「戦後経済史は嘘ばかり」の第五章から。
第五章はバブル時代についてである。高橋氏はこの時期まさにその問題対応のための行政をおこなっていた人物である。そのため正確な当時の状況が書かれており、バブル時代を知るための資料的にも価値があるだろう。この書籍の中で最も価値の高い部分だと思われる。バブルに関しては新・日本経済入門から知識を得て以前私も考察しているが、バブル時代何がおこなわれていたか、より正確に理解できた。
もっとも残念なところもある。高橋氏が予想していたよりも株価が下がった原因に関しては、高橋氏は答えを出せていない。
まずバブル時代の基礎的知識を並べてみよう。この書籍に書いてあることだが、否定しようのない事実だと思われる。
プラザ合意に対応するための低金利がバブルの原因と言われているが正しくない。
『バブル期は、株と土地』の価格が上がっただけで、一般物価はあまり上がっていない。(失業率はかなり低く、株と土地以外は健全)
バブル崩壊期、日銀は、一般物価の上昇と間違えて金融引き締めをおこなったために、景気を悪化させた。
株や土地が銀行の融資によって購入された。利回り保証や損失補填の約束があるファンドを企業などが買い漁った。
バブル潰しの金融引締めは、景気を悪化させるだけの間違った政策であり、しかも間違いを認めない日銀によって継続され長い不況の原因となった。
それでは、考察を述べていこう。
高橋氏は価格の上昇を回転率が上がったためとしているが、取引にともなう価格の上昇は一定ではない。貨幣数量説、フィッシャーの交換方程式から考えているためにそのような記述になったということだろう。回転率があらわす通り、盛んな株や不動産の売買があったことは確かであるが、銀行から借り入れて株や土地を買うという行為がそれらの上昇の本質であるということを押さえておけばいいだろう。
経済全体を俯瞰できないと、借りるためのお金が足りなくなるなどと勘違いしてしまうかもしれない。しかしそれは完全な間違いである。売った人間はまたそれを銀行に預けるので(お金がさらに移動しても最終的に誰かが預ける)、銀行の預金が枯渇することはない。逆に、この借りる行為によってどんどん増えていくのだ。これが所謂信用創造というものであり、誰かの借り入れによって増えるという貨幣の本質を示す話でもある。
さて、土地はそれを利用するために本来は購入するものである。例えば農産物を生産するために銀座で土地を買うなどというバカげた話はないだろう。すなわち土地の転売目的の購入、もしくはその要素を多分に持った購入は、現実の経済による裏付けのない虚像であるということになる。
株の場合は値上がり目的の購入もありということになっているが、企業の価値が価格のもとになるべきであるということに違いはない。もともと虚像である傾向が土地より強いということである。
(蛇足だが、近年のビットコインに関しても、どうか考えてみればいいだろう)
バブルというのは、この虚像が実体とかけ離れて大きくなった部分のことと定義すれば、一番すっきり理解できると思う。バブルは弾けるまではそれがバブルかどうか分からないという考えがあるが、バブルの定義を弾けて経済的混乱をきたすものという感じで捉えているからだろう。それは多くの場合予想も対処もできなかった言い訳だ。確かにどのくらいで弾けるかはなかなか分からないだろうし、弾ける時期を特定することもできない。実体が虚像に追いついてバブルでなくなることもありうるだろう。しかしバブルがバブルであることや、その状態、どの程度の危険度なのかは分からないことではない。この頃発生したように、制度などのなんらかの問題があって生じることなので、前もって防ぐのは確かに困難であろうが、起きたバブルを把握できないわけでも対応できないわけではないのである。
日本のバブル崩壊を見て経済政策の参考にしたバーナンキ議長も、同じような理解に至っていると思われる。高橋氏も同様の結論に行き着いている。