ジョン・ル・カレ『スパイたちの遺産』(加賀山卓朗訳 ハヤカワ書房 文庫化2019)
ジョン・ル・カレ『スパイたちの遺産』(加賀山卓朗訳 ハヤカワ書房 文庫化2019)
ここのとこ3か月くらいかけて休み休み読んでいた『スパイたちの遺産』
あいもかわらず、陰湿で、作品中ずっと暗雲に覆われた地上にいる気分笑。
時おりしも、トランプは再選するわ、悲惨な2つの戦争は続くわ、
そして日本では神戸で政治関連で政治家らの自死、フジテレビの性接待スキャンダルめいたコンプライアンス上の大惨事もあり。
なんだか、そんな重苦しいこの日常を、さらに重苦しくしてくれた本書、心より御礼申し上げたい(笑)。
しかしそのくらい、読んでる間をブルーな気分にしてくれたことは確かです。
あらすじは、ここには書きません
(というか、ほぼ動きがなく、追憶シーン、尋問シーンのオンパレードなので、あらすじがわかりません)
ひどく交錯していることは事実かと。
そういう気分に浸りたいときはぜひ!
SJローザン『ファミリー・ビジネス』(創元推理文庫2024年12月20日発行相良和美)訳を読んで
今最も最新作が出るのが期待されているアメリカの探偵小説作家といえば、SJローザンではないでしょうか?
私もそうで、本屋で赤い表紙に見慣れたリディア・チンとビル・スミスのイラスト画が書かれた文庫本を見つけて即買いでした。
今回は彼女の地元のN.Y.マンハッタンのチャイナタウン、そして時折はお隣ロングアイランド島のフラッシング。
チャイナタウンの一角の地元のシンボル(?)ともいえるビルディングのオーナーで、チンの祖父ガオの商売相手であったチャイナマフィアのボスが亡くなったことから、そのビルのオーナーとなった女性弁護士を守る2人が次々と事件に巻き込まれていくお話。
チンとビルは前回だったかにこれまでの仕事のパートナーから一段深い関係になっているため、物語としてもよりチンの家族につながることが描かれている。その点でいうと、新たな物語を読者に違和感を与えず伝えられる環境が出来たといえる。
そしてこの物語『ファミリービジネス』はそんな環境が整って始めて書ける物語であったのだろう。
どんな組織にも、いいやつ、悪いやつ、がいるが、このチャイナマフィアに属する主要人物らもそれぞれ味があり、不思議と読み進めていくうちに皆に愛情を覚えた。
特に、タンが最初はキツイ女・ヒト好きのしない陰気な女と感じたが、
→忠実な義理堅い秘書→実は一番の武闘派→わけありで情の深い一人の母親
というように変わっていって面白かった。
ヒトと付き合いを深めていく、理解するって、こういうこともあるのだろうなとあらためてつくづく。
ひととの絆を深めたいなと思わせてくれる一作品でした。
『頬に哀しみを刻め』SAコスビー作 (ハーパーコリンズジャパン)を読んで
前回読んだ『すべての罪は血を流す』がとてもよかったので即2冊目に移りました。
とてもよい。
文章に独特の疾走感があって臨場感がある。翻訳者も上手なのだと思います。
舞台は前述同様ヴァージニア州。作者の本拠地ですね。
以下はネタバレ注意です。
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ゲイの息子同志が結婚した白人の父と黒人の父が、その息子らを殺されて、復讐を誓い、まちの悪者(犯罪集団)をやっつけるという話。
真の黒幕を突きつめていく執念に基づく主人公2人の行動の迅速さと行動量の多さが魅力的で、
読んだ後には、ロスマクドナルドの「リュウ・アーチャー」シリーズにも似た、没入感を感じさせてくれた。
これは、主人公のタフさから生まれるスピード感と行動量の多さだと思う。
ある種、ハードボイルドだなと。アメリカの探偵小説(またはイギリスのクレイブン作「ワシントンポーシリーズ」など)の魅力が満喫できました。
白人のバディ・リーの人物像が魅力的で、彼の隣人マーゴとのちょっとしたやりとりが、バディ・リーの心に染みている様子がとてくよくわかり、なんとも癒されるシーンが3回ほどあった(マーゴの出番そのものがとても少ない)
他、主人公アイクの懊悩、罪の意識、取り戻せない過去など、一定の年月を重ね、成人した子供がいる親になった45歳以降の男だったら、皆感じるような「後悔と反省」の苦い感覚も実によく伝わってきた。
黒人でかつゲイという差別されやすい立場からの目線、その目線の先には、必ずその「差別」をして自らだけがこの世の主人公だと勘違いしている輩がいる。それが何世紀にもわたるアメリカなのか、とうすら寒い感じもした。