イメージ 1

 シュタイナーの文字に目が留まり懐かしく思い購入したけれど、この本はどこまでもシュタイナー教育に関して、シュタイナーの思想を分かりやすい表現でまとめたものである。本書の横帯にポイントがそう書いてあったのだけれど、高橋巌さん著書や西川隆範さんの翻訳書のように、霊学的な視点で世界を語る手合いの著書を好んでいた学生時代の思いを引きずって読み始めたから、序盤でやや興ざめしてしまった。
 それでも、シュタイナー教育を理解するための7つのキーワードに即して書かれているから、初めての人にとっては理解しやすいだろう。

 

 

【7つのキーワード:その1:ガイスト】
 ガイスト:目に見えない世界全体のことを指していると考えればいいのです。本書では 「永遠性」 と意訳しました。大いなる存在、宇宙を支えている法則そのものとイメージしてもかまいません。  (p.66)
 この単語はシュタイナー教育に関する著作の中に頻繁に出てくる。聞きなれない単語だけれど、はじめは、分かりやすい日本語に置き換えて、脳の中に位置を与えておくことが理解を深めるポイントである。

 

 

【7つのキーワード:その2:「本当の自分 ( das Ich )」】
 人生に意味を見出せなくなると、生きていることがつまらなくなります。人生が苦痛にすらなってくるでしょう。その苦痛を隠すために、ますます欲望を求めて生きてゆくことだってあります。
 そうしてガイストから遠ざかります。ガイストと出会うことは、人類に共通した願いです。その願いが満たされないと、心が空虚になります。そしてその空虚感を埋めるために、ガイストでない別のものを求めます。目に見えないものを敬う気持ちがなくなった現代人は、目に見えるもの、具体的な物やお金で心の空虚を満たそうとします。
 ですから、「本当の自分」に気づいて、それを大切にすることはとても大事です。「本当の自分」を発見すること自体、素晴らしいことだと思います。 (p.89)
 「自分探し」 をしている人って、つまり 「本当の自分探し」 をしている人々なのであろう。
 学生時代、本当の自分を探しながらシュタイナーの本を読んでいて、印象深く記憶していることがある。仮に社会貢献できるような高度な知性を備えた青年であっても、彼の魂が求めるものが船乗りになることでしか得られないのであるならば、船乗りになるのが相応しい。そんな記述だった。このようなスタンスがシュタイナー教育の基本である。

 

 

【7つのキーワード:その3:真・善・美】
 ところで、まわりにある色や形を見るのは、目という器官です。音を聞くのは、耳という器官です。それと同じように真・善・美を感じる器官があるとしたら、それは 「本当のわたし」 であると言えるでしょう。  (p.96)

 シュタイナーが子供のために作った「晩鐘の祈り」というお祈りの言葉の中に、次のような句があります。
「美しいものに目をみはり、
 本当のものを大事にし、
 高貴なものを敬い、
 善いことをするように決断する・・・」
 人間は、真・善・美の感覚を大切にすると人生に目的を見出せるようになる、とシュタイナーは子供に伝えたかったのです。   (p.98)
 

【その他のキーワード】
その4:自由
 絶対的自由のことです。真の自由を獲得することと、永遠性(すばらしいもの)とであうことは、分けて考えることはできません。  (p.112)
その5:アストラル体
 もし人に感情(アストラル体)がなければ、生きた心地がしません。・・・(中略)・・・。もしアストラル体が不活発になれば、生きている実感が湧きません。   (p.146)
その6:エーテル体
 エーテル体を「気」と考えると、東洋人には親しみやすいと思います。・・・(中略)・・・。シュタイナーは人間を4つの部分に分けました。つまり「本当の自分」「アストラル体」「エーテル体」「肉体」です。(p.186)
その7:愛
 私たちは、愛をめぐって生きています。愛とは何かを大切に知りたがっています。シュタイナーが発案したものには、すべて愛が込められています。教育・芸術・社会活動の中に愛が表現されています。  (p.206)
 
 アストラル体やエーテル体は、神智学の用語として深い理解がなければ始まらない。著者は短くこのように書いているだけである。
 アストラルは、星々の世界という意味です。感情はいわば天から与えられたようなものだと、シュタイナーは考えました。  (p.142)
 生年月日時を用いれば、占星術によって感情面での性格は読取れるということであるけれど、地上でなされる教育が、天与のものを変えようとするならば、それほど無益なことはない。教育における画一化は無意味である。シュタイナー教育は、霊的に秀で、かつ非常に忍耐強い (=愛のある) 指導者によって営まれてこそ効果が上がるのであろう。 

 

 

<了>

 

  ルドルフ・シュタイナー著の読書記録

     『人間の四つの気質』

     『世界史の秘密』

     『仏陀からキリストへ』

     『第五福音書』

     『はじめてのシュタイナー』 志賀くにみつ