないって・・・な。
けど・・けど・・まりもは、俺に夢をくれたんだ。
今の自分を、変えられるんじゃないかって・・・そんな夢を、な。
それを、お前にどうのこうの言われる筋合いじゃねえよ!


まりもが、とにかく落ち着いて、と懇願する。
店の迷惑になるようなことするな、だとさ。
ま、そうだな。
まりもの言うように、腰をおろす。
俺と葉月は睨みあったままだ。
葉月がまりもの肩を抱いたまま座るのを見たら、つい舌打ちが出た。


まりもは、肩にかけられた葉月の手を、そっと外して、葉月に向き直って言った。
「珪くん、この人が、天童くんだよ。私の・・・友達。」
まりもが・・・俺を友達だって紹介してくれた。
友達っていうのが微妙だが、こんな俺を、堂々と友達だって明言してくれるまりもが、嬉しい。
が、・・・しかし、まりも、こいつのこと名前呼びしてやんの。
彼氏じゃないが・・・かなり、親しいことは親しいみたいだな。


まりもは、続けて静かだが、凛とした声で言う。
「珪くん、今の言葉、天童くんに失礼だったと思う。あやまってください。」
葉月は、黙り込んだままだ。
まあ、葉月の気持もわからんこともねえんだよな。
クラスメイトだかなんだか知らねえが、自分とダチの女の子が、俺みてえなやつと一緒にいりゃあ、心配にもなるってもんだろう。
そういう扱いには、慣れっこになってた俺だから・・・まりものその言葉は嬉しかった。


まりもは黙り込んだ葉月に、やさしい声で、それでもこれだけは・・・といったふうに
「珪くん・・・珪くんは私の大事な・・友達だけど・・・だからといって、私が誰と友達になるかなんてことまで、珪くんに決められることじゃ・・・ないと、思う。」
そう、言った。
そっか・・・葉月は、まりもにとって大事な友達なのか。
けど、その大事な友達に、俺のことそう言ってくれる、まりもは、めっちゃカッコよく見えた。


こういう・・・相手が誰だったとしても、言うべき事は毅然として言う・・・
ガキっぽいくせして、そんなとこが、まりものすげえとこなんだろうな、そう思う。
まりもは、懸命に俺と葉月の間を取り成そうとしていた。
葉月にそう言ったかと思うと、今度は俺に対して、葉月の弁解を始めた。
「天童くん、珪くんね、たぶん、私のこと心配して、あんなふうに言ったんだと思う。だって、ほらいいにくいけど、天童くんって、ちょっと見 怖そうに見えるじゃん、だから、心配したんだよ。」


俺、笑っちまったよ。
いいにくいとか言いながら、まりも、それけっこうはっきり言ってんじゃねえ?
まあ、確かにそうだと思うぜ。
俺・・・どう見たって、不良・・・だもんな。
まりもは、言ったあとで気付いたのか、ゴメン、なんか言ってやがる。


俺は、笑い飛ばすのがいいだろうと思った。
「おまえ、すげえのな、天下の葉月 珪と、ダチなんか。」
そう言ってやった。
確かに、あの葉月 珪と友達って・・・すごくねえ?


まりもは、そんな俺に、葉月は特別なんじゃない、と力説し始めた。
俺が、怖そうに見えても、普通なように、葉月も俺と同じ普通の高校生なんだから、と。
まりもの普通の基準って、どうよ?
俺が普通だなんて、しらっと言い切るまりもって・・・勇者だよな。
葉月が普通の高校生っていうのも、なんだかなあ・・・。

けど、まりもは大真面目なんだよな。


こいつのこういうとこ・・・ヘンだ。
でも、嫌なヘンじゃねえ。
こいつは、まっすぐに、俺を見てくれた、初めての人間じゃないだろうか。
まりも・・・って、大物なんじゃねえ?



お互い、もっとちゃんと相手を見ようよ・・・そう言って、葉月に何か言いかけようとしたまりもに
「確かに、俺の口をはさむことじゃ、なかったな。」
はき捨てるように、葉月が言った、冷ややかな口調で。
俺にちらりと視線を向ける、その葉月の凍りついたような目に、さすがの俺もひやりとしたものを感じた。
目で殺せるっていうなら、確実に俺は殺されてたかも知れねえような視線。



「そうだ、俺は、こいつのただの友達だ。こいつに口出ししたりする権利もなにもない、な。」
そう言う葉月の無表情の中に、なにか苦しげなものが見えたように思ったのは、俺の気のせいだったんだろうか?
「天童、だからといって俺はあやまらない。俺にはお前がまりもにふさわしい人間と思えないから。」
そう宣言すると。葉月はまりもに「悪い」とだけ言って、店を出て行ってしまった。



「お、おいおい、いいのかよ?おまえ、葉月と約束してたんじゃねえのか?」
「いい・・・あんな珪くん、知らない。」
って言ってもなあ・・・
あの、葉月の表情・・・
葉月って、ひょっとして、まりもに惚れてんじゃねえ?
そう思わせるような何かが、確かにあったように思う。



確か、お前ら、待ち合わせしてた、って言ってたよな。
いいのかよ。
こんなことになっちまってよ。
俺のせいで、お前らがおかしくなっちまったら、俺も寝覚めが悪いじゃねえか。
まりもは、無理やりって明らかにわかる作り笑顔で、俺のせいじゃないって言った後、黙り込んでしまった。



なにか考え事してるみてえだったから、そっとしとこうと思ったんだが。
涙浮かべてるの見ちまったら、ほっとけもしねえだろ。
「おい、まりも。元気出せ。」
「元気だよ、私。」
「嘘つけ。」
空元気出そうとしてるまりもの目尻にこぼれ出してる涙を、指でそうっとぬぐってやる。



まりも・・・泣くほど、あいつのこと想ってんのかよ。
なら、なんで、俺のことなんかかまってんだよ。
ほっときゃいいじゃん、俺のことなんて、よ。
まりも、葉月のこと、好きなんだろうかな?
泣くくらいなんだから、大事に思ってることは、確かだよな。
その「好き」が、どのくらいの好きなんだかが・・・こいつの場合、読めねえ。



葉月も・・・まりものこと好きなんだろうかな。
少なくとも、大事に思ってるって事は、わかった。
こいつら、どうなってんだ?
そこんとこ、はっきりしてくれねえと、俺も対処に困るって。



どれくれえの間、二人して黙りこくってたんだろうな。
まりもも俺も、いろんなこと考えてるうちに、時間がたっちまってた。
ぼんやりしてるまりもを放っていくのもなんだと思ったが、俺は
「じゃあ、今日は、ありがとな。俺、もう帰るわ。」
そう言った。
このまま二人して、ずっとここで黙りこんでるわけにも、いかねえだろ。



まりもが、連絡先を・・・と言うのに、俺は答えなかった。
そんなことしたら、俺、こいつに甘えちまうような気がする。
自分でやれるだけやってみようと、決心してた。
こいつが、俺はやれるって、そう言ってくれたんだ。
どうしてもわからねえ時には、はば学まで行きゃあいいことだし。



俺は、本気で頑張る気になっていた。
まりもが信じてくれるんなら、やってやろうじゃないか。
まりもに、俺の本気を見てもらいてえ・・・そう思ったんだ。