貿易について その2 | 秋山のブログ

秋山のブログ

ブログの説明を入力します。

「新・日本経済入門」の貿易の章の新興国に関して、通貨危機の話も出てきた。高い成長経路に乗っていたアジア経済が、1997年ヘッジファンドの謀略によって変調をきたした出来事だが、これについて考察してみよう。

 

何がおこなわれたかといえば、ヘッジファンドが通貨の空売りをおこなった。例えばバーツを借りて、それでドルを買うというものだ。買い支えられずに下がったところで安く返済し、儲けを得るということである。

現地の通貨の下落が見えれば、投資していた外資は融資を回収し、新規の融資は当分おこなわなくなるだろう。外貨建ての債権に関して返済にこまり、破綻する企業も出るだろう。経済は混乱する。

経済の行き詰まりに対して、多くの国がIMFに支援を求めた。そして、成長をより鈍化させ、国の在り方すら変えてしまった国もある。例外として、マレーシアが資本取引規制によって国を守った。

 

先ずヘッジファンドの行動であるが、彼らの行動は経済に対する良い影響は何もない。彼らの有用性を語る詭弁は実に幼稚なものだ。システムが維持されるために仕方ないものでもない。

道義的にももちろん問題がある。彼らのおこなったことは価格操作に他ならない。株で許されないことが、為替なら許される理由はないだろう。

 

投機的な理由で金を貸した金融機関も責められるべきであろう。融資は実業で必要な場合に対してのみおこなわれるべきである。ゼロサムゲームにお金を供給しても、人々の生活を豊かにする可能性はない。

一方、貨幣が海外に流出しても、終戦直後の日本がおこなったように、中央銀行から貨幣が供給されれば問題はない。技術は既に新興国に流入しているのである。貨幣が流出しても、技術が失われるわけではないのだ(企業を国が接収したら、技術が失われた例もあるので、注意する必要はある)。

 

IMFコンディショナリティは、不況にするための政策そのものである。インフレを抑えるために金利を上げることほど馬鹿げたことはない。これがいかに問題かは内外の歴史が証明しているのに、一向に修正される様子がない。マレーシア以外の国の経済の失速は、通貨危機そのものよりも、IMFの介入によるものの方が大きいだろう。

 

マレーシアは、資本の自由な移動が重要でないことを証明する形となった。マレーシアに対する投資家の脅しは全く実現することはなかった。

 

以前、検討したことだが、この通貨危機は日本経済への明確な悪影響は認められない。もともと貿易に占める割合が高くない上に、貿易全体では日本は黒字を増やしている。貿易の依存率がそれほど高くないことからも、日本の景気の悪化は、消費税による内需の減少とほぼ断定できるだろう。

経済政策の目的は、国民の厚生を増大させることである。成長、またはGDPの増大が求められるのは、それとある程度の相関があるからであるが、例えば内需を犠牲にして、貿易でGDPを上げるようなことだってありえるわけで、それは全く間違った方針だ。貿易はあくまでも国民の厚生のためでなくてはならない。商品が安くなるからよい程度の浅い考えならば、経済を研究していることにはならないだろう。