皆さま
久しぶりに関東に大きな台風がきましたね。
夜通し風で家が揺れたりと怖かったです。
被害などあった方にはお見舞い申し上げます。
では「道端で起きている幸せを綴る物語」の
第57作目を書いていきたいと思います。
「夢にたどり着きたい祐一郎さんが道案内をしてもらった物語」
前回までの記事はこちらからご覧ください。
祐一郎さんは怒りの剣、哀しみの盾、喜びの兜を捨ててきました。
身軽になって女性と日本のお城を目指して歩いています。
しかし、身体にぴったりとくっついた鎧だけは
祐一郎さんには捨てる気はありません。
しばらく歩いてから女性が祐一郎さんに尋ねます。
「武器や防具を随分と脱ぎましたけど、どうですか?」
「だいぶすっきりしました。ただ・・・」
「ただ?」
「今までの怒りや哀しみの感情は落ち着いたんですが、今まで隠れていたのか不安が溢れだしてきていて困っているんです」
「あら、まあ。不安ですか」
「どうしたらいいかわからなくて」
「その鎧はそろそろかしらね」
祐一郎さんは慌てた様子で否定します。
「これだけはダメです。これだけは捨てられません」
「そんなに必要ですか?」
「これを捨てたら益々不安になります!」
「そうですかあ、じゃあ仕方ないですね」
しばらく経ったある日、祐一郎さんと女性のもとに
若い青年がやってきました。
青年は祐一郎さんを見るなり、話しかけます。
「すみません、私はこれから戦いに参加するのです。その鎧を貸してくれませんか?」
「え、この鎧ですか?いや、これはちょっと大事なもので・・・」
「緊急事態なんです。なんとかお願いできませんでしょうか?」
女性は微笑みながら祐一郎さんに声をかけます。
「緊急事態ですって、貸してあげても良いのでは?」
「人事だからってひどいなあ」
「まあ、いいじゃない。困ってるみたいだしね」
祐一郎さんの重い態度とは裏腹に、女性の話し口調はとても軽いです。
「必ず返してくださいね!」
そう言って、祐一郎さんは青年に鎧を貸しました。
祐一郎さんは久しぶりに鎧を脱いだようです。
脱いだ鎧を青年に渡す時に、「不安の鎧」と
ちらりと文字が見えました。
あれ、これは「不安の鎧」だったのかと
祐一郎さんは感じています。
そうして、とうとう鎧まで脱いだ祐一郎さんと女性は
歩き始めます。
祐一郎さんはとても身軽になりました。
すっきりしていますが、なんだかそわそわしているようです。
その日から祐一郎さんの不安な感情は少し落ち着いてきました。
祐一郎さんは「これで目的地への旅に集中できる」と
考えています。
でも、心のどこかでは「早く鎧を返しに来て」と
思っているのでした。
しかし、いくら待っても青年は鎧を返しに来ませんでした。
実は青年は鎧を返しに来ましたが、
女性がそれを断ったのです。
「その鎧、きっと高く売れると思うから売っちゃってください」
「え、良いんですか?」
「もう彼にはその鎧は必要ありませんから」
そう言うと青年は鎧を持ち帰ったのです。
祐一郎さんはそんな出来事を知る由もありません。
祐一郎さんと女性は日本のお城に向かって歩き続けます。
【~続く~】
皆さまいかがでしたでしょうか。
祐一郎さんは様々な装備と共に感情を捨てたら
隠れていた感情が溢れだしてきました。
それが不安でした。
祐一郎さんにとって一番の課題だったのでしょう。
いよいよ、不安が現れました。
それを鎧を着て守り隠しているつもりでしたが、
それは必要もなく、逆に不安を増長させているようでした。
祐一郎さんはひょんなことから鎧を貸しますが、
返しに来ても女性が断ってしまいます。
全てを祐一郎さん自身で処理できれば良いですが、
このように人の力を借りて、不可抗力だとしても
段々と人は自分らしくなっていくのかもしれません。
とうとう、完全に身軽になった祐一郎さんは
この後どうなっていくのでしょうか。
続きは次回書きたいと思います。
現在、不自由や不安を感じる人生を送っている人が
このブログを読んで少しでも新たな一歩を踏み出してくれる
きっかけになったら嬉しく思っています。
世の中には親切な人は意外といます。
そんな願いを込めて書いています。
何か生きる上でのヒントになりましたら幸いです。
皆さまよろしくお願いいたします。