事故を防ぐのは、心の安全から。
心の安全設計室
心の安全コンサルタント
安田伸也です。

仕事でも人生でも、
「いつでも100%の力を出さなければならない」
そう思っていませんか?
真面目で責任感が強い人ほど、常に全力で頑張ろうとします。
ですが実は、実力を100%出し続ける人ほど、いつか限界が来ます。
なぜなら、人生や仕事では不測の事態が起きるからです。
どれだけ準備していても、現場では想定外のことが起きる。
そんなときに必要なのは、最初から100%の力を出し切ることではありません。
普段は実力の80%で動く。
そして残りの20%を、不測の事態のために残しておく。
これは海の現場だけではなく、仕事にも、人生にも、メンタルにも通じる考え方です。
今日は、わたしが巡視艇の船長時代に体験した出来事を通して、
「なぜ100%の力を出してはいけないのか」についてお話しします。
この記事では次のことが分かります。
- なぜ実力を100%出してはいけないのか
- 不測の事態に備える仕事の考え方
- 頑張りすぎない生き方のコツ
この記事の目次
現場で起きた漁船火災
もう20年ほど前の話になります。
巡視艇の船長をしていた頃、沖合で漁船火災が発生したという通報が入りました。
漁船の長さは約10メートル。
1人乗りの小さな漁船です。
幸い、船長は近くにいた僚船に救助され、命に別状はありませんでした。
しかし船は炎上している。
すぐに巡視艇で現場へ向かいました。
現場に到着すると、FRP(強化プラスチック)製の漁船が凄い勢いで燃えています。
巡視艇の放水銃で何とか消火することはできました。
ですが、これで終わりではありません。
この漁船をそのまま放置するわけにはいかないのです。
FRPの船は、内部に浮力材が入っているため、簡単には沈みません。
つまり、このまま漂流すれば、他の船が衝突する危険がある。
さらに火災原因を調査するためにも、港へ曳航する必要がありました。
そこで、巡視艇で引っ張って帰るためにロープをかける作業を行うことになりました。
しかし、漁船は火災で丸焦げ。
いわゆる水船状態です。
わたしともう1人の乗組員で、黒焦げの船に乗り込み、ロープをかける作業を始めました。
ところが、ここからがホント大変でした。
表面の火は消えていても、船体内部にはまだ熱が残っていました。
案の定、作業中に船のあちこちから
「ボッ!」
という音とともに、火の手が上がる。
慌てて水をかけて消火する。
また別の場所で火が出る。
そんなことの繰り返しでした。
さらに、燃えたFRPから溶剤ガスが発生し、作業を続けていると頭がぼーっとしてきました。
軽いシンナー中毒のような状態でした。
これは想定外でした。
それでも作業を続けなければなりません。
約1時間かけて、なんとかロープをかけ終え、港へ曳航することができました。
ミッション完了です。
地味だけど、誰かがやらなければならない仕事
こういう仕事は、正直言ってあまり評価されるものではありません。
人命救助のように、ニュースになることもない。
華々しい脚光を浴びることもない。
しかし、誰かがやらなければならない仕事です。
うまくいくからやる。
うまくいかないからやらない。
そんな仕事ではありません。
そして、こうした現場では、どれだけ事前に準備をしていても、予想していなかったことが起こります。
今回でいえば、消したはずの火が再び上がったことや、作業中に頭がぼーっとしてきたこともそうでした。
だからこそ、現場では「余力を残しておくこと」が大切なのです。
実力の100%を出してはいけない理由
この経験から、わたしはひとつ大事なことを学びました。
それは
「実力は100%出してはいけない」
ということです。
なぜか。
不測の事態が起きるからです。
どれだけ準備をしても、どれだけ想定をしても、現場では予想外のことが起きます。
もし最初から100%の力を出していたらどうなるか。
想定外の事態が起きたとき、対応する余力がなくなります。
普段は実力の80%で動く。
