皆さま
毎日こうして物語を書いて
読んでいただけるということは
私にとってはとても幸せなことです。
ありがとうございます。
初めましての方は、こちらから自己紹介を兼ねた
僕の物語をお読みいただくことができます。
では、書いていきます。
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「人間不信のオウムが使命を生きる物語⑦」
前回までのお話しはこちらからご覧ください。
白いおじいさんが足音を
立てながら作業部屋に
入ってきました。
オウムは自分の部屋に戻り
眠ることもできず
ビクビクとしながら
その様子を音で聞いています。
しばらく白いおじいさんの
足音や深い呼吸の音だけが
聞こえています。
すると、突然
「なんじゃこれは!」
大きな声でした。
オウムは当然、自分で書いた
看板が見つかり
勝手に書いたことを
怒られると覚悟しました。
いや、覚悟というより
許されるなら逃げ出したい
そんな気持ちでした。
それは、なぜだか白いおじいさんに
怒られて、昔のように
酷い目に合う気がしたからです。
白いおじいさんはしばらく
その場で固まっているようでした。
何も特別な音が聞こえてきません。
荒くなった白いおじいさんの
呼吸の音だけがあたりに
広がっていきます。
その呼吸音がオウムの
緊張感をまた高めます。
その後、白いおじいさんの
ゆっくりとした足音が
段々とオウムのいる部屋に
近づいてきているようでした。
オウムは両方の羽を
広げて仰向けになりました。
もう、オウムにしたら
お手上げの状態です。
「白いおじいさん、どうにでもしてください」
オウムはそんな風に想っていました。
ゆっくりとオウムのいる部屋の
戸が開きます。
「これはお前が書いたのか?」
なぜ、白いおじいさんが
看板をオウムが書いたと
感じたのでしょうか。
実は看板にはオウムの意図しなかった
足跡が残っていたのです。
どこかで墨を踏んでしまったのでしょう。
それを見て白いおじいさんは
長い間考えて出てきた
答えでした。
オウムが書いた以外に考えられないからです。
オウムは仰向けになりながら
おそるおそる、うなずきました。
白いおじいさんは目を見開きます。
「なんと・・・」
オウムは怒られることを覚悟しました。
オウムは目をつぶります。
「素晴らしい」
オウムはハッと目を開けます。
看板にオウムが書いた
文字は実に素晴らしかったのです。
白いおじいさんのそれよりも
躍動感があり、まさか
オウムが書いたものだとは
考え付くはずもありませんでした。
それくらいに素晴らしかったのです。
オウムは唖然としていました。
「怒られない」
白いおじいさんは重たい腰を
オウムの近くに降ろして
オウムに語りかけます。
「お前はすごいオウムかもしれないな」
白いおじいさんはしみの多くなった
両手で仰向けになったオウムを
なでていました。
オウムは初めて味わう感情を
感じていました。
「この感じはいったいなんだろう?」
オウムはなでてもらいながら、
そんな風に思っていました。
そう、オウムは褒められているのです。
やりたかったことをやって
とても怖かったけど
大好きな白いおじいさんに
褒めてもらいました。
オウムは腹の底からわき上がる
「喜び」を感じているようでした。
その日からオウムは
白いおじいさんの公私ともに
立派なパートナーとなっていきます。
「そういえば、お前の名前を決めていなかったな」
白いおじいさんが思い出したように
語りかけるでもなく呟くように
そう、言いました。
【~続く~】
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この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
世の中が今よりも幸せな場所になっていきますよう
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。