コンビニエンスストアの労働者不足 | 秋山のブログ

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NHKのニュースを見ていたら求人倍率がバブル期を超えたというニュースをやっていた(人手不足の例としてコンビニが取り上げられていた)。単純な人は求人倍率がそのまま労働者不足だとか、売り手市場だとか考えてしまうかもしれない。バブルの頃以上に労働者によい状況だと考えてしまうかもしれない。しかしそれは間違いである。(求人倍率の問題に関する解説はWikiが完璧だ)

 

同じものと同じ数だけ売るとしても、それに要する人手はいくらでも増やしうる。例えば9時から5時の販売を24時間年中無休にすれば4倍以上の人数が必要になるだろう。他にも商品のディスプレに凝ったり、呼び込みをおこなうなど付加価値を高める方法はいくらでもある。もし多く雇ってコストが上がらなければ競争に勝ち、ライバルのシェアを奪うことができる。

以前それが出来なかったのは、安く働く労働力がなかったからだ。多くの女性は、数年正社員として働いた後退職し、専業主婦として夫の稼ぎだけで十分暮らしていけた。夫の稼ぎだけで子供の養育費もなんとかなった。コンビニの労働力が提供されたのは、夫の稼ぎが減って、働かざるをえない妻、学生が増えたからだ。一見下がっていないように見えるかもしれないが、年功序列で上がっていた賃金の上昇が抑えられていることは、トータルで見れば低下と同じだ。企業の従業員に対する福祉の縮小も、法人税を財源としていた国民に対する給付の低下も、賃金カットと同じ意味を持つ。消費税だってそうだろう。とにかく一人の収入では家族はまともに暮らせなくなり(デフレというが生活費はむしろ上がっている)、安く買い叩かれても主婦等は働きに行かざるを得なくなった。主婦を労働力とする必要が出たのは、少子高齢化が原因などではない。労働人口の減少率がどのくらいの率だか調べてみれば分かるだろう。

 

コンビニは便利であり、消費者にとってはありがたい面がある。そのため既存の商店ではなかなか太刀打ち出来ない。進出すれば切り替わらざるを得ないであろう。しかし、既に述べたように販売量あたりの必要人数という意味での効率は悪い。どんどんコンビニに切り替わっていけば、労働者が足りなくなるのは当然のことだ。まして低い賃金であれば、他の職を辞して、コンビニに勤めようなどとは誰も思わないであろう。調子に乗ってどんどん店舗を増やせば、当初は前述の愚かな理由で増えた労働力で賄えたかもしれないが、足りなくなるのは当然のことである。

 

コンビニに限らず労働者の賃金の安さによって競争しようとする企業は、マクロの視点からみれば結局経済の効率を悪化させる。あたかもワークシャアリングのように働いて、働く意思のある余剰人員を吸収するが、初めに安い賃金ありきなので、労働者全体の賃金を押し上げる効果はほとんどないだろう。さらには、供給が追いつかないところに参入するわけではなくて、既存の供給者からシェアを奪おうとして進出するのであるから総消費を増やすわけではなく、生産性の向上、国民の厚生増大にはあまり役立たない。元来、生産性の向上、経済成長というのは、「生産能力の向上→生産性の向上(多く生産した分収入が増加)→分野ごとに需要には限度がある余剰人員が発生→余剰人員が増収によって生まれた新たな需要の産業へ」といった形である。整理して考えれば、最近の求人との違いが分かるはずだ。求人倍率が高くても、失業率が低くても、現在足りないのは需要である。