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 口語調の楽しい記述をスラスラと読み進めつつ、ゲラゲラ笑いながら、イタリア人の生活文化を知ることができる。カタカナで書かれたイタリア語の後ろに ( ) 付けで日本語が記述されているから、この本を読んだ人は、イタリア人のみならずイタリア語が好きになってしまうかもしれない。著者は1986年からイタリア在住。

 

 

【スローフード】
 カタツムリのマークがシンボルの 「スローフード」 の会が発祥したのはイタリア。1986年のことだという。「ファーストフード」 に対抗してのネーミングが、なんともユーモラス。マクドナルドが唯一人気なしの国だけある。 (p.24)
 なもんで、この本には料理に関する記述が比較的多い。その次は下ネタのアモーレ。

 

 

【新聞配達ではなく、パン配達のある国】
 新聞の配達制度はない国なのに、パンは配ってくれるのが愉快。多くの家庭が町内のパン屋と契約して、毎日、昼食事に届けてもらうのだ。(p.26)
 なんたって昼休み時間が2~3時間もある国である。わざわざ家に帰って食べるなんて、日本人にはアリエナイ世界。
 

【媚薬】
 チョコレートが 「媚薬」 と言われるのをご存じだろうか。ヨーロッパでは周知の事実。こっちのホテルのベッドの枕元に、小さなチョコがちょこんと置かれていることがあるでしょ。あれ、「お休み前に甘いものをどうぞ」 というサインにあらず。「すばらしい愛の一夜を」 の暗示が込められているのです。(p.40)
 ペルージャが首都であるウンブリア州の南方にある街テルメがヴァレンタインデーのルーツらしいけれど、イタリア人がこの日に媚薬を送る習慣はない。

 

 

【珍しい誤植】
 まさか、ひとり平均三・ニキロなど(チョコレートを)口にしないと思われる日本。食べるだろうか? 百グラムのチョコを、一年間に三十ニ個も。まさか、となってしまう。 (p.45)
 自分で書いたブログを数カ月たってから読み返すと、必ずと言っていいほど誤植をどこかに発見するけれど、大抵は誤変換か助詞の誤りが多い。販売されている書籍の誤植も大抵はこれらである。しかし、漢字の “二” がカタカナの “ニ” になっている誤植は珍しい。かなり珍奇なので書き出しておいた。チャンちゃんは閑人。

 

 

【ピピとカッカ】
 気持ちよさげにシャーシャーとピピ(オシッコ)やカッカ(フン)をする犬。(p.65)
 トワレッテ? と尋ねるより、ピピ とか カッカ と言って尋ねた方がイケテルかも・・・。

 

 

【おさかんな車中アモーレ】
 車でのエッチが多いイタリアと聞いている。恋人達の車中アモーレがおさかんなのですね。
 だいたい、この国には、日本のラブホテルのようなところが存在しない。在伊の友人がイタリア人に説明しても、なかなか分かってもらえなかったという。ある女性は、こう一蹴したそうだ。
――― ンな、アンタねぇ、ホテルでするったって・・・。エッチするのに、なんでわざわざお金を払わなきゃいけないわけ? わかんないわねー、日本人って。車でいーじゃないの、車で。タダなんだからさぁ。(p.82)
 エッチにコストをかけないイタリア(いや日本人以外)。こっちの方が原初的なのは言うまでもない。というより、日本以外の諸国家は回数が多すぎるから、いちいちお金なんか払っていたら身がもたないんでしょうに。

 

 

【幼児虐待の国、日本!】
 日本の小・中学校の夏休みが約40日間ということもなるべく告げない。だって、異常なリアクションばっかり返ってくるから。
――― ひっど~い! たったそれだけ? 幼児虐待の国なの、日本って? (p.83)
 だったら、日本人の大人なんてもっと虐待されてるじゃん。虐待されてないイタリア人のバカンスで人気の地域は、カリブ諸島のサント・ドミンゴやキューバ。タイやマレーシアの島々。アメリカならマイアミだという。ほとんどが海洋地域。

 

 

