《前編》 より

 

 

【傀儡だらけ】
 北朝鮮の軍事部門の№2である金永南(キム・ヨンナム)は、独裁者・金正日に次ぐ権力者だが、彼は深くアメリカの国家情報部(CIA)とつながっていて、CIAの意志で動く人物である。何かあるとすぐに北朝鮮からの核ミサイルの脅威を計画的に煽り立てる役目だ。 ・・・(中略)・・・ “北の核”の問題も、日本国民を脅すためにアメリカが常用する手口である。私はここまではっきりと書く。 (p.275)
 テレビで“北の脅威”を真面目に解説しているオジさんたちも、そういう番組を制作しているメディアも、アメリカの意志で動いているピッカピカの傀儡。
 近年、こういうことはインターネットを使って情報を得ている人々にとって明白なことだから、彼らはテレビで解説している人々の顔を見ながら、「よくまあ、恥ずかしげもなく・・・」と呆れつつ見とれているはずである。
   《参照》   『悪魔の情報戦争』 浜田和幸 ビジネス社
             【朝鮮半島をめぐるアメリカの利権構造と、ここでも貢君国家の日本】

 東アジアに起こる不穏な動きは、みなアメリカによる策動である。
   《参照》   『中国バブル経済はアメリカに勝つ』 副島隆彦 (ビジネス社) 《前編》
             【尖閣諸島沖事件】
             【韓国の哨戒艦沈没や砲撃事件】

 

 

【日本を介したロシアとの駆け引き】
 大産油国であるロシアとイランとベネズエラの“3大反米国家”を痛めつけるために、アメリカ政府は、2008年7月から急に原油の値段を下落させ始めた。(p.60)
 1バレル147ドルだったのを半年で32ドルにまで下落させた。
 世界は露骨な金融戦争をしているのである。
 現在は52ドルだからロシア経済は青息吐息である。 ・・・(中略)・・・。NYMEXというニューヨークの商品先物市場で、世界の石油先物の値段は決まる。ここを支配しているのが、レオ・メラメッドCME(シカゴマーカンタイル取引所)名誉会長である。彼らが原油市場も操縦して、いいように値決めするのだから、手も足も出ない。“腐っても鯛”でアメリカはまだ強い。これらの最後の担保は軍事力である。(p.64)
   《参照》   『連鎖する大暴落』 副島隆彦 (徳間書店)
             【CMEの先物取引】

 3日前、結果の出たロシア大統領選を前に、アメリカはメディアを使ってプーチン敗北を目論んでいたけれど、大方の予想通りプーチンさん圧勝で大統領に返り咲いた。その結果、現在、石油価格は急上昇中である。
 ロシアとしては日本に、カネを出させて、まず北方領土の一部をカネで買わせようとしている。お金で交渉ごとに決着をつけるのは、このこと自体は、大人の作法だ。そのかわりに、アメリカが原油・天然ガスの世界値段の上昇を取引材料にしてロシアにアメリカの言うことを聞かせたい。日本を使ってロシアをだまさせようとしている。 ・・・(中略)・・・ 。
 これで前述の60兆円の、郵貯・簡保のカネでの米国債買いの話とつながる。世界政治は、このように、金融・経済そして資源、軍事(安全保障)の両方の問題を巻き込んで、泥臭く進む。それらの国内の政局(政治家たちの権力闘争)への跳ね返りとしての、アメリカによる画策・関与、ということを、私たち日本国民は、そろそろはっきりと知った方がいい。(p.283)
 アメリカは、北方領土返還を欲している日本に米国債を買わせて金欠状態にしておき、その上で、石油価格を急上昇させてロシアを豊かにさせることで強気にさせ、北方領土売却価格を安値で妥協しないようにし、日本とロシアの関係を末長く成立させないようにしたい、ということなのだろう。
 対ロ対策として原油高が演出されると一番痛いのは中国である。そうでなくとも青息吐息の中国経済なのに、このまま石油価格上昇が続けば数カ月後に世界を震撼させる中国危機が起こるんだろうけれど、それも計画の内である。
 日本国内で暮らしている日常生活者にとっては、円高ゆえに他国より石油価格急上昇の痛手は若干緩和されてはいるけれど、生活費が増えない状況で、車なくして生活できない地方の皆さんにとっては、しんどい日々が続くことだろう。
 国際政治に関わる覇権欲・権力欲・金銭欲の亡者たる馬鹿オヤジどもの作為の狭間で、日本のみならず世界中の日常生活者たちは翻弄され続けるのである。

 

<了>

 

副島隆彦・著の読書記録