ここ何日か、スポーツチームにおける哲学について、ツラツラと書き連ねてきたが、今回は別の側面から、「伝統」というモノにフォーカスしていきたい。

先日読んだバスケ元日本代表でNBAの解説者がNBAのチームスタイルについて、面白い見解を示した。

「NBAのアメリカ東海岸のチームはスタイルもシステムも重厚。移民が最初に入った地域でヨーロッパの伝統が強い。その影響から攻守共に堅実だ」

「一方で、西海岸は開拓者精神で西部劇の世界。チームスタイルの伝統としては攻撃的でイケイケなラン&ガンを標榜としているチームが多い」

筆者もまだバスケを見るようになって日が浅いのでこうしたバスケ球団の特徴というところまでは分からなかった。しかし、これは興味深い話であった。

日本の場合、こうした伝統のあるスポーツというのは、やはりプロ野球のように見える。

巨人や阪神といったよくも悪くもFAなどでの補強やソフトバンクの重厚な強力打線。ヤクルトや楽天といった野村克也の遺伝子を継いだID野球や、昔のベイスターズの(古い話だが)マシンガン打線。

NBAでもプロ野球でも歴史のあるプロスポーツというのは何かしら「伝統」というのが存在する。

翻って、日本のサッカーはどうなのか?代表でもJクラブでも意外と伝統というのが確立されていない気がする。〈②に続く〉


①ではプロボクシングの世界戦というのが世界中から拳士が集い覇を争うイメージがあるようで、実は階級によって軽量級が強い国(日本や東南アジア)と重量級が強い国(欧米や豪州)との棲み分けができている、という話をした。

そうした中で今回のタイトルにある「宙ぶらりん」という言葉の意味は何か?という話である。

日本のボクシング界は軽量級に強いという話を①でした。しかしプロボクシングを志す拳士は必ずしも小柄な人間ばかりではない。

日本のボクシング界にも中量級や重量級でも、国内で飛び抜けて才能を持った拳士というのも稀に存在する。

「はじめの一歩」で一歩の先輩でジム頭の鷹村守がミドル級で国内・東洋太平洋では図抜けた実力があり、試合を組むにしても相手がいない状況だった。

しかし、ミドル級やスーパーウエルター級くらいで東洋No.1になっても、欧米の世界戦関係者は「どうせ東洋人など相手にならんだろ」と取り付く島もない。

そうした階級での世界戦は平気で2〜3億円くらいの予算がかかるので、日本の零細ボクシングジムでは太刀打ちできない。

大阪のグリーンツダジム所属だった赤井英和さんがスーパーライト級(63.5kg)の世界ランカーだった頃は1980年代中頃のバブル期。

関西のテレビ局もyoutubeが生まれる前の絶対的な権威で金があった時代だったから、この階級の世界王者を呼べた(結果は赤井さんのKO負け)。

90年代に入り、未曾有の大不況の上にプロボクシングというコンテンツが飽きられたら、この階級のマネーゲームに入り込む余地はなくなった。

鷹村は本来のミドル級の一個下にあたるスーパーウエルター級で世界王者になれたが、現実のプロボクシングの世界では、こうした階級で鷹村みたく「宙ぶらりん」の状態で、集中力を欠いて引退した才能の塊の拳士が何と多いことか!

昨年(2017年)、村田諒太がミドル級で世界王者になったが、あれはロンドン五輪ミドル級金メダリストという文字通り金看板があったからという、いわば「突然変異」のようなモノ。

他にこの階級で世界に絡めるのはスーパーウエルター級の亀海喜寛のような帝拳ジム(日本テレビがスポンサーのジム)の拳士がアメリカで試合するのが限界だ。

拳2つで世界への壁をこじ開けるイメージのあるプロボクシングという世界も、意外と「現金」という生々しい問題が絡んでいる世界なのである。
今回のタイトルを見た読者は「何のこっちゃ?」と思うだろうが、とりあえずご静聴して下さい。

筆者も最近は後楽園ホールからめっきり足が遠のいたが、これでも昔はボクシングを志した時期もある身だ。

このブログの読者でテレビのプロボクシング世界戦の生中継を漠然と眺めたことのある人もいるかもしれない。

実は日本のボクシング界が世界戦に絡めていける階級というのは実は少ない。

かなり前の話になるが、昨年末(2017年)にプロボクシングの世界戦が2興行で5試合組まれた。

これらはスーパーフライ級(52.1kg)とフライ級(50.8kg)、ライトフライ級(49.8kg)が2試合にミニマム級(47.6kg)と最軽量級の試合しかなかった。

断っておくが、これらの世界戦は全て成人男子の試合である。発育途上の身体を持つ中高生のユース世代でもないし、女子の世界戦でもない。

こうした階級には欧米人はあまり絡んでいかないので(ここ何年かは英仏両国の軽量級拳士もちらほら出てきたが)、世界ランキングに名を連ねるのは大概タイやフィリピンの東南アジア勢と中南米の拳士と相場は決まっている。

前にも述べたがミニマム級に関しては、もともと栄養環境の悪い頃のタイで発足したムエタイのランキングから派生してできた階級で、それを東南アジアの要望で世界タイトル統轄団体が承認した、という経緯がある。

また逆に180cm台のミドル級(72.57kg)以上になると東南アジアの選手層は極端に薄くなるので、東洋太平洋タイトルの重量級ランキングの大半はオーストラリア勢で埋まってしまう。

話が脱線してしまった。こうした状況でのプロボクシングのランキング編成というウラ話。そして今回のタイトルにある「宙ぶらりん」という言葉の意味は?全ての問いは②に繋がっていく。