円の実力について その1 | 秋山のブログ

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「新・日本経済入門」の円の為替レートに関する章は、リーマン・ショックの話で始まる。リーマン・ショックの経緯に関しての記述は秀逸である。

 

リーマン・ショックの二〇〇八年から一二年まで、異常な円高であった。同時に鉱工業生産が大きく落ち込むなど、日本は長期に渡る大崩落と言える状況に陥っている。

 

まず、リーマン・ショックによって、アメリカにおいて『ローンというバルブ』が閉まり、一気に需要が縮小した。これによって日本の輸出は激減している。

 

リーマン・ショックに対して、『アメリカ政府は七〇〇〇億ドルの公的資金を投入して不良債権を買い取った』。銀行救済である。同時に金融政策としてマネタリーベースを増やした。

ユーロ圏も、中国までも、同じように景気対策をおこなった。しかし、日銀は動かなかったという。

サブプライムローン絡みの債券を日本の銀行があまり持っていなかったこともあるかもしれない。しかし、他国が金融緩和をおこなう、即ち金利を引き下げる政策をおこなっているところで、自分だけ下げなければ、通貨高になるに決まっているだろう。輸出も当然減ることになる。一方、通貨高はインフレを抑制する、すなわちデフレになる方向に力が働くことから、1997年に改悪された(誰が主導したか興味があるところである)日銀法で目的とされた物価の安定(実質的にはインフレの抑制)によいと考えたのかもしれない。

 

さてこうしてみると、輸出の促進こそ経済にとって重要なことのように思えるかもしれない。もちろん輸出用により多く生産した分、GDPにも反映される。しかしどうだろう。輸出量の増減によって生活状況の浮沈を実感できる国民が、輸出企業の人間ならともかくどれだけいるだろうか。バブルが崩壊して以降、経済の構造は好ましくない形に変化し、内需に関して経済のよい循環は阻害され何十年も悪い状況にある。企業が負債を負うのでなく、内部留保をため、一方政府は国民の生活に対する扶助を切り詰めている。収入は減少傾向にあるのに、生活に必要なお金は増大という状況であり、最悪の不況がずっと継続しているのだ。輸出企業の労働者の収入増は、国の経済全体にもちろんよい影響も与えるが、内需の悪い循環を解消するほどの効果は無理だろう。リーマン・ショックは、確かにGDP等に大打撃を与えたが、実際は同じくらいの悪い状況が継続していると考えるべきだと思う。