内生的貨幣理論の再構築 | 秋山のブログ

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ゴールデンウィークの頃から、内藤敦之氏の「内生的貨幣供給理論の再構築」という書籍を何度も読んでいる。

 

 

ゴールデンウィーク前に何冊もの書籍をアマゾンでいろいろ注文したが、そのうちの一冊である。この書籍を選んだ理由を述べれば、貨幣に関する無理解や誤解が新古典派の問題点であり、貨幣の正しい理解を経済学の中心に据えることが必要との考えなので、参考になると考えたからだ。(雨龍氏に以前ご紹介いただいていたことは、コメントで指摘されて思い出した)

 

この書籍は、筆者の博士論文を元に加筆修正したものであるとのことである。指導者が経済学史、経済学説史を専門とするということがあってか、関連する経済学者の論文を読み、比較検討することによって作られている。筆者が自負するように、なかなか大変な量の作業をこなしており、価値のある論文であると思う。

 

過去の経済学者のあまり馴染みのない様々な業績にまで触れているために、なるほどと思えるような考えも多々あり、勉強になった。ただ残念なことにとても分かりやすいとは言い難い。経済学部生であればスラスラと、素人であっても苦労すれば読めるくらいにするべきだろう。時間をかけ素晴らしい作業をしているのだから、分かりにくいのはたいへん勿体無い。

分かりにくい原因は、馴染みのない様々な説が次々出てくることだ。それらに関して後で説明されているが、その時点ではぐぐっても分からないような単語ばかりなので、分からないまま進まなくてはいけなかったり、戻って読まなくてはいけなくなっている。であるから、ここではまず重要な語句の説明を簡単にしようと思う。

 

内生的貨幣供給:経済システムの内部で経済活動によって貨幣が生み出されるといった意味であると思われる(利子率などの他の要素によって影響される。独立した要素ではないといった意味も含む)。これに対して、金鉱の掘り出しや貨幣の代わりになるような商品の生産によって貨幣が増えていくような考え、政府、中央銀行からの恣意的なベースマネーの供給によって供給量が決まるというマネタリストの考えを外生的としている(ただし後者の恣意的な供給も実際に存在するのでP7『貨幣供給が内生か,あるいは外生かは必ずしも,最も重要な論点ではない』)

 

ポスト・ケインジアン:ケインジアンのWiki参照。『アメリカンケインジアンに特徴づけられる新古典派経済学の理論』『の前提に疑問を持ち、現実の』『構造を理論化し現実の経済の不均衡のメカニズムに迫ろうとする』人々。P48『近年,内生的貨幣供給論を中心とした理論を提示している』。

 

サーキュレイショニスト:仏伊において貨幣的循環を重視したマクロ経済学を展開しているグループ。この貨幣的循環というのは、景気の循環のことではなく、P5『信用から貨幣が生じ』、最終的に『貨幣が銀行へ還流し消滅する』という私が今まで書いてきた話と一致した考えであるようだ。

 

ホリゾンタリスト:P153『常に貨幣ストックが需要によって決定され』ると考え、P150『外生的な利子率と水平の貨幣供給曲線を主張』する内生的貨幣供給論の一派。P49『中央銀行の順応的な貨幣供給を強調する』。マネタリズムに対抗する。

 

ストラクチュラリスト:P49『金融市場の役割を重視する』立場である。ホリゾンタリストが主張するような中央銀行の順応的な貨幣供給はP180『商業銀行が不十分な準備しか保有していない』場合のものであり、『必要な準備はある程度は』創造されるという立場である。貨幣供給曲線は右上がり(構造的内生性による)とし、利子率においてP182『流動選好を重視』する。

 

名目主義:貨幣自体に価値は内在せず、貨幣は名目的存在であるという考え。

 

表券主義:P36『貨幣は特に国家の創造物であるという学説』。なお新表券主義においては、P36『税の支払いにおいて受領』されることを重要視している。

 

金融不安定性仮説:ミンスキーが唱えた「経済の不安定性は複雑な市場経済が生来的に備えている欠陥である」という理論。内生的貨幣供給を前提としている。

 

流動性選好、マネタリスト、景気循環貨幣の定義に関しては以前書いたもで省略。

上記をパラっと理解してから読めば、ある程度スラスラ読めると思う。