日々感じたこと・読んだ本 -16ページ目

『報いのウィル』(カリン・スローター作 田辺千幸訳 ハーパーBOOKS 2024.12)を読んで

読み応えがありました。

文庫本として739ページという長編ですが、量のわりにはサクサクと。

文章が平易で短く、状況がリアルに感じられました!

 

内容は・・・・

ひとことでいうと「アメリカは病んでいる。こんな世の中に誰がした!?」という感じでした。

主人公や多くの登場人物が残酷なトラウマを抱えて、そのトラウマが代々に受け継がれて、その土地に沈殿し

そして悲劇(というか惨劇)が繰り返される。

 

そういう意味でホラーな小説です。

そう、

子供を大事にしないといけないですよね。

すべてはそこからはじまるのだと思います。

 

登場人物たちがあまりにもかわいそうで(涙)。

 

日本でいうなら、島田荘司の世界をもっとエグく、グロくした感じでしょうか。

この〈ウィル・トレント〉シリーズ、絶対また手にとってしまうと思いました。

『婚活マエストロ』(宮島未奈 文芸春秋 2024.10)を読んで

『成瀬は天下を取りにいく』『成瀬は信じた道を行く』の作者 宮島未奈さんの最新作をついに読みました。

ちなみに成瀬シリーズはも最近読み直したのですが、

あらためて将来数十年後には、「令和の古典」として不朽の名作となると思いました。

コロナ下において、人と人との絆が希薄になり、

クレーマーやらバーチャル世界台頭下における地域コミュニティの喪失など、

世間がぎしぎしきしみ始めた時代の雰囲気のもと、

大津市に住んでいる一少女の生き方、人生への向き合い方が、ユーモアをもちながらも絶妙に表現されているからです。

 

さて、そんな卓越したストーリーテラーの宮島さんのこの最新作。

舞台は浜松、そして、「人と人をつなげる」婚活カップリングの巨匠(マエストロ)とSNS界隈で評判が募る鏡原さんの姿を、しがない「コタツライター」(取材せずにありものだけで執筆するライターさん)で40歳を迎える猪名川健人の目線から描かれる物語です。

 

地方都市ならではの匂いがプンプン感じられ、実にいいなあと思います。

浜松在住の方には必読の書かなと。

 

ストーリーはコミカルにスピーディーに進みますが、やはりここぞという場面での登場人物たちのふるまいに、実に気持ちよいリアリティを感じます。

 

そして、人の気持ちを前向きに明るくする主人公のことばがところどころに散りばめられています。

私が、最高だと思ったのが、「ストップウオッチ」を使わずに「タイマー」を使う鏡原さんの、人生に対する捉え方。

ここが最も感動しました。

 

こういう、ちょっとした所作が、その人物を語る場面が効果的ななのが、宮島さんの作品の魅力なんだろな~と。

『成瀬』に続いて、またまた人々に、「人生って悪くない」と感じさせるハートウォーミングの作品に出会えました!

『豊臣秀長 ある補佐役の生涯(上・下)』(堺屋太一 文春文庫)1993年

豊臣秀吉の弟、小一郎秀長。

彼が主人公になる物語とは大変珍しい。

派手な秀吉の言動振る舞いの影になって内政を一手に握り、豊臣政権を支えていた「地味」な存在だからだ。

 

兄・秀吉が久々に生家に戻ってきたと思ったら、「侍になって私を助けよ」と

無理難題を言われたものの、母や姉妹のことを考えて、鍬をおろし、兄についていくところから物語は始まる。

そして、兄秀吉が主君織田信長に尽くし出世するにつれ、彼は名補佐役となり、ついに天下を統一する、そういう話。

 

2026年のNHK大河ドラマがこの秀長を主役に据えた『豊臣兄弟!』だと発表があったので、じっくり読んでみた。

 

読んでわかったことは、これは兄弟の「勇気」の物語だということ。

兄弟の「絆」が大河では取り上げられるとの報道があるようですが、

私がこの2人の半生を見ていた、感じたことは、ちょっと違っています。

 

2人の「勇気」に堺屋の小説はフォーカスしているなと感じました。

 

墨俣の城作りと美濃攻め、越前からの撤退騒ぎ、そして中国大返しなど、数々の窮地に直面しながらも、天下に手が届いたのは、彼らの、ことに及んだ時に湧き上がる、勇気。いちかばちかの勇気とその成功に対する熱い希求心だと思いました。

 

来年の大河で、このあたりがどう描かれるのか、とても楽しみです。脚本が、あの『半沢直樹』『VIVAN』の八津弘幸さんでもありますし。