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 タイトルに「マッキンゼーで知った」とあったから読んでみたのだけれど、「なるほど、いかにもマッキンゼー」と思える記述はそれほど多くなかった。要は「タフな仕事と人生をやり遂げている人々の働き方や生き方」を綴った書籍である。2013年12月。

 

 

【「イエス」と答える】
 上司は到底無理な仕事を振ってくることはありません。部下の実力よりも少し高い仕事を提示してくるものです。そこでやる気があるかどうか測っているのです。
「自信がないので、少し考えさせてもらえませんか」などと答えたら、その仕事は他の人に回ってしまいます。・・・中略・・・。
 そして、もし「イエス」と答えて失敗したとしても、それを上司が一方的に責めたりはしないものです。仕事を依頼した上司も責任を共有しているからです。それに、失敗も経験のうち。挑戦しなければ、失敗すらできません。
 チャンスが来たときにいちばんいけないのは、あいまいな姿勢をとることです。・・・中略・・・。
 初めての仕事に自信のある人などいないのではないでしょうか。
 どんなにキャリアを積んでも、新しい仕事は次々と出てきます。 (p.52-53)
 仕事ができる人に共通する資質とは、失敗を恐れないこと、そして失敗しても切り替えが早いことだろう。そして言い訳はしない。
    《参照》   『ギブ&ギブンの発想』 佐々木かをり (ジャストシステム) 《前編》
              【言い訳】

 仕事ができる人は、次々に仕事が舞い込むから、成功したからどうのこうのとのんきに振り返っている時間もなければ、己惚れることなど何の意味もないことをよく知っているから、常に前向きである。センチメンタルな人はほとんどいない。

 

 

【マッキンゼーと官僚組織】
 民間企業では思いつかないような些細なことにこだわり、決められたルールからは1ミリたりともずれないようにする。お役所には、そういう仕事の進め方に関しては、非常に高い能力を持っている人たちが多くいます。これもまた特別な才能だと思います。
 マッキンゼーと官僚組織。それはおそらく真逆の世界になるのでしょう。(p.57)
 “これもまた特別な才能だと思います”という表現を読んでゲラゲラ笑ってしまったのだけれど、お役所人間は、これを真顔で読むのだろう。
 “決められたルールからは1ミリたりともずれないようにする”の間抜けすぎる例が下記である。
    《参照》   『スティーブ・ジョブス英語で味わう魂の名言』 桑原晃弥 (PHPビジネス新書)
              【自分の飛行機をハイジャックする奴】

 

 

【異議を唱える義務】
 マッキンゼーには、「obligation to dissent(異議を唱える義務)」という言葉があります。たとえば会議が進行していく中で、おかしいと感じる意見や提案がでてきたとします。自分がもっている知識からすると、どうしても賛成できない。
 そのとき、その社員は異議を唱える「義務」があるということです。役職や立場の上下は関係ありません。そのままスルーしてしまうことは、マッキンゼー社員としての義務の不履行になるのです。(p.61)
 会議の後で、「あのやり方はおかしいと思ったんだよ」などと言った場合・・・
 もしマッキンゼーでこんな会話をすれば、それこそ自身の存在意義を問われることになります。・・・中略・・・そんな社員はすぐに契約を打ち切られるのです。(p.61)
 チャンちゃんは、昔から単純な性格だし、あまり日本人的ではないところがあるから、分からないものをわかったふりをすることはどうでもいい場合を除いて、あまりない。だから、この読書記録のようなブログを書いている。
    《参照》   『日本人をやめる方法』 杉本良夫 (ほんの木
              【書評をやってもらうこともある】

 異議を敵対行為のように見なす人々が多い日本社会では、未だに「異議を唱える奴=ウザイ奴」らしいけれど、こんなことを続けているようでは、良き方向に向けての改善が起こらないどころか、停滞やら腐敗は永遠に改まらない。(企業コンサルタント業務としては、最悪であることが分かろうというもの。)
 このような日本社会の状況は、直接にであれ間接にであれ、異文化摩擦を経験した人々がある程度の数を占めるようにならないことには、変わらないだろう。近年の日本は、外国人目線のテレビ番組が比較的増えてきているようだから、徐々にであれ世代が入れ替わる過程で変わってゆくかもしれない。

 

 

