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 高村薫という女性作家の 『マークスの山』 を読んだとき、「女性がこんな小説を書けるのだろうか?」 と思っていたから、表紙の写真を見てこのブックレットを手に取ってみた。
 社会的なことも書かれているけれど、私にはやはり企業に関する記述が興味深い。

 

 

【経営能力以前に人格の問題】
高村:トップの人たちの経営意識の低さをお聞きしていると、それは経営能力以前に人格の問題だろうという気がします。
佐高:高村さんに愚痴るわけじゃないけど、わたしはそのレベルで戦っているわけですよ。高尚な理念のレベルで批判しているんじゃない。だからこっちもそれはすさんでくるわけです(笑)。 (p.22)
 この後に、住友金属工業、住友軽金属のトップたちの主導権争いに関する呆れた話が具体的に書かれている。経営意識のないことをやって莫大な無駄使いができるほどに、潤沢な資金力に恵まれた企業だったのだろう。今時の企業経営者からすれば、たいそううらやましい話なのだろう・・・などと思ったりもする。
佐高:結局日本のトップというのは、その前のトップに情緒のレベルで徹底的につきあった人がなるわけですよね。(p.25)
 かもね。

 

 

【拓銀と長銀の違い】
佐高:要するになぜ拓銀はつぶして長銀はつぶさないのかという話ですよね。それには、金丸信を思い出せばいい。金丸が脱税したときには、日債銀の債権を無記名で買って資産を隠していたわけですよね。日債銀でできることはもちろん長銀でもできる。おそらく長銀をつぶしたら似たような話が続々と出てくるからつぶせないんだろうとわたしなりには絵解きしています。案の定そのあと日債銀も国有化して売却することになりましたからね。
高村:わたくしたち一般の国民は、政治家が考えているほどバカじゃなくて、・・・中略・・・。だから長銀とか日債銀の救済劇を見ていると、これはたぶんそういうことだろうなと思う。確かな証拠がないから、もやもやとして残るほかないのですけども。 (p.33)
 何兆円もの国費を使って救済しておきながら、わずか数十億円という安値でリップルウッドに売却したという呆れた話の底には、やはりこんな話があったのだろう。
 他に金丸信は何人いることか。李登輝さんの爪の垢を煎じて飲ませてあげたいよねぇ~。
     《参照》   『最高指導者の条件』 李登輝  PHP

 

 

【山一は証券業界の日産だった】
佐高:山一という会社は証券4社の中ではとりわけ官僚化が進んでいた会社で、つまり東大閥の会社ですよね。そこで、官僚的な人間が一番牛耳っていた。 (p.56)
 官僚化が最も進んでいたという意味でなら、山一証券は証券界の日産自動車だった。日産はゴーン改革で存続したけれど、山一が破綻でけりをつけられてしまったのは資産のない金融業だからであろう。

  《ニッサン関連》    『進化する多国籍企業』 末廣昭  岩波書店
                  【タイの自動車産業が抜きん出た理由】
                『「レクサス」が一番になった理由』 ボブ・スリーヴァ 小学館
                  ■ ニッサンを危惧する(ニッサンと韓国は同じ経路をとる) ■

 

 

  高村薫・著の読書記録

     『マークスの山』

     『地を這う虫』

     『黄金を抱いて翔べ』

     『いやな時代こそ想像力を』

 

  佐高信・著の読書記録

     『新しい世界観を求めて』

     『トヨタの正体』

     『いやな時代こそ想像力を』

 

<了>