オレの純愛物語 <7>やってやろうじゃん | タマのお家

オレの純愛物語 <7>やってやろうじゃん

「葉・・葉月・・珪!?」
俺は思わず、そうもらしていた。
まりものやつも、びっくりした顔をしている。


驚いてる俺とまりもを前に、妙に冷静な顔の、葉月 珪は、まりもの傍に近づいて、その肩を抱き寄せた。
むかつく野郎だぜ。
「俺、こいつとここで待ち合わせしてたんだ。・・・行こう、まりも。」
声までもが、無表情っつうの?淡々とそう言う。


俺はまだ呆気にとられていた。
あの人気モデルの 葉月 珪が、まりもの・・・彼氏だってぇ!?
んなこと、急に聞かされたってよぉ・・・・
「マジ・・・かよ?・・・まりも、マジなんか?」
かなり間抜けな問いをまりもにしていた。


まりもは複雑な表情をしていたが、俺の問いかけに、勢いよくぶんぶんと首を振る。
違う、違う、と。
「珪くんは、クラスメイトだよ。そんなんじゃ、ないの。珪くん、冗談にしてもタチが悪いよ。」
最後の方は、葉月 珪に向かって言った。


ほう・・・・冗談だってか?
俺は、目を細める。
こいつ・・・葉月 珪、俺たちをからかってんのかよ。
俺に対して、いい度胸じゃん。
俺は、俺に対するあいつの態度よりも、まりもに対しての態度が気に入らなかった。


立ち上がって、思いっきり、葉月 珪を睨みつけてやる。
「冗談?ってか?・・・葉月・・・珪。まりもをからかったりなんか、するんじゃねえよ。いくらおまえが人気のモデルか知らねえけどよ、人をオモチャにすんじゃねえ。」
そんな、人を弄ぶような真似が、気に入らなかったさ。
俺はいいが、まりもにそんなこと言うってぇのは、断然、気にいらねえ。


俺に睨みつけられりゃ、大概のやつは、びびる。
が、この男は、端整な表情を少しも崩さず、俺の視線をしっかりと受け止めて、この俺を睨み返してきやがった。
「冗談なんかじゃ、ない。まりもは、お前とつきあえるような人間じゃないんだ。あきらめろ。」
静かに、そう言った。
少しも激してないその声音が、かえって迫力を感じさせた。


ふん、お前なんかに言われなくったってな、この俺がよっく承知してるよ。
まりもは、俺みたいな男の相手するような、そんな女じゃないって・・・な。
けど・・けど・・まりもは、俺に夢をくれたんだ。
今の自分を、変えられるんじゃないかって・・・そんな夢を、な。
それを、お前にどうのこうの言われる筋合いじゃねえよ!


まりもが、とにかく落ち着いて、と懇願する。
店の迷惑になるようなことするな、だとさ。
ま、そうだな。
まりもの言うように、腰をおろす。
俺と葉月は睨みあったままだ。
葉月がまりもの肩を抱いたまま座るのを見たら、つい舌打ちが出た。


まりもは、肩にかけられた葉月の手を、そっと外して、葉月に向き直って言った。
「珪くん、この人が、天童くんだよ。私の・・・友達。」
まりもが・・・俺を友達だって紹介してくれた。
友達っていうのが微妙だが、こんな俺を、堂々と友達だって明言してくれるまりもが、嬉しい。
が、・・・しかし、まりも、こいつのこと名前呼びしてやんの。
彼氏じゃないが・・・かなり、親しいことは親しいみたいだな。


まりもは、続けて静かだが、凛とした声で言う。
「珪くん、今の言葉、天童くんに失礼だったと思う。あやまってください。」
葉月は、黙り込んだままだ。
まあ、葉月の気持もわからんこともねえんだよな。
クラスメイトだかなんだか知らねえが、自分とダチの女の子が、俺みてえなやつと一緒にいりゃあ、心配にもなるってもんだろう。
そういう扱いには、慣れっこになってた俺だから・・・まりものその言葉は嬉しかった。


まりもは黙り込んだ葉月に、やさしい声で、それでもこれだけは・・・といったふうに
「珪くん・・・珪くんは私の大事な・・友達だけど・・・だからといって、私が誰と友達になるかなんてことまで、珪くんに決められることじゃ・・・ないと、思う。」
そう、言った。
そっか・・・葉月は、まりもにとって大事な友達なのか。
けど、その大事な友達に、俺のことそう言ってくれる、まりもは、めっちゃカッコよく見えた。


こういう・・・相手が誰だったとしても、言うべき事は毅然として言う・・・
ガキっぽいくせして、そんなとこが、まりものすげえとこなんだろうな、そう思う。
まりもは、懸命に俺と葉月の間を取り成そうとしていた。
葉月にそう言ったかと思うと、今度は俺に対して、葉月の弁解を始めた。
「天童くん、珪くんね、たぶん、私のこと心配して、あんなふうに言ったんだと思う。だって、ほらいいにくいけど、天童くんって、ちょっと見 怖そうに見えるじゃん、だから、心配したんだよ。」


俺、笑っちまったよ。
いいにくいとか言いながら、まりも、それけっこうはっきり言ってんじゃねえ?
まあ、確かにそうだと思うぜ。
俺・・・どう見たって、不良・・・だもんな。
まりもは、言ったあとで気付いたのか、ゴメン、なんか言ってやがる。


俺は、笑い飛ばすのがいいだろうと思った。
「おまえ、すげえのな、天下の葉月 珪と、ダチなんか。」
そう言ってやった。
確かに、あの葉月 珪と友達って・・・すごくねえ?