【ソフトパワーとハードパワー】
 あくまでも相手国を尊重しつつ進めていく。そういう一連の交渉力を「ソフトパワー」と定義しています。
 一方「ハードパワー」とは、軍事力や経済力をもって圧力をかけることです。自国の利益を最優先させて、力でねじ伏せるように進めていく。
 外交は、この二つのバランスが非常に大切だとされています。(p.63)
 ハーバードでジョセフ・ナイ教授から教わった外交術として書かれていることだけれど、落合信彦の政治小説を読んでいた人々にとっては、周知の交渉術である。
    《参照》   『中国は日本を併合する』 平松茂雄  講談社インターナショナル
              【speak softly but carry a big stick】

 とはいえ、著者がこの外交術に言及しているのは、ビジネスを円滑に進めるためのノウハウ例としてである。
 とくに女性は共感を引出し、懐に入り込む「ソフトパワー」が男性よりも秀でていると言われています。自分なりに使える能力を可能な限り発揮して会社をよりよく変えていくのがプロというものではないでしょうか。(p.64)

 

 

【24時間考え続ける】
 会社を守り、社員の生活を守るという責任。その責任を果たすために、24時間考え続けている。そして考えて考えて、考え抜いたうえで一つの方向性を見出していく。
 そうした日々の思考の蓄積から生み出された直感には、新しい変化に対応する力も備わっています。コンサルタンントの理詰めの分析ばかりではなく、そうした直観の力も使わなくては、正しい選択を重ねていくことはできません。(p.72)
 否が応でも四六時中仕事のことを考え続けなければならない状態下に置かれた経験がある人なら、この記述が真実であることは、体験上分かっている。
 一流の人たちをみていると、仕事に対する集中力が半端ではありません。頭が爆発しそうなくらい考え抜いています。(p.72)

 

 

【マッキンゼーのチームディナー】
 マッキンゼーでは、一つのプロジェクトが立ち上がり、チームが編成されると、チームディナーをするという決まりになっています。
 プロジェクトの進行中に必ず一度か二度チーム全員が集まり食事をする。どんなに忙しくても、このティームディナーは優先しなければなりません。そのための食事代は予算として確保されています。(p.130)
 チームディナーの目的は、日本でいうところの“飲みニケーション”と全く同じ。
 能力主義・個人主義の欧米ビジネス界で、日本の“飲みニケーション”と同じことが行われているなどと聞くと、やや意外に思う人が少なくないだろうけれど、永続的な業績を上げているような欧米企業のコアとなっている部所では、“終身雇用”だって守られているのである。
    《参照》   『日本人が世界に誇れる33のこと』 ルース・ジャーマン・白石 (あさ出版) 《後編》
              【企業へのロイヤリティ(忠誠心)】

 マッキンゼーメンバーだけのチームディナーの他に、クライアントと共にするクライアントディナーもあることが書かれている。クライアント側の人間が、企業改革のために必要な重要情報を正確に提供しなかったり、改革拒否側に回るということが、往々にして起こり得るからだろう。

 

 

 

【マッキンゼーのメールに関するルール】
 「ポジティブなことをつたえるのはメールでかまわない。ただしネガティブなことを伝えるときは、必ず『in person』で伝えること」
 つまり直接会って話しなさいということです。(p.139)

 いくら文章に気を遣っても、必ずそこに行き違いが生まれてきます。相手の顔が見えないために、妙な誤解が生じていくものです。(p.140)
 ネガティブなことは、事実関係や背景などが詳細には伝わらず、事実無根の妄想話に近しい内容になってしまいやすい。このようなことは、ビジネスの現場で誰でも一度は経験しているだろう。
 ところが、悪質な人間は、相手本人対面のデメリットを大いに活用して、本人不在の場所で妄想話を拡散するのである。そんな悪質な人間を見定めるのは簡単である。「本人の前で、その話ができますか?」と聞くだけでいい。「できる」と言うなら、その場で直ちに日時をセッティングすればいい。
 仕事のできる人たちからくるメールは、どれも短くわかりやすい。頭の中がきれいに整理されているのでしょう。メールひとつ見ても、仕事のできる人かどうかわかるものです。(p.142)
 することがない閑人集合体である公務員の会議に参加してみるとわかるけれど、堂々巡りのような長っ話が延々と続くのである。“頭の中がきれいに整理されているかどうか”など、何の関係もない。成果を上げることより、いかに暇な時間を消費するかという目的のために会議が活用されているのである。
 旧習・悪弊に狎れ切った年配の公務員には、今でもキーボードすら打てない人々が少なくないことだろう。存在自体が単なる害悪である。