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 この書籍が対象にしている会社とは中小企業のことである。普通の企業コンサルタントさんが書く書籍とは、やや趣を異にしている。96年11月初版。
 

 

【考える力を老化させない】
 では、ネルソン精神、チャレンジ・スピリットを自足させるために、経営者はどういう工夫をすればいいのだろうか。
 答えを先に言ってしまえば、考える力を老化させるなということだ。
 松下幸之助翁は、ご存じのように貧乏で学歴がなく病気がちだったが、絶えず考えていたそうだ。
 松下翁の著書に、口癖のように出てくるのだが、松下翁は、考えて考えて考え抜いた結果、ふと浮かんできた 「姿」 でものごとを判断していたらしい。ふと浮かんでくる・・・・・これは神道で言うと、奇魂(くしみたま:自らの魂のうち、ヒラメキなどを司るもの)、守護霊、白蛇、白龍などがフワッと教えている状態なのだろうと私は思う。
 考える力が老化し、考える力をなくすとどうなるか? 致命的な症状は、経営が面倒になるということだ。新製品? もういいや。来年度の目標? 今のままでいいじゃないかとなってしまう。(p.37-38)
 ヒラメキは、長時間思念を集中させ、それを止めて心を解放させた時にフト浮かぶものである、という話はよく耳にする。
 宗教≒非合理≒感覚的なものという考え方は一面において真実であっても、それとは反対の、考える力を鍛えようとする態度は、「動中の静」 を尊ぶ “神道的精神“ には相応しいことなのである。神道には、“この世を生き貫く” という精神が内在している。 穢れた(=元気のない)状態を忌み嫌う神道精神は、ヒラメキを必要とするビジネス環境を生きる人々にはマッチしやすい。
 「脳の衰えた状態」 とは、「考える力がなくなった状態」 であると定義してしまえば分かりやすいかもしれない。衰えた脳からは、生きる力も、ヒラメキも出てきようがない。神なるモノも遠ざかる。
 考える力を強化する方法が書かれている。
 問題は考える力であって、それを維持、強化する最善の方法は、絶えず評論文を読むことなのだ。(p.43)
 評論分以外で、生きる意欲を高めるには、偉人たちの伝記などが相応しい。

 

 

【国語力】
 読売新聞だったと思うが、一部上場企業の管理職・経営者の国語力をテストしたことがある。・・・中略・・・。役職別の平均点をとってみたら、実にみごとなまでに、役職による国語力の差が明らかになったのだ。地位別の平均点は、係長クラスが65点、課長クラスが70点、部長80点、取締役85点、社長90点という結果になった。
 いかがだろうか。地位の差とは、まさに国語力、読解力の差なのだ。 (p.46)
 卓抜なシャーマンでもある著者は、神を動かす能力として必要なものについても 「国語力」 と言っている。情感としての高まりも、魂に響くほど奥が深く精緻な 「国語力」 なくして生じようもないのだろう。

  《参照》   『魂の言葉』  鏡リュウジ (学研

            【呪文】

 

 

【筋肉を使う】
 筋肉とは、神道でいう荒魂(あらみたま)と関係している。荒魂とは、根性や忍耐力、やるぞ、という意欲などを司る。だから意欲が衰えている時、無理にでも体を動かして筋肉を刺激すると、また気力が湧いてくるのだ。(p.58)
 常時、便秘に悩んでいた人が、運動を始めたら、愛おしい程真っ黒な宿便がポンと出た、とかいう話を聞いてゲラゲラ笑ったことがある。 何でもかんでも神仏に頼る前に、己の頭と体を十分に使うことに注力すべきである。

 

 

