《ローマ字》そのまま英語になる日本語 | チビタコのブログ

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 書こうと思うテーマの中で,英語やローマ字についての解説は比較的記事にしやすいので,ついつい公開中のテーマに偏りが出てしまいます。そのせいか,アクセス解析での検索ワードも,ローマ字が比較的多いようです。はい,今回もテーマはローマ字です。

 今日の小学6年生の英語の授業では,テキストに日本語がいくつか出てきました。ローマ字でそのまま英単語になる,natto(納豆)やtempura(天ぷら)の類のものです。もちろん,たまたま連続して出てきただけでしょうが。せっかくなので,今回は英語のテキストにも堂々と出てくる日本語についてまとめてみようと思います。これらの言葉は,もうそのまま日本語で言っても通じます。


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英語化した日本語

(※)「これはまだ定着まではしていないだろう」と個人的に判断したものは,斜体にしておきます。

■飲食物■

 sukiyaki(すきやき)  teriyaki(照り焼き)  miso(味噌)  sake(酒)

 sushi(すし)

 tempura(天ぷら)

 tofu(豆腐)〔とうふ→とーふ→とふ〕

 natto(納豆)〔なっとう→なっとー→なっと〕

 ramen(ラーメン)〔らーめん→らめん〕

 dashi(出汁)

 kombu(昆布)

 matcha(抹茶)

 bento(弁当)〔べんとう→べんとー→べんと〕

 kimpira(きんぴら)

 daikon(大根)

■スポーツ■

 karate(空手)

 kendo(剣道)〔けんどう→けんどー→けんど〕

 judo(柔道)〔じゅうどう→じゅーどー→じゅど〕

 sumo(相撲)〔すもう→すもー→すも〕

■文化■

 kimono(着物)  samurai(侍)

 kokeshi(こけし)

 ninja(忍者)

■娯楽・趣味■

 karaoke(カラオケ)  manga(マンガ)  otaku(オタク,ヲタク)

 ikebana(生け花)  bonsai(盆栽)  haiku(俳句)  waka(和歌)  origami(折り紙)

 sudoku(数独)〔すうどく→すーどく→すどく〕

 kawaii(かわいい)〔かわいい(×→かわいー→かわい)〕

■生活■

 koban(交番)〔こうばん→こーばん→こばん〕

 hikikomori(ひきこもり)

 karoshi(過労死)〔かろうし→かろーし→かろし〕

 shiatsu(指圧)

 zangyo(残業)

 hancho(班長)

■自然■

 tsunami(津波)


表記上の留意点

・教科書や問題集,入学試験などの印刷された文中では普通,斜体イタリック体で表記されている

 「これはローマ字ですよ!」と分かりやすくしてくれてあるだけ

・解答や英作文の際に,ローマ字をあえて斜体イタリック体で書く必要はない!


ヘボン式のルール」については,こちらでざっと解説しています。


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 子供時分に何かそういう街頭インタビューでも見たのでしょう。外国人の旅行者に知っている日本語を尋ねると,十中八九「すし・天ぷら・侍」が返ってくるという印象があります。多かれ少なかれ,おそらく日本人の多くが似たようなステレオタイプを抱いているのではないでしょうか。ところが,大人となった今,様々な観点から世界に広がりだした日本文化に改めて目を向けてみると,時代は変わったように思います。というのも,私たちの文化は今日,思っている以上に世界へ進出しているからです。


 和食。日本の食文化は,長年にわたり海外から注目を浴びてきました。その最大のキーワードが“ヘルシー”です。欧米のメインディッシュに挙げられるような料理は油っこいものが多いので,日本料理が彼らの目に“ヘルシー”だと映るのは当然のことでしょう。

 しかし,近年は単に“ヘルシー”であるということだけでなく,その繊細な彩りや味付け,食材への愛着といったこともまた評価の対象になっているようです。いわゆる“視覚でも楽しめる料理”です。料亭や旅館で出される料理がその最たる例でしょうが,ここ数年海外で爆発的に人気が出てきたのがお弁当です。特に「キャラ弁」は世界中から注目されています。あれは子供に限らず大人でさえも嬉しいですからね。文字通りの“視覚でも楽しめる料理”です。そういうところが評価につながっているのでしょうが,おかげで,今や弁当はbentoとして世界中に知れ渡ることになりました。

 数ある日本料理の中でも,世界中で食べられ,また外国人にも人気が高いものはやはり,すしでしょう。アメリカへ旅行・留学したときに行ったスーパーで,あたかもそこが日本であるかのような,本場さながらのすし売り場を見つけたときには,ちょっとした感動を覚えました。すしはもう,その域にまで浸透・定着してきたようです。

