①ではプロボクシングの世界戦というのが世界中から拳士が集い覇を争うイメージがあるようで、実は階級によって軽量級が強い国(日本や東南アジア)と重量級が強い国(欧米や豪州)との棲み分けができている、という話をした。

そうした中で今回のタイトルにある「宙ぶらりん」という言葉の意味は何か?という話である。

日本のボクシング界は軽量級に強いという話を①でした。しかしプロボクシングを志す拳士は必ずしも小柄な人間ばかりではない。

日本のボクシング界にも中量級や重量級でも、国内で飛び抜けて才能を持った拳士というのも稀に存在する。

「はじめの一歩」で一歩の先輩でジム頭の鷹村守がミドル級で国内・東洋太平洋では図抜けた実力があり、試合を組むにしても相手がいない状況だった。

しかし、ミドル級やスーパーウエルター級くらいで東洋No.1になっても、欧米の世界戦関係者は「どうせ東洋人など相手にならんだろ」と取り付く島もない。

そうした階級での世界戦は平気で2〜3億円くらいの予算がかかるので、日本の零細ボクシングジムでは太刀打ちできない。

大阪のグリーンツダジム所属だった赤井英和さんがスーパーライト級(63.5kg)の世界ランカーだった頃は1980年代中頃のバブル期。

関西のテレビ局もyoutubeが生まれる前の絶対的な権威で金があった時代だったから、この階級の世界王者を呼べた(結果は赤井さんのKO負け)。

90年代に入り、未曾有の大不況の上にプロボクシングというコンテンツが飽きられたら、この階級のマネーゲームに入り込む余地はなくなった。

鷹村は本来のミドル級の一個下にあたるスーパーウエルター級で世界王者になれたが、現実のプロボクシングの世界では、こうした階級で鷹村みたく「宙ぶらりん」の状態で、集中力を欠いて引退した才能の塊の拳士が何と多いことか!

昨年(2017年)、村田諒太がミドル級で世界王者になったが、あれはロンドン五輪ミドル級金メダリストという文字通り金看板があったからという、いわば「突然変異」のようなモノ。

他にこの階級で世界に絡めるのはスーパーウエルター級の亀海喜寛のような帝拳ジム(日本テレビがスポンサーのジム)の拳士がアメリカで試合するのが限界だ。

拳2つで世界への壁をこじ開けるイメージのあるプロボクシングという世界も、意外と「現金」という生々しい問題が絡んでいる世界なのである。