【無形の経営・中小企業の人事】
 ぐちゃぐちゃばらばらな社員で、ろくな社員でなくとも、売上が順調に伸びていて、利益が出ていたら、これは立派な会社、立派な経営なのだ。それを維持できて初めて、少しずつ少しずつ優秀な人間が来る。10年、20年かけて会社が整っていく。エキサイティングで明るく、発展気運のある社風づくり、社員の気持ちづくり、そういった無形の経営がまず先。有形の経営は後。これがものごとの順序というものだ。
 ぐちゃぐちゃの従業員でいい。ばらばらの社員でかまわない。妖怪変化、ゲゲゲの鬼太郎一家のミーティングのような取締役会、大いに結構。砂かけばばあと、猫娘と、一反もめんとが集まって 「どうする鬼太郎!」 でもいいのだ。 (p.72)
 中小企業ならではの経営順序であり、最高にエキサイティングな人材経営の例え。

 

 

【中小企業の経営者資質】
 繰り返し主張してきたように、中小企業経営者にとって大切なのは、理論ではない。人材でもない。具体的でエネルギッシュな経営マインドなのだ。
 明るく、前向きで、楽天的で、発展的で、意欲に満ちて、そしてエネルギッシュにやる経営者マインドを、徹底して経営者の頭にたたき込むために、私は 「菱研(びしけん)」 を主宰して、多くの会員に勉強の場を提供している。 (p.80)
 著者は、所長・岩崎やったろう、とモジリのエネルギッシュなマインドで名乗っていた時期もあったという。「ボクって、何だろう」 みたいなニート族が、「オレも何か、やったろう」 と思えそうで、掴みはOKである。でも今は、いくつもの中小企業を立派に軌道に乗せてしまっているから、所長名は著者名と同じで、激しく(!)マトモである。
 中小企業経営者には、プライドとメンツは邪魔であり、財務型の人間も、社員の問題点を指摘してしまうから、経営者としては相応しくないと書かれている。

 

 

【利益というのは、汗だ】
 私が神様に尋ねた。
「一生懸命やっているけれども、何でこう締めてみたら、会社の利益が出ないんですか」
「利益というのは、汗だ。汗の絶対量の分だけ利益にする。人の3倍働け。人の3倍働き、汗を流した分だけは、必ず利益にしてやる」
 人の3倍、汗を流して頑張った時は、たまたまいい客が来たり、たまたまいい商品が入ったり、計算してみたらとにかく利益が残った。利益とはそういうものであり、身になる金。身にならない金はあぶく銭。そういうふうに言われた。(p.127)
 真実が語られているのだろうけれど、汗を流すことを厭い、依頼心に凭れかかりがちな人々には、キツイ内容である。
 自分自身の生きがい論として考えるなら、以下の考え方がいい。
   《参照》   『勝つための方法』  船井幸雄・小山政彦・佐藤芳直 中経出版

               【一生懸命働くのは・・・】

 

 

【素直に言う説得性】
 素直に言う説得性。経営にも、営業にも、それが最大の武器である。(p.141)
 経営としても、宗教としても、生き方としても、素直は大いなるメリットの核心らしい。
   《参照》   『人類が生まれた秘密をあかす』 深見東州  たちばな出版

              【惟神の道 と 儒教・道教の違い】

   《参照》   『こんな恋愛論もある』 深見東州  たちばな出版

              【素直な人には良縁がどんどん舞い込む】

 

 

【日本型経営】
 マハティール首相はこうも言っている。
「欧米の企業にいいところがあったとしても、日本の企業にかなうものはない。日本企業はますますこれからも発展していくだろう。日本企業は、従業員も育てるし、会社自体を育てる。日本企業が来たところは、みんな繁栄する。日本が今少しぐらい不況だとしても、必ず日本人の叡智で乗り切っていくと私は信じている。
 日本の首相よりも洞察力が素晴らしい。マハティールさんを日本の首相にすべきじゃないかという気さえする。
 ・・・中略・・・。
 この日本古来の神道的なメンタリティというのは、世界中で日本だけのものであり、世界に誇るべきものなのである。はからずも外国人にその素晴らしさを指摘されたわけだが、・・・中略・・・ (p.163)
 複雑怪奇な国際経済の先行きを語るビジネス書を読んで困惑したら、このシンプルな 「日本的経営」 の考え方に戻ればいいのだろう。

 

<了>

 

 

     深見東州・著の読書記録