常識を疑え | 秋山のブログ

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選挙一色で、適当な経済ニュースが見つからなかったので、日経ビジネスから。

上野泰也氏の「若い世代に「常識」が通じなくなった?」という記事について。

 

消費増税分を財政再建ではなくて、その使い道を拡大することに対して、世論調査の結果賛成が多かったことに対して、正しくない判断をしていて不可思議であるといった視点から、その理由を考察するといった内容である。

 

いろいろ書いてあるが、その結論は、

若い世代は常識が通じない←若い世代は常識的である新聞テレビよりSNS等から情報を得ている。

疑ってみるという発想が欠如しているので、現政権の政策に疑いをもたない。

といったところだろう。

 

上野氏が国家の財政に関して持っている考えは、

『全額返済できるかどうか自信が持てないほど多額の借金の残高をすでに抱えており、金利が上昇すればまさに「アウト」という状況の中で、仮にまとまった収入があるようなら、できるだけ元本を消しにいく』べきだということである。『住宅ローンを抱えている人なら理解できる』などと書いていることから、確実に国家の財政を、家計のそれに置き換えて考えていることが分かる。

財政再建が重要であるという話には、国や経済の仕組みを知らなければ、人はとりあえず家計や企業と比べて考えるであろうから、そのように間違えるのはいたしかたないところがある。それゆえに常識とも言える程、世の中には間違えている人が多い。

家計はどのような状況なら破綻するのか、企業はどうなのか、国の場合はどうなのか、きちんと調べてみれば、自国通貨建ての債券がどれだけ増えようとも通貨発行権のある国(EUにはこれがない)においては全く関係ないことが分かるだろう。ところがこの後、人の反応は2つに分かれる。一つは素直に国と家計等の違いを理解して、財政再建に意味がないことを理解するというもの。もう一つは、間違えたことを認めたくないために、財政再建が重要である理由を探すというものだ。様々な可能性を探ること自体は重要なことであるが、後者は間違っていることでも正当化したいという非科学的な動機で行動するタイプの人間であるから、正解にたどり着くのは難しいだろう。

 

若い世代が新聞やテレビを信じなくなった理由は、マスコミが流す情報に、しばしば嘘やプロパガンダがあることに気付いたからである。それを暴いたのも、ネットの情報である。ネットの情報はフェイクニュースもしばしばあり、不正確な思い込みも少なくないが、その一方間違いを正そうという意識で参加している人間もいるので、マスコミの情報よりも良質の情報が見つかることもある。フェイクニュースの存在はむしろ、情報を吟味する必要性、一度は疑ってみる姿勢を強め、そのための能力も高めるだろう。真偽の確認のためのエビデンスやソースも重要視するようになる。それは当然、マスコミを盲信するのよりも望ましい変化である。

 

結局、この話のオチは、上野氏こそ疑ってかかるという姿勢が足りないために、間違ったことを常識だと思い込んでいたということである。

なお、上野氏が間違った常識を正しいものだと思い込んでいるのは、財政再建の話だけではない。株価が『わかりやすい景気のインディケーター』だというのも間違った常識である(データで分かる)。なかなか筋金入りだと思われる。

 

経済の話は、自分の利益に誘導したい人間によるプロパガンダに満ちている。常識を疑い、エビデンスを重視する姿勢が重要であろう。