 そして,同じ店で何より驚いたのが,ハウス食品のカレールウや日清食品のカップヌードルが,その店の中で堂々と市民権を得ていたことです。思わず棚を二度見してしまうほど,自然な装いで陳列されていました。パッケージも日本のものとほぼ同じ。成分などが英語で書かれているだけで,作り方は日本語と英語の両方で書かれていました。よもやアメリカで遭遇するとは思いませんでしたね。しかも,ラーメンがnoodle(ヌードル)ではなくramenとして知られていたことにも驚きです。日本人の感覚では,ラーメンは中華というイメージが強いですが,アメリカの人には和食として受け取られているようでした。もちろん,カレーもインド料理というより,むしろ日本食という位置づけでした。


 日本発祥のものを考えるとき,スポーツに目を向ける人は少なくないでしょう。

 中でも柔道は,オリンピックの正式種目であり,世界中で取り組まれていますメジャーなスポーツです。競技人口も相当多く,英語でもそのままjudoで通じるほどです。「一本」などの柔道用語はもちろん日本語のままipponで通じます。同じく「引き分け」も,ロシアのプーチン首相が2012年,北方領土問題に関してhikiwakeと発言したことがまだ記憶に新しいでしょう。

 同様に日本の国技である相撲も,sumoで通じるほど海外での知名度は高いです。実際に力士を見ても,外国人力士は少なくありません。ここ数年は,白鵬や日馬富士などモンゴル勢が多い印象もありますが(現に歴代1位),実はアメリカ出身者もそれに次いで2番目の人数です。一世を風靡した小錦も曙も武蔵丸も,みんなアメリカ(ハワイ州)の出身です。外国人にとっては,まげや着物といった力士の風貌も,ある種samuraiに通じるものがあるようで,その点で日本らしさの象徴のようにも感じられるようです。


 そうした日本文化の“メインどころ”だけでなく,近年特に若い世代を中心に爆発的に浸透しているのが,マンガやアニメといった日本のサブカルチャーです。外国のそれらは,いわゆる子供向けという意味合いが強く,日本で放送されている海外アニメを見ても,何か物足りません。物語の展開や登場人物の人間性などが考え抜かれている日本のものと比べて,明らかに“軽い”感じがします。日本のアニメが好きな外国人いわく,登場人物がスーパーヒーローであることが多いアメコミ(『スーパーマン』や『スパイダーマン』など)と違い,主人公が必ずしも特別な存在ではない点や,自分を投影しやすいキャラクターが多く登場する点なども,人気の秘訣だそうです。

 我々日本人が海外の映画やドラマなどを見て,舞台となった地や主演俳優が映像の中で口にした食べ物を食べてみたいと思うように,日本のアニメやマンガを見て同じことを思う外国人も多いようです。もっとも,映像作品と違い2次元作品は舞台も架空であることが多いですが,食べ物はほぼ現実にあるものです。海外でramenが広まったのも,外国でも人気がある『NARUTO』の影響ではないかと思っています。日本の作品は,主要な登場人物がある特定の食べ物ばかりを食べていることが多く,この主人公ナルトにとってのラーメンは,チビ太にとってのおでんであり,ドラえもんにとってのどら焼きであり,コロ助にとってのコロッケであり,タルるートにとってのたこ焼きなのです。日本アニメの波がもっと早く来ていたら,これら日本でしか食べられないものが,海外の読者の間で注目されていたことでしょう。ナルトとともに定着したramen。場合によっては,小池さんの手柄になっていたかもしれませんね(笑)。


 ところで,マンガは主要なセリフこそ翻訳されていますが,吹き出し外の擬声語は背景の一部としてそのままコマの中に残されていることも多く,そうしたところから日本語にも興味を持つ読者がいるようです。日本人がいびきをzzzで表す,ちょうどその逆の現象ですね。中には,日本語で日本のマンガを読みたくて,日本語を学び始める日本マンガファンもいるそうです。

 海外のカラオケは日本のそれとは異なり,各個室のカラオケボックス形式ではなくカラオケバーであることが多いわけですが,最近は個室の店もあると聞きます。国によっては,日本の機種の型落ちがそのまま使われているところもあるようで,そのような店ではもっぱらアニソンが日本語の歌詞のまま歌われています。日本人が洋楽をそのまま英語で歌うのに似ています。

 このように,サブカルチャーの広がりは,単にそれだけの範疇の中にとどまらず,食文化や言語といった“メインどころ”に対する関心にまで影響を与えています。だからこそ,「マンガ」はcomics(コミックス)ではなくmanga,「オタク」もnerd(ナード)ではなくotakuという語が,外来語として定着しているのでしょう。マンガやアニメはこれまで軽視されがちだった分,実に興味深い現象です。