まりもは、そんな俺に、葉月は特別なんじゃない、と力説し始めた。
俺が、怖そうに見えても、普通なように、葉月も俺と同じ普通の高校生なんだから、と。
まりもの普通の基準って、どうよ?
俺が普通だなんて、しらっと言い切るまりもって・・・勇者だよな。
葉月が普通の高校生っていうのも、なんだかなあ・・・。

けど、まりもは大真面目なんだよな。


こいつのこういうとこ・・・ヘンだ。
でも、嫌なヘンじゃねえ。
こいつは、まっすぐに、俺を見てくれた、初めての人間じゃないだろうか。
まりも・・・って、大物なんじゃねえ?



お互い、もっとちゃんと相手を見ようよ・・・そう言って、葉月に何か言いかけようとしたまりもに
「確かに、俺の口をはさむことじゃ、なかったな。」
はき捨てるように、葉月が言った、冷ややかな口調で。
俺にちらりと視線を向ける、その葉月の凍りついたような目に、さすがの俺もひやりとしたものを感じた。
目で殺せるっていうなら、確実に俺は殺されてたかも知れねえような視線。



「そうだ、俺は、こいつのただの友達だ。こいつに口出ししたりする権利もなにもない、な。」
そう言う葉月の無表情の中に、なにか苦しげなものが見えたように思ったのは、俺の気のせいだったんだろうか?
「天童、だからといって俺はあやまらない。俺にはお前がまりもにふさわしい人間と思えないから。」
そう宣言すると。葉月はまりもに「悪い」とだけ言って、店を出て行ってしまった。



「お、おいおい、いいのかよ?おまえ、葉月と約束してたんじゃねえのか?」
「いい・・・あんな珪くん、知らない。」
って言ってもなあ・・・
あの、葉月の表情・・・
葉月って、ひょっとして、まりもに惚れてんじゃねえ?
そう思わせるような何かが、確かにあったように思う。



確か、お前ら、待ち合わせしてた、って言ってたよな。
いいのかよ。
こんなことになっちまってよ。
俺のせいで、お前らがおかしくなっちまったら、俺も寝覚めが悪いじゃねえか。
まりもは、無理やりって明らかにわかる作り笑顔で、俺のせいじゃないって言った後、黙り込んでしまった。



なにか考え事してるみてえだったから、そっとしとこうと思ったんだが。
涙浮かべてるの見ちまったら、ほっとけもしねえだろ。
「おい、まりも。元気出せ。」
「元気だよ、私。」
「嘘つけ。」
空元気出そうとしてるまりもの目尻にこぼれ出してる涙を、指でそうっとぬぐってやる。



まりも・・・泣くほど、あいつのこと想ってんのかよ。
なら、なんで、俺のことなんかかまってんだよ。
ほっときゃいいじゃん、俺のことなんて、よ。
まりも、葉月のこと、好きなんだろうかな?
泣くくらいなんだから、大事に思ってることは、確かだよな。
その「好き」が、どのくらいの好きなんだかが・・・こいつの場合、読めねえ。



葉月も・・・まりものこと好きなんだろうかな。
少なくとも、大事に思ってるって事は、わかった。
こいつら、どうなってんだ?
そこんとこ、はっきりしてくれねえと、俺も対処に困るって。



どれくれえの間、二人して黙りこくってたんだろうな。
まりもも俺も、いろんなこと考えてるうちに、時間がたっちまってた。
ぼんやりしてるまりもを放っていくのもなんだと思ったが、俺は
「じゃあ、今日は、ありがとな。俺、もう帰るわ。」
そう言った。
このまま二人して、ずっとここで黙りこんでるわけにも、いかねえだろ。



まりもが、連絡先を・・・と言うのに、俺は答えなかった。
そんなことしたら、俺、こいつに甘えちまうような気がする。
自分でやれるだけやってみようと、決心してた。
こいつが、俺はやれるって、そう言ってくれたんだ。
どうしてもわからねえ時には、はば学まで行きゃあいいことだし。



俺は、本気で頑張る気になっていた。
まりもが信じてくれるんなら、やってやろうじゃないか。
まりもに、俺の本気を見てもらいてえ・・・そう思ったんだ。