《前編》 より

 

 

【コンサルタントが用いる不思議な英語】
 1つ目は 「ミーシー」、2つ目は 「ロジック・ツリー」 です。 ・・・(中略)・・・ 。
 まず、「ミーシー」 ですが、これは、「MECE」 という略語で、 Mutually Exclusive, Collectly Exhaustive (相互に排他的、集合的に完璧)、すなわち、個々に見てダブリがなく、全体として漏れがない、という意味の言葉です。
 コンサルタントはこの言葉をよく使いますが、それは、物事をロジカル(論理的)に考える際に有効だからです。(p.120-121)
 外資系のコンサルは、根拠なき思い込み(常識)や、曖昧な思考を許容しない。

 

 

【PDCAサイクル】
 ロジカルシンキング(論理的思考法)」 に加え、「外資系コンサルティング・ファーム」 の智恵の秘密には、あと2つのキーワードがあります。
 その1つが、「ファクト(事実)ベース」 という考え方、もう一つが、「仮説思考」 です。この2つは絡み合いながら、コンサルティングの基礎を構成しています。(p.128)
 仮説思考の考え方の枠組みは 「PDCAサイクル」 と言われている。
 【仮説立案】 → 【行動/情報収集】 → 【検証】 → 【進化した仮説】 というサイクル、つまりPDCA (Plan – Do – Check – Action) を何度も回すことで、真の問題点と 「解」 に近づいていくのです。(p.132)
 こう言った用語や、以下に一部書き出すフレームワークに関する具体的な思考例が、各々記述されている。
 興味のある方は、自分で購入して読んでください。

 

 

【ボスコンのPPM】
 ポートフォリオ(Portfolio)とは、もともと “紙バサミ” “折りたたみ鞄” のことを指す言葉で、いろんな商品をはさんで、全体の価値を高めることを狙ったものです。(p.138)
 多角化 ―― すなわち、「事業のポートフォリオ戦略」 をとることによって、企業の業績は安定するものと考えることができます。
 しかし、一方で、企業経営者は、「事業ポートフォリオ」 の組み方や各事業に対する投資の優先順位など、新たな課題を抱えることになったのです。
 「ボストン・コンサルティング」 は、この命題を考える際の 「フレーム・ワーク(枠組み)」 として、「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」 を提唱しました。(p.139)
 縦軸に市場成長率、横軸に相対市場シェアをとり、それぞれの高低で、2×2=4象限にわけて考えるフレームワークである。

 

 

【マッキンゼーの7S】
 企業を全体的に診断するときのフレームワークとして広く流布しています。
 「マッキンゼーの7S」 とは、①共通の価値観(Shared Value)、②戦略(Strategy)、③組織構造(Structure)、④システム・制度(System)、⑤経営スタイル(Style)、⑥スタッフ(Staff)、⑦スキル(Skill) のことを指します。 (p.157-158)
 ② ③ ④ の3つは、経営者が変えようと思えば変更することができるから、「ハードの3S」 と呼ばれ、残りの4つは 「ソフトの4S」 と呼ばれている。
 これらの7つは、カバラのセフィロトのような相関構造図で描かれている。

 

 

【コンサルが優れている点】
 「戦略系コンサルティング・ファーム」 が優れているのは、こうした、①ファクト(事実)に基づく分析、②適切な 「フレームワーク」 を用いた論点の整理、③仮説の構築、といった点です。(p.162)

 

 

【論点を 「見える化」 する】
 日本人同士の議論では、日本語の持つ曖昧さから、同じ結論に達した、と思っても、実際には違うことを考えていた、というケースがあります。
 こうしたことから、事実(できれば数字)に基づいた論点を、定義されたフレームワークや用語を用いて分類・整理して、可視化(見える化)することは、問題解決の前提として非常に重要なのです。(p.162)
 可視化(見える化)することは、問題の解決でもあり、資産の共有化でもあるけれど、案外、日本企業はこれをしてこなかった。
 日本の企業や組織の第二の弱点は、「 “暗黙知” をオープンにしない文化」 にあります。
  ・・・(中略)・・・ 。
 「なんとなくこうしたら良い」ということが分かっていても、第3者にも理解できるような明確な理屈づけと公開・情報の共有が弱く、個人の頭の中に留まっていたり、特定のチーム内でしか共有されていなかったりする ―― つまり、 “暗黙知” のままで組織に埋もれている ―― のです。(p.204-205)
 こう言ったことは、何もコンサルを介在させなくとも、社内や組織内で、コミュニケーションを定常化するとか、特別編成チームを作って全員から徹底的にヒアリングを行うなどして 「見える化」 すれば、様々な問題点や改善点など、かなり浮かび上がってくるはずである。

 

 

【 「型」 を守り、破り、離れる】
 一橋大学大学院国際企業戦略研究科の野中郁次郎教授は、 『ビジョナリー・カンパニー2』 の解説の中で、
 ―― 日本には古くから、理想の行動プログラムとしての 「型」 があった。
 型は人を枠にはめるが、すぐれた型を体得すれば、動きに無駄がなくなり自由が保障される。
 さらに 「型」 は獲得するだけで終わりではない。
 「型」 には不断のフィードバックを通じて革新しつづける “守・破・離” という自己超越プロセスが組み込まれている ――
と、述べていらっしゃいます。(同書417ページ)
 こうした、「型」 を覚えた上で自由に演出する、とする考え方は、柔道や剣道、合気道など、さまざまな日本の武術に見られるものです。(p.233-234)
   《参照》   『ザ・プロフェッショナル』 大前研一  ダイヤモンド社  《後編》
             【大前式の「守・破・離」】
   《参照》   『退散せよ! 似非コンサルタント』 船井幸雄 (李白社) 《前編》

             【船井さんの「守・破・離」】

             【ニーチェと「守・破・離」】
 規律的に乱れ起業家精神など全くといっていいほどない官僚的・公務員的組織の中にあって、内部を変革しようとする意志のある人々がいるなら、この本に書かれている様々な 「型」(フレームワーク) を手掛かりに具体的に考えてみるのが良いかもしれない。非常に多くの成果を期待できることだろう。もっとも、現実の腐りきった就業慣行に狎れきった大多数に押し潰されなければ、の話であるけれど。

 

 
<了>