原因と結果の経済学 | 秋山のブログ

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今回はこの本を紹介したい。

 

この本の表題からは、経済学から世の中を啓蒙するかのような話だが、むしろ経済学を正すために役に立つ本である。

 

比較的経済学を勉強していると思われる人でも、「Aを変化させたら、系統的にBが変化した」ことをもって、因果関係があるなどとしているのを見たこともある。

そのようなデータを見たからといって、因果関係にあるとは限らないことを、この本は丁寧に説明している。

チェックすべき点は、三つ。

○全くの偶然ではないか

○交絡因子はないか(A→Bではなくて、実はC→A、C→Bであるということ)

○因果関係が逆ではないか

という点である。

 

そして因果関係があるかどうかを確認する方法について書いてある。

ランダム化比較試験、自然実験、擬似実験(差の差分析、操作変数法、回帰不連続デザイン、マッチング法)、回帰分析について順に説明されている。

 

そして補論で因果推論の5つのステップを纏めている。これも参考になる。

『1 「原因」は何か』

『2 「結果」は何か』

『3 3つのチェックポイントを確認しよう』

『4 反事実を作り出そう』

『5 比較可能になるよう調整しよう』

である。

 

この本によれば因果推論は比較的新しい学問だ。経済学・統計学からの発達と、疫学からの発達、別々の系統で発達していったようである。どちらも1990年代からきちんとした体系となったらしい。ただ違うのは、後者の系列である医学において、完全に常識化した因果推論が、経済学ではその専門家以外での受け入れが悪いことである。マクロ経済学者が因果推論を理解していれば、例えばフィリップス曲線の理解など、新古典派が明らかに間違えていることが分かるはずである。

 

経済学の様々なモデルは、現実のデータによって検証されなくてはいけないだろう。そして検証の方法を考える上で、因果推論を理解するのは基礎として必要であると考える。