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 IT時代と言うのは、インターネットが使えるようになった時代ということなのだろう。スピードと効率と正確さが一体となって実現してこそ「儲け」の決め手になる。2003年6月初版。
 この著作で一番良かったのは、ITの代名詞である “デジタル” の反対語である “アナログ” について記述されていたエピローグ(終章)である。そこでは李登輝元台湾総統のことが語られていた。

 

 

【中堅・中小企業のシステム化】
①  殆どの企業は、システム化は行っているのに、思ったような効果が出ていない。
②  その一番の原因は、経営者自身が先頭に立ってシステム化を推進していないことになる。
③  また、外部の専門家(システムコンサルタント)を上手に活用していない。(p.78)
 チェーン店を持つような中堅・中小企業のようなところの事例が想定できる。
①については、コンピュータが導入された当初のスタンドアロンのマシンが個々に稼働しているだけで、統合的に確立したシステムがないために、各店舗それぞれの売り上げ集計をメールで本部に送り、それを本部で再入力して集計しているというような所が、当時はまだあったのだろう。POSシステムの導入をすれば、販売や仕入れのみならず、在庫やロジスティックスまで一挙に管理できるのである。
② については、経営者の認識不足もあるだろうけれど、既存システムの保守運用といった安楽な作業に従事している社員の既得権喪失を恐れる意識も、大層な障害になっていることだろう。
③ は、仲介者を入れないと、不適切な設備を導入されたり、過剰スペックのボッタクリをされる可能性がある。システムベンダーというのは、基本的に以下のようなスタンスなのである。
 通常のシステムベンダー(システム開発会社)は、まだまだ「 『箱もの』 としてシステムを入れる」 という感覚が強いため、顧客企業の本質的な要望まで顕在化させ、解決提案を行うのは実際のところ難しいのです。(p.171)

 

 

【弱小・中小企業用システム】
 システム化が非常に有効なのは、中堅・中小以上の規模の企業なのだろう。それ以外の小さいとことなら、エクセルやアクセスといった一般に市販されているマイクロソフト社のソフトウェアを用いれば、納品書を基にしたデータのバッチ処理など出来るのだから、PCが好きな若手社員にさせれば、自社用のソフトをつくることなど、通常の人件費の範囲内で出来るはずである。
 現在10万円以下で市販されている320G程度のHD容量を持つPCで十分な筈である。社外との連絡はインターネットで十分なのだから。

 

 

【命がけの経営】
 本章をまとめるにあたり、読者の皆さんにはどうすれば 「命がけの経営」 を理解していただけるかを考えていたとき、突然思い出したのが、10年近く前にお会いした台湾の李登輝前総統のことでした。李登輝さんに比べると私の知っている日本の政治家や官僚はやはり 「命のかけ方」 のレベルが違い、それでもの足りなく感じるのだということに気がつきました。
  ・・・(中略)・・・ 私と李登輝さんは、京大の農林経済学科の先輩、後輩でもあります。 ・・・(中略)・・・ 李登輝と言う哲人政治家を現代という時代に持っている台湾の人たちがうらやましくなりました。(p.185)
 面会時間をかなりオーバーして、いろいろ話し込んだらしい。
 李登輝さんは1923年生まれですが、日本統治下の台湾で日本人として生まれたことを誇りに思っている。その中でも特に台北高校時代に味わった旧制高校の教育はいまでも最高の教育であり、なぜ、戦後の日本はそのすばらしい教育を捨ててしまったのか残念でならない、といった内容のお話をしてくれました。(p.186)
 人間形成と言う意味で、一番重要な青春期だったそうである。
 人間はどう生きねばならないのかといった必要な特性、例えば、個人の利益より社会の利益を優先しなければならないということや、必要な時はいつでも命を投げ出さなければいけないといったことを叩き込まれたのだと李登輝さんはおっしゃっていました。(p.186-187)
 現在の日本は個人の損得ばかりで、命をかけて日本に対して責任を取ろうとする政治家や官僚など誰もいやしない。旧制高校が育んだエリートは現在の日本にはいない、というのである。
   《参照》   『最高指導者の条件』 李登輝 (PHP)
 李登輝さんに面会した多くの日本人が、李登輝さんに “本物の日本人の姿“ を観るのだろう。

 

 

【デジタルとアナログの融合】
 IT業界の人にも 「デジタル」 的な方法論ではなく、日本人の特性と言える 「アナログ」 にもっと興味を持っていただきたいと思います。虫の声に風流を感じることができる日本人と、それが雑音にしか聞こえない欧米人の考え方のどちらが日本人にあった考え方と言えるでしょうか? (p.198)
    《参照》   日本文化講座⑩ 【 日本語の特性 】 <前編>
             ■ 日本語と日本人の脳の特異性 ■

 デジタルとアナログという相反するものを融合させようとする、ありえない(?)志に、やや困惑するけれど、意図するところはよくわかる。
 デジタルは確かに機械の性であっても、人間の本性ではない。人間は自然界の生物であって、機神界のパーツではないのである。日本人だけが機神界を制御できる唯一の民族のはずである。
 
<了>