【クリスマス3連休】
 カトリックの国イタリアでは、クリスマス当日のみならず、24日のイヴ、26日の聖ステファーレの祝日となる。(p.109)
 イタリアでは贈り合うクリスマスプレゼントの数が半端ではない。

 

 

【3月8日、ミモザあふれる「女性の日」】
 アメリカの工場で、女子工員多数が焼死するという悲劇が生じた。日本のみならず、「女工哀史」 は各国にあった。・・・中略・・・、3月8日だった。時は春。ミモザの花が美しく咲き誇る季節。(p.113)
 「女性の日」 には “ミモザの小枝” を送る。もちろん男性が女性に。

 

 

【居住地の高層化はいやよ】
 アパートなど、3階、4階建てぐらいがいいところ。それ以上になると、グラッタチィエーロ(超高層の建築)などと表現。「ゾッとするね、そんなとこに住むなんて、美的にも最悪!」 と言うイタリア人がほとんどだった。(p.144)
 台湾では、頻発する台風災害から免れるために、あえて巨大な集合住宅に住むような国家政策が取られていたという。歴史的遺跡が多いイタリアは特に例外的であるけれど、東洋と西洋では景観意識によんどころない文化的理由があってかなり異なっている。

 

 

【イタリアの住宅:見せるための1室】
 部屋の数は他国と大差がないにしろ、バスルームとシャワールームは1室ずつ別々に設置されている家が多い。(p.148)
 ごくごくたまには使うのかもしれないけれど、ほとんど磨きあげたままのショールーム的な1室。常に美しさを保ち、来客に誇らしく見せたり、自らもながめては満足感にひたる。そういったスペースのようだ。(p.152)
 ショールーム化しているのはバスルーム。日本人の感覚からすれば、バカンスは長すぎるし、そんなバスルームは無駄過ぎる。同じデッドスペースでも日本の床の間の方が遥かに文化が香るではないか。

 

 

【マンマの国】
 イタリアはマンマの国。マンマがいなければイタリアじゃない。それぐらいの 「マンマ崇拝」 国だから、ほとんどの女性がマンマになることを願っている。日本女性をはるかにしのぐ母親願望の強さ、と言っていいだろう。
 でも、結婚と同様、出産の適齢期も限定したりはしない。 (p.159)
 日本より、かなり、まっとう。

 

 

【子供の有無への問いかけ】
 この国の会話には 「結婚しないの?」 がほとんど登場しない。「彼(あるいは彼女)いる?」 とは聞かれても、結婚ウンヌンの問いかけはしない。「こいつ、まだ独身なんだぜ」 の言葉もないそうだ。
 ・・・中略・・・。
 そのわりには・・・とやや首をかしげてしまう私。結婚への問いかけがないわりには、子供の有無へのクエッションがあまりに多すぎる。いったい何回言われたことだろう。
――― 子供は? エッ、いないの? どうして?
 通常、欧米ではタブーとされる質問。日本でだって同じだろう。でも、イタリア人は平然と発する。 (p.164)
 著者は何で首をかしげるの? “イタリアはマンマの国” って自分で書いてるじゃん。

 

 

【ヴェディアーモ】
 この国では実に頻繁に登場する。「様子をみよう」 とは、次のようなことを意味する。
――― 今はなにもわからないけれど、先を信じ、希望を持って待つことにしよう。世の中、決して悲観的になってはいけない。焦らず、イライラせず、ゆったりとすごそうじゃないか。(p.181)
 根っからラテン系の民族ですから、基本はどこまでもポジティブです。

 

 

【ドルチッシモ】
 「ドルチェ」 とは、お菓子の意味とともに、「優しい」 も表します。 「ドルチッシモ」 は最上級。「ものすご~く優しい」 となるのです。
 ドルチッシモなイタリア人男性に快く陥落したら、この本を手に持って、即座に日本を離れよう。イタリアは良い処だよ。バイバイ。

 

 

<了>

 

  タカコ・H・メロジー

     『アモーレの国 イタリア』

     『「チャーオ!」がいえたらイタリア人』

     『イタリアですっごく暮らしたい』