 一方,一般にサブカルチャーと対比して扱われるハイカルチャーですが,こちらも負けてはいません。

 日本人にとっては,まさに波平の趣味がそうであるように,おじいちゃんの娯楽というイメージが強い盆栽。しかし,これもまた外国では特に若者を中心にじわじわ人気が出てきているようです。国によっては専門誌や大学・美術館までありますし,インテリアやアートとしてのbonsaiはもはやおじいちゃんの独占品ではありません。あまり知られていませんが,盆栽は今や世界大会までもが行われており,修行のために来日する外国人までいます。鉢は小さくても,その舞台はワールドワイドなのです。

 日本語でも名句を作り出すのが難しい俳句も,海外ではhaikuとして詠まれています。俳句には五・七・五の韻律があり,季語があり,切れがありますが,実はこのhaikuでも,3行17音節であることや,season word(季語),そしてcut(切れ)を取り入れることが通則とされています(実際にはそうでない作品も少なくありません)。英語で俳句を詠むなんてなかなか想像がつきませんが,20世紀後半(終戦後)に英語圏へ紹介されて以来,今もなお世界各国へ広まり続けています。10年ほど前に流行っていたアメリカのドラマシリーズでも,大学で主人公が文学の教授と俳句について触れるシーンがあったほどです。


 意外なところでは,お巡りさんが駐在する交番も日本発祥です。

 外国の警察は,どうも権力を振りかざして力で犯罪を抑え込むというイメージが強いらしく,地域住民に恐れられているという地域もあるようです。一方で,日本のお巡りさんは,むしろ住民と連携を取りながら地域を安全にしていくということから,その評価が非常に高いのです。地域に根差している日本の交番。世界では,犯罪の多い地域に交番を建てたところ,犯罪が劇的に減少したというところもあるようです。

 海外のkobanは,例えばアメリカだとニューヨークやハワイ,治安がわると言われるブラジルや,発展途上国のインドネシアや東ティモールなどにも置かれています。交番制度がもっと注目されていくと,世界中に日本発のkobanがますます増えそうです。


 しかしながら,世界に広がる日本語は,いい言葉だけではありません。「過労死」といった,ある意味で日本人気質によるような言葉も定着してしまいました。海外では,仕事詰めという状態自体がそもそもありえないことです。もちろん,仕事に対して熱心な人はたくさんいますが,それはあくまでhard workerの次元であり,いわゆるworkaholicである人はほとんどいません。残業が日常的な日本とは大きく違うわけです(それがいいか悪いかはまた別ですよ)。そういう意味で,海外ではまず起きない「過労死」だからこそ,英語ではdeath from overworkではなく,そのままkaroshiで伝っています。

 ニートと同じく問題になっている「引きこもり」も然り。隣国の韓国では,実に20~30万人はいると推計されています。韓国はITが発達しているので,そもそも家から出なくても何でもできるというような環境が日本よりあるのかもしれません。中国では,経済発展で多くの家庭が裕福になってきたことや,一人っ子政策もあり過保護に育てられた子供たちがいい大人になってきたということもあり,ニートやひきこもりが相当数いるという話です(一説には1,200万人とも言われています)。パソコンやスマホで1日中インターネットに繋がれるので,ろくに食事や休憩・睡眠も取らないでオンラインゲームに没頭しすぎた若者が急死するというニュースを,ときどき耳にするほどです。欧米では自立や自由という概念が強いので,さすがにこれほどまでに異常な数ではありませんが,同様の理由で,特に若者を中心に“引きこもり化”が進んでいるようです。先進国特有の課題と言えるでしょう。

 地震大国の日本では,地震そのものもさることながら,それに付随して発生する津波にも高い関心が持たれています。日系人が多いハワイも,太平洋に浮かぶ小さな火山諸島なので,毎年数回は津波に襲われています。もとはtidal waveが「津波」を表す言葉でしたが,これはそもそも「高潮」を指すものであり,地震によって引き起こされる津波とは本来,別に用いられるべきものです。そうした中,ハワイを大津波が襲います。そのとき,現地の日系人が発したtsunamiという言葉がハワイで定着し,それが後に学会でも正式な呼び名に決まりました。こうして,今ではtsunamiは世界中で通じる言葉となったのです。


 世界中で話されている英語と違い,日本語は日本でしか話されていない言語です。その中には,外国から外来語として“輸入”してきた言葉もたくさんありますが,逆に外国へ外来語として“輸出”されてきた日本語も意外と多いことが分かります。そして,それには日本文化の“輸出”と関係するものもあります。次はどんな日本語が海外へ“輸出”され,どんな日本文化が“輸出”されていくのでしょう。一日本人として次を楽しみに思います。