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 89年5月以来の再三読。ギルガメッシュとエンキドウの話を起点として、霊学的視点で世界史のエポックとなる人物と時代が相関的に記述されている。

 

 

【神話・伝説の意味】
 通常の歴史学で明らかにされている時代よりも、数千年溯るだけで、人間は多かれ少なかれ霊視的状態にあったことが明らかです。 (p.11)
 つまり、人間は科学的には進歩していると言えても、霊的な能力においては明らかに退化してきているのである。
 霊的能力が発達していたならば、今日のような物質文明を招来していなかったとも言いうる。
 物質界に限定された無味乾燥な目覚めの状態と、あいまいな夢を伴った無意識の眠りの状態との間にあるもう一つの意識領域を通して私たちは霊的現実の中に潜入してゆくことができます。今日、教養人が虚構の民族的空想と解釈している神話や伝説は、実際には当時の人間の霊視的な魂が物質存在の背後に見たものに基づいて語り継がれてきたものです。霊視的に見られたものが神話や童話や伝説の中に表現されているのです。太古の神聖な神話、童話、伝説の中に今日の抽象的な学問よりも多くの認識と叡智と真実を見いだすことができます。(p.11)
 神道の第一者である中西進先生の著作を読んでも、シュタイナーのこの記述と同じ視点で、古代の日本人を記述していることは明白である。現代人の狭小な五感能力の範囲内で、古代の人類を理解しようとしても虚しいことになる。
 このような視点にそって、シュタイナーは具体的な人物を挙げて記述している。

 

 

【霊的存在と共にあった】
 唯物論の時代に生きている私たちは、歴史的人物が自らの衝動と意図によって行動したと考えがちです。このような考え方は紀元前1000年から現在に至るまでの人物についてのみ当て嵌まるものです。プラトン、ソクラテス、更にタレス、ペリクレス等はまだ私たちに似た人物として理解することができます。けれども、更に時代を遡ってゆきますと、当時の人物を現代の人間との類似から理解できる可能性はなくなります。エジプト文化の偉大な導師ヘルメスやゾロアスター、モーゼ等はもう理解できません。紀元前1000年よりも過去に遡りますと、歴史上の人物の背後には霊的存在が立っており、霊的存在が彼らと共にあったということを考えに入れなければなりません。このような認識なしに歴史を理解しようとすると誤りに陥ってしまいます。(p.14)
 紀元前1000年以前、歴史に関与した人物たちは、自覚的に霊的存在と共に行動したシャーマンであったけれど、それ以降は、霊的存在の働きが消えたのではないけれど、無自覚に霊的存在と共に行動していたということになる。

 

 

【5つの文化期】
 シュタイナーはアトランティス以降を、5つの文化期に分けている。①:インド文化期、②:ペルシャ文化期、③:エジプト・バビロニア・カルディア文化期、④:ギリシャ・ラテン文化期、⑤:現在の文化期であり、時代は①と⑦、②と⑥、③と⑤が対応している。
 すなわち、現在の文化期⑤は、ゾロアスターやモーゼが霊的存在と共に働いたエジプト・バビロニア・カルディア文化期③と同じような霊的環境の時代に回帰しつつあると語っている。

 

 

【アレキサンダー大王】
 神人ギルガメッシュとエンキドウの霊視能力がバビロニア・カルディア文化期の中に聳え立っていることを記述した後、ギリシャ・ラテン文化期に位置するアレキサンダー大王のことが記述されている。
 霊的神的世界の秘密は密儀の中に保管されていました。人間の魂と神的霊的世界とのつながりを告げる太古の神聖な秘密の多くはエペソスのディアナの密儀、エペソスの神殿に保管されていました。・・・中略・・・。 ヘロストラトスが(エペソスの)アルテミスの神殿に放火した日に、偉大なアレキサンダー大王(BC356-323)が生まれたのです。アレキサンダー大王の中には、ギルガメッシュの映像が見出せます。ここには深い真理が存在します。ギルガメッシュの映像の如くアレキサンダー大王は、ギリシャ・ラテン文化期に立っています。(p.22)
 アレクサンドリアには偉大な学識者達が活躍していました。アレクサンドリアで3つの最も重要な文化の流れ、ギリシャ文化、キリスト教文化、ユダヤ・ヘブライ文化が合流したのです。・・・中略・・・。アレクサンドリアの文化が、アレキサンダー大王のように個性に霊感を吹き込まれた人物以外の手によって創設され得たと考えることはできません。 (p.24)
 シュタイナーは、アレキサンダー大王のその後(晩年)を語っていないけれど、 卓抜な神霊的能力を有する日本人の実践神道家さんは、アレクサンダー大王は日本に来て日本を守るために日本の主要な神社がある付近の○○に鎮もっていることを教えてくれている。ギリシャ・ラテン文化期のアレクサンダー大王のみならず、エジプト・バビロニア・カルディア文化期の主要な人物たちですら、先んじて日本に来ているのである。
 「○○文化の日本伝来」などと歴史学者が文献に基づいて個々に語っているよりはるか以前に、世界史の秘儀を司る文化は、神的霊性を有する人物によって直接日本に伝えられ守られてきたのである。