そして残りの20%は、不測の事態のために残しておく。
これは海の現場だけではありません。
仕事でも、人生でも、メンタルでも同じです。
けして「手を抜け」と言っているわけでは無いので、勘違いしないでくださいね。
80%で動くというのは、怠けることではありません。
必要なときに力を出せるように、あえて余力を残しておく。
それも仕事を長く続けていくための、大切な力だとわたしは思っています。
頑張りすぎる人ほど、折れてしまう
わたしのところには、
- 毎日がつまらない
- 働くのが辛い
- もっと自分らしく生きたい
そんな悩みを持つ方が多く相談に来ます。
また、うつや適応障害で休職している方も少なくありません。
そうした方のお話を聴いていると、ずっと100%で頑張ってきた方が多いと感じます。
真面目で責任感が強い。
だから限界まで頑張ってしまう。
しかし、人は機械ではありません。
100%を出し続けていれば、どこかで限界が来ることもあります。
だからこそ大事なのは、
80%で生きること。
わたしは、「良い湯加減で生きる」と言っていますけどね。
いくら良い成分が入っている温泉でも、熱すぎれば入る事が出来ません。
もちろん、冷たくてもダメ。
ちょうど良い湯加減だから、癒やされるのです。
つまり、ちょうど良い温度が大事なんです。
あなたは今、仕事や人生で何%くらいの力を使っているでしょうか?
もし「毎日100%どころか、120%くらいで頑張っている」と感じているなら、少しだけ力を抜くことを考えてみてもいいのかもしれません。
わたしが今やっている仕事
わたしは今、
うつ状態の方をサポートしたり、メンタルを安定させるための考え方や方法を伝えています。
エグゼクティブコーチングのように華やかな仕事ではありません。
キラキラした未来を語る仕事でもありません。
ですが、
わたしはこの仕事がとても好きです。
そして、とてもやりがいを感じています。
なぜなら、自分の経験やスキルが一番活かせる仕事だからです。
そして、誰かがやらなければならない仕事だと思っているから。
自死ゼロ・事故ゼロの世界を創るために。
海の現場で学んだ「余力を残す」という考え方も、今の仕事につながっています。
事故を防ぐためにも、心を守るためにも、限界になる前に気づくこと。
そして、必要なときに動けるだけの余力を残しておくこと。
それが「心の安全」にもつながると、わたしは考えています。
まとめ|80%で生きるということ
いくら準備をしても、不測の事態は起きます。
だから、最初から100%を出し切らない。
80%に留めて、残り20%を“もしも”のために残しておく。
これは、手を抜くということではありません。
何かが起きたときに対応できるよう、自分の中に余白を残しておくということです。
仕事でも、人生でも、メンタルでも同じ。
いつも全力で走り続けるのではなく、自分にとっての「良い湯加減」を知っておく。
それが、長く働き、長く生き、自分の心を守るために大切なことだと、わたしは思っています。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事が、「いつも100%で頑張らなければ」と自分を追い込むのではなく、自分にとっての良い湯加減を考える切っ掛けになれば嬉しく思います。
筆者プロフィール|安田伸也
心の安全設計室代表・心の安全コンサルタント。元海上保安官・潜水士。
海上保安庁に約35年間勤務し、潜水士、巡視船航海士、巡視艇船長などを経験。海難救助、転覆船や沈没船の捜索、領海警備、密漁船や密輸船への対応など、3,000件以上の事件・事故に関わる。
一方、在職中には職場の人間関係やコミュニケーションに悩み、約20年間メンタル不調を繰り返す。退職後に心理学やコーチングを学び、現在は心の安全コンサルタントとして、事故防止、心理的安全性、職場のコミュニケーション、メンタルヘルス、傾聴などをテーマに企業の安全大会や研修で講演。
「自死ゼロ・事故ゼロの世界を創り、笑顔で働く人を増やす」ことを使命に活動しています。


