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塩野七生(2004)『パクス・ロマーナ』新潮文庫

ローマ人の物語〈14〉パクス・ロマーナ(上) (新潮文庫)/塩野 七生

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ローマ人の物語〈15〉パクス・ロマーナ(中) (新潮文庫)/塩野 七生

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ローマ人の物語〈16〉パクス・ロマーナ(下) (新潮文庫)/塩野 七生

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 冒頭、筆者は本巻に関して「スッラのように痛快でもなく…(中略)…カエサルのように愉快でもない」と述べている。これが言わんとしているところは、「天才の後を継いだ天才でない人物」初代ローマ皇帝は、英雄的事業をなしえていないということだろうか。確かに、ここまでに描かれているようなアクロバッティックな戦いの描写は少ない。だが、私は本巻をあろうことか、これまでの最速のスピードの一日で読み終えてしまった。それほどに、少なくとも私にとってはある意味で痛快、ある意味で愉快な一冊であった。

――人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ない。
 これは、筆者が作中、何度も引用するカエサルの言葉である。カエサルはこの現実を見せることで、本巻の主人公アウグストゥスはこの現実を見せないことで政治を行った。これが、前巻で述べられていた彼の「偽善」である。その結果、「巧妙に、嘘さえもつきながら確立に努めた帝政とは、効率良く機能する世界国家の実現であった」と筆者はいう。さらにいえば、ある著名な学者もについて、アウグストゥスに関して「アウグストゥスは、アクレサンダー大王やカエサルのような。圧倒的な知力の持主ではなかった。しかし、あの時期の世界は、彼のような人物こそを必要としていたのである」と評価している。私もこれらの言葉に、まったく同じ思いである。栄枯盛衰という世に流れる必定の運命を如何に塞き止めようとするか、そのための制度作りに苦心し、その結果「パクス」を実現せしめた彼の営為は、感動的ですらあった。
 ここまで、読んできた中で最もローマへの想いに打ちひしがれた一冊であった。

塩野七生(2004)『ユリウス・カエサル―ルビコン以後』新潮文庫

ローマ人の物語〈11〉ユリウス・カエサル―ルビコン以後(上) (新潮文庫)/塩野 七生

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ローマ人の物語〈12〉ユリウス・カエサル―ルビコン以後(中) (新潮文庫)/塩野 七生

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ローマ人の物語〈13〉ユリウス・カエサル―ルビコン以後(下) (新潮文庫)/塩野 七生

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 旅の途上に読んだ。ちょうど、リミニ辺りを通りがかったあたり。リミニは、今はアドリア海に面する高級リゾートで多くの観光客で賑わいを見せている。「ルビコン以後」はラヴェンナからルビコン川を越えた、このリミニ城より展開する。
 ルビコン渡河。これは、カエサルの決断を表す。要は、謀反の意を表したということである。そのカエサルの行動に対し、ポンペイウス側はローマを脱出して、南へ。ついにはブリンディシを飛び出し、遥かエジプトはアレクサンドリアまで遁走してしまう。カエサルはこれを見てすかさずローマ入り。ガリア人を携えて、イベリアを平定、そしてポンペイウス側の討伐にかかっていくのだった。
 今更あえて言わずもがなだが、カエサルの人身掌握術があまりにも見事だ。ワンマンであろうが、何であろうが、トップをトップたらしめる資質とは、人身掌握の術の優越に他ならないと思う。ローマから、広大なヨーロッパの諸民族を統一せしめるには、どれほどの器量を要するのだろうか。カエサルこそ、「統治者」という言葉をもっとも美しい響きで体現している一人であると思う。
 後述している斉藤道三・織田信長にもいえることだが、統治者として後世に語り継がれる状況を作るためには、後任を選定する優れた人物眼が必要であるようである。なぜならカリスマが没したあとにこそ、その体制の強度が試されるわけであり、その強度をしてその創設者の評価がなされるからである。その点、カエサルは私のような常人には不可解に思えるほどに、卓抜した「炯眼」を備えていたようである。それは、数多の勇士の中からカエサルの後継者として、いまだ何の業績を挙げていない18歳のオクタヴィアヌスを指名したことで実証されている。誰も知らないこの18歳の「プエル(少年)」。彼こそ、後にPAX ROMANAを現出した、初代ローマ皇帝である。筆者は、オクタヴィアヌスのもつ、カエサルにも勝る稀有な資質として「偽善」を挙げている。これは、如何様な意味を持ち合わせているのだろうか。それが次巻、新生ローマの成立とともに描かれる。

松本清張(1970)『黒い福音』新潮文庫

前間孝則(2008)『なぜ、日本は50年間も旅客機をつくれなかったのか』だいわ文庫

司馬遼太郎(1994)『オランダ紀行―街道をゆく35』朝日文庫