 

 

【若い魂】
 本来の真理への問いから人生の実際的問いが原則的に分離されるようになっています。この新たな衰退期の出発点に立っているのがイマヌエル・カントです。・・・中略・・・。実践理性においては神、自由、不死の要請は純粋に善に配列されています。理論理性においては霊的世界に参入するための認識の可能性は破壊されます。 (p.144-145)
 イマヌエル・カント(1724-1804)の中に生きていたのは若い魂なのです。・・・中略・・・。学識や今日の唯物論的学問の中に生きている人間的思考法の特質は若い魂から発しているのです。(p.45)
 若い魂とは、転生経験の少ない未熟な魂のこと。古い魂は、転生して学んだ回数の多い成熟した魂。若い魂は、霊学的な視点を欠いていると言える。今日の社会においては、魂の成熟度と社会的な業績との間に正の相関性が成り立っているとはいえない。社会の評価尺度が依然として物質側に偏っているからである。
 個人の魂について言えることは民族の魂についてもいえる。経済的に急成長し、戦争を厭わないような国の民族魂はやはり若い。
   《参照》  『惑星地球を癒す5つの魂』 ジョヤ・ポープ (徳間書店)
             【青年期の魂国家:中国】

 

 

【ゼルヴァン・アカラナ】
 ゾロアスターの教義から、また、外的な伝承から、原ペルシャ人は原神ゼルヴァン・アカラナは相対する二つの力、オルムズドとアーリマンを通して顕現するという考え方をもっていたことを皆様方は御存知のことと思います。古代ペルシャ人は人間の中に開示される事物はすべて大宇宙に由来し、大宇宙の諸現象、特に星の位置と動きは小宇宙、つまり人体と秘密に満ちた関係を有していることをはっきりと認識していました。ゾロアスターの弟子たちは無限の時間を貫いて永遠に活動する原存在ゼルヴァン・アカラナを表す象徴を黄道十二宮に見ました。(p.113)
 ゼルヴァン・アカラナの象徴が 「黄道十二宮(ゾウディアック)」 だったという記述に驚いている。20年前は全く見落としていた。
 ゼルヴァン・アカラナとは、アフラ・マズダの父であり、同時にアーリマンの父であるとされるペルシャの神。ゼルヴァンは 「時間」 の意味。
 大宇宙=小宇宙(人体)という認識はカバラの思想としてよく語られているけれど、これも元を辿ればペルシャが源流なのだろう。
 12の(大天使)アムシャスパンドは人体という小宇宙のどの部分に対応しているのでしょうか。頭から発する12の中枢神経です。12の中枢神経は大宇宙の12の力が人間の中に輝き入って発生したものであり、その12の力の輝きが人間の中で物質に凝固したものです。黄道の12の方向から12の大天使存在が働きかけ、知性をもたらすために人間の頭の中に12の光線を射し込んだと古代ペルシャの人は考えていました。(p.114-115)
 霊性を再び回復しつつある現在の文化期がもう少し進展してゆけば、ゾロアスター霊性が医学においても解明されることになるのだろう。
   《12正経:参照》  『驚異の「気能力」』  悟楽  現代書林
                 【気には「物質」「機能」「情報」の3側面がある】
 今日の生理学、天文学は、21世紀から30世紀までの間に改正されてゆくことになります。(p.118)
 天文学に関しては、霊的なものが捨て去られ外的な知に転換してしまったコペルニクスの視点よりも、背後に霊を把握していたティコ・ブラーエの考え方の中に、より多くの真実が見出せるということらしい。

 

 

  ルドルフ・シュタイナー著の読書記録

     『人間の四つの気質』

     『世界史の秘密』

     『仏陀からキリストへ』

     『第五福音書』

     『はじめてのシュタイナー』 (志賀くにみつ

 

<了>