《前編》 より

 

 

【アルファブロガー】
梅田  最近面白いのは、若い世代のブログを読むと、アルファブロガーの方がマスメディアで認められている人より偉いという感じがある。
茂木  アルファブロガーって全くの自由競争だもんね。談合は全くない。
梅田  新聞で書いているとか、どこの大学の先生だとか全く関係ない。匿名・実名入り混じって、ただ、この人はアルファブロガーだっていうだけ。そのほうが意味があると、20歳くらいの子はごく自然にそう思っている。(p.136)
 アルファブロガー(Alpha blogger)とは、インターネットにおけるブロガーのうち、そのブログが大きな影響力を持つ人や、多くの読者を持つ人のこと。毎日数万単位のアクセスがある著者のお二人こそアルファブロガーである。

 

 

【相移転】
梅田  インターネットの存在を前提として育った世代は、もう相移転しているかもしれない。彼らの世代には、情報の私有というものを悪だと思っている人が出てきていますよね。自分が隠匿しておくことに罪悪を感じる。情報だけでなくて、モノをもたない、ということのほうが正しいと思っている。
茂木  ネットのこちら側に私有するのではなく、あちら側にあげちゃう。
梅田  その感覚でリアルライフも生きる、すごい手ぶらな感じの人たちというか。(p.161)
 このような生活スタイルを実践する若者たちは、間違いなく増えて行く。
 “持つことの贅沢”より、“持たないことの贅沢”の方が遥かに価値は高い。バブル経験世代は案外そんなことが分かっていない。バブル世代はモノにかぶれて心の裡の日本文化ですら喪失しているのである。
   《参照》   『持たない贅沢』 山崎武也 (三笠書房)

茂木  僕なんかも、自分はもしかしてすでに相移転しているかな、と思うのは、たとえば昔だったら ・・・(中略)・・・ いまは僕のブログにコメントを書いてくれる人がリアルで何をやっている人かなんて全然気にならない、知りたいとも思わない。ネット人格で十分という感覚です。ネット上の人格の時価総額のようなものがある。

梅田  たとえば、日本のネットベンチャーでも採用する時、その人のブログを重視していますよ。面接1時間とか2時間はごまかせても、ブログ半年分とか一年分はごまかせないから、そのほうが信頼に足る情報だと。(p.162)
 チャンちゃんは良い子ぶって書いてないから、ネット人格はほぼ等身大だと思っているけれど、たまたまロクデモナイことを書いたブログだけを読まれて、「なんだコイツ」とかって思われちゃうことを想像すると、ちょっとキツイ。

 

 

【インターネットが秘めているメッセージ:生命原理】
茂木  オープンにして偶有的なプロセスでやっていかなければ、生命体の成長ということはありえない。それは生命の一大原則なんですよ。 ・・・(中略)・・・ インターネットって、生命というものがどう進化してきたか、という生命原理に近い現象を、人間の脳とか情報の領域におこすツールという感じがしている。
 生命原理というのは、近代が追求してきた「管理する」などの機械論的な世界観にはなじまない。本当の生命原理は管理できるものではないし。オープンで自由にしておかないと、生命の輝きは生まれない。結局、インターネットが人類にもたらした新しい事態の背後に隠されたメッセージは、一つの生命原理ということだと思います。(p.165)
 「オープンにして偶有的なプロセスでやっていく」過程には、楽しいことばかりではなく辛いこともある。しかし、それを乗り越えなければ本当の自由には到達しない。偉大な業績を残してきた先人たちは、それらを乗り越えてきたのである。安全が確立してからでないと参加したくないと思うのはしかたがないことだけれど、そんなマイナス側面にばかり拘っていたら、生命の輝きは生じないだろう。

 

 

【一生何かを学び続けなければいけない】
茂木  もう君たちは、大学を卒業したら一生その遺産で食っていける時代に生きていなくて、一生何かを学び続けなければいけない、自分をアップデイトしなければいけない。(p.195)
 親が地方公務員で、自分も地方を出たことがないまま生活している人は、こんな当たり前の時代認識がピンとこないんだろう。
「転石苔を生ぜず」の西洋文化に対して、「石の上にも三年」と言われる日本文化だけれど、3年間何もしないのではなく3年間弛むことなく練磨し続けることと解釈すべきだろう。自分をアップデイト(更新)しないなんて言ったら、乗られている石だってきっと嫌がる。企業家は基本的にすべてアップデイトな日々をすごしているはずである。
 フューチャリストは、絶えざる自己更新の過程に身を置きながら、志向性をダイナモとして生命を輝かせて生きつつ、やがて本当の自由という領域を開拓してゆくパイオニアである。

 

 

  梅田望夫・著の読書記録

     『フューチャリスト宣言』

     『ウェブ時代 5つの定理』

     『ウェブ進化論』

     『ウェブ人間論』

 

  茂木健一郎・著の読書記録

 

<了>