皆さま
涼しくなったり暑くなったりと
中々衣替えのタイミングが
わからなくなっております。
では「道端で起きている幸せを綴る物語」の
第86作目を書いていきたいと思います。
「電車に乗れない絵美子さんが飛行機に乗れるまでに道案内をしてもらった物語④」
前回までの物語はこちらからご覧ください。
電車に乗れない絵美子さんが飛行機に乗れるまでに道案内をしてもらった物語①
電車に乗れない絵美子さんが飛行機に乗れるまでに道案内をしてもらった物語②
電車に乗れない絵美子さんが飛行機に乗れるまでに道案内をしてもらった物語③
絵美子さんは電車に乗るのが怖くなり
会社を辞めて自宅でゆっくりと
生活を始めた30歳代の女性です。
絵美子さんは電車に乗る練習を
重ねて少しずつ乗れるように
なりました。
実は絵美子さんには
会社を辞めてから
親しくなった男性がいました。
絵美子さんと男性は
段々と結婚をしたいと
想うようになりました。
絵美子さんは男性の
実家を訪れるという
話しになりましたが、
男性の実家は
遠く離れた南の方の
島にあります。
絵美子さんは必然的に
飛行機に乗らなくては
いけません。
電車が怖くなってから
同時に飛行機なんて
「絶対無理」と
絵美子さんは感じていました。
「空の上で閉塞感・・・想像しただけで」
「飛行中に意識を失ったらどうしよう」
「自分のせいで飛行中止になったら」
「多くの人に迷惑かけるのでは」
絵美子さんにとって、
飛行機に乗ることは
とても大きな壁となっています。
男性は絵美子さんからそのことを
聞いていて、
「無理しなくていい」と
言われていました。
でも、絵美子さんは
恐怖感を感じながらも
上を見ているようです。
「飛行機に乗ってみたい」
「でもやっぱり無理」
そんな気持ちが
いったりきたりしている
ようでした。
ある日、いつものように
日課にしている
散歩へと絵美子さんは
出かけていきました。
今までは気が付きませんでしたが、
近くを大きな飛行機が
音を上げて通りました。
絵美子さんは飛行機を
見上げます。
それは鉄の塊のように
見えます。
「絶対に乗れない」
「飛んでいることも不思議」
絵美子さんは恐怖感で
自分が固まりました。
絵美子さんは首を振って
散歩を続けます。
すると、以前出会った
「野菊の花」という
喫茶店の女性に
出会いました。
久方ぶりに会って
お互い挨拶を
交わします。
「少し具合でも悪いの?」
「あ、いえ。少し考え事してました」
「あら、そう」
そう言って、女性は
絵美子さんをある場所へ
連れていきたいと言って
道案内を始めました。
絵美子さんは黙って
女性についていきます。
しばらく進むと
公園に着きました。
公園は少し高台があり、
そこからは子どもたちが
遊ぶ様子が良く見えます。
女性は絵美子さんに
「子どもたちが元気良く遊んでいるわね」
と言いました。
それからしばらく
絵美子さんは縦横無尽に
駆け回る子どもたちを
見ていました。
しばらくすると
子どもたちが大きな声で
自分の夢を発表しています。
「電車の運転手になる」
「パイロットになる」
「宇宙に行きたい」
「ユーチュバーになりたい」
心の底からそう思っている
ようでした。
絵美子さんはそんな光景を
見て聞いているうちに
自然と自分の子ども時代を
投影しているようです。
小さな頃の絵美子さんは
「客室乗務員になりたい」
実はそんなことを
想っていたことを
今更ながら思い出しました。
「あー、そんな夢を語っていたな」
「それが飛行機が怖くなるなんてね」
そう感じながら
絵美子さんは小さな頃の自分の
気持ちに
想いを寄せてみました。
それは大人の絵美子さんから
してもとても純粋な純度の高い
想いでした。
その純度の高い小さい頃の
絵美子さんと
飛行機が怖いと思っている
絵美子さんとは
同一人物です。
絵美子さんが目を閉じると
その両方の想いが
漂っているようでした。
徐々にその二つの想いが
重なっていきます。
「飛行機に乗りたい」
「飛行機が怖い」
「どっちが本物の想いなんだろう?」
絵美子さんは揺れています。
小さな頃の絵美子さんに
想いを寄せた大人の絵美子さんは
小さな頃の絵美子さんの
純粋な想いを感じ取り
本来の自分を
想い出しつつありました。
そこに少しの光が見えたのです。
「あ、私は客室乗務員になりたかったんだ」
絵美子さんは頭で考えたというよりも、
腹の底から湧きあがる想いを
しっかりと感じました。
「私、飛行機に乗れる。いえ、乗ってみたい」
絵美子さんはそんな風に感じ始めました。
絵美子さんを道案内してくれた
女性は絵美子さんを微笑ましい
笑顔で暖かく見守っています。
「もう、大丈夫そうね」
女性は絵美子さんに
優しく声をかけます。
絵美子さんは女性に
お礼を言いました。
そうして、絵美子さんは
ついに飛行機に乗ることを
決めました。
親しくしている男性にも
それを伝えたのです。
男性はとても喜びました。
その時の絵美子さんにも
もちろん恐怖心はあります。
困ったら男性を始めとする
他の人を頼ろうと
そう決めていました。
そうすると、幾分気持ちが
楽になったからです。
飛行機に乗る当日、
絵美子さんは嬉しさの反面
ドキドキとしていました。
実際に空港に行った時には
緊張がピークを迎えています。
しかし、親しくなった男性との
食事や到着してからの
楽しみを話しているうちに
時間はあっという間に過ぎて
搭乗時間がやってきました。
絵美子さんはとうとう
飛行機に乗り込みました。
座席は男性にお願いして
比較的スペースのある
通路側にしてもらっています。
絵美子さんは自分に聞きます。
「どう?飛行機怖い?」
「それとも楽しみ?」
「正直言ったら両方あるわ」
「でも、楽しみのが明らかに大きい」
「だから、この飛行機旅もきっと大丈夫」
そうして、飛行機は離陸しました。
絵美子さんは空中で、
夢を見せてくれた子どもたち
公園へ道案内してくれた
女性との出会いという
偶然に感謝しました。
【終わり】
皆さまいかがでしたでしょうか。
絵美子さんは様々な気付きや
経験を経て、とうとう
飛行機に乗ることができたようです。
現在、不自由や不安を感じる人生を送っている人が
このブログを読んで少しでも新たな一歩を踏み出してくれる
きっかけになったら嬉しく思っています。
世の中には親切な人は意外といます。
そんな願いを込めて書いています。
何か生きる上でのヒントになりましたら幸いです。
皆さまよろしくお願いいたします。