ヤスユキブログ -69ページ目

ムエタイとは

僕の考えるムエタイというのは“キックボクシング”と“フィギュアスケート”を足して2で割ったような競技ではないかと思う。

会場に行くとわかる。もちろん倒し倒されの厳しい世界だが、その中に格闘技独特の殺伐とした空気が流れていないような気がする。

磨き抜かれた美しいパンチとキック。総合格闘技のように目を背けたくなるような暴力的なシーンがないのである。もちろん壮絶なKOシーンもある。しかし何かが違う。
どこか安心して見られるのだ。

格闘技というジャンルではくくれない不思議な競技ではないかと思う。

僕はそれを日本のリングで表現したい。
需要は少ないだろう。
しかし、バイオレンス性のない格闘技も魅力的なものではないだろうか。

自分は自分の道を歩きたい。

タイ修行④

タイに来て4日目にして3試合をこなした僕の身体は壊れてしまった。
立つのもやっとの状態だった。
しばらく寝たきりで過ごすつもりだったのだが、その時期はタイの正月にあたり、水掛け祭りと呼ばれる最もタイ人のテンションが上がる行事があるのだ。

僕はまた無理矢理トラックの荷台に乗せられてしまった。

荷台の真ん中にはドラム缶が積まれており、中には水が満タン入っている。

そしてその水をトラックの上から通行人めがけて思い切りかけるのだ。
いきなり後ろから不意打ちで水をかけられてもその人は怒らない。笑っている。お祭りだから。

もちろん水をかけるだけではない。
うしろから近づいてきた別のトラックから水が容赦なく襲ってくる。
併走しながら水掛け合戦になった。
ありえないぐらいデカい水鉄砲で胸を打たれた。これがかなり痛い。
そして寒い。ずぶ濡れのまま6時間以上も街を走り回った。

すでにグロッキー状態になった僕に対してもさらに猛攻は続く。
ついには横に消防車がやってきた。
ホースはもちろんこちらを向いている。

避ける時間もなく被弾した。
僕はあまりの水圧の強さに息ができなかった…

帰ってきた頃にはすでに空は真っ暗になっていた。
タイ人のテンションは最後まで上がりっぱなしだったが、僕は完璧にノックアウトされた。

次の日ばっちり風邪をひいた。
満身創痍とはこのことを言うのだろうと寝ながら思った。

帰りてぇ…

しばらくうわ言のように呟いていた。

タイ修行③

二日連続で試合をこなした僕は全身アザだらけで寺に戻った。
しばらく練習もできないなぁなんて思っていると、

“明日も試合だ!”

マジかよー

僕はまた会場へ連れて行かれた(無理矢理…泣)

到着した場所はお祭り広場で夜店が出回っていた。
ヨーヨー釣りや射的などまるで日本の昭和にタイムスリップしてきたようだった。
ただ日本の祭りと違い、広場の真ん中にはドーンとリングが立ててある…。

“今夜はこいつとやれ!”
相手はヤンチャそうな金髪のタイ人だった。
試合直前、僕は急に恐くなり足が震えた。今までこんな身体の状態でリングに上がったことがなかったからだ。

そして足を少し引きずりながらのリングイン。

1R 右ミドルを恐る恐る出してみた。相手の腕にヒットしたのだがダメージを受けたのは自分だった…。
序盤に足が使えなくなった僕は残りのラウンドをパンチのみで攻めた。すると相手もだんだん効き始め、首相撲での倒し合いでも上になり、なんと判定勝ちしてしまった。

しかし、レフェリーに腕を上げられ勝ち名乗りを受けた瞬間に吐き気が襲い、僕は勝利の余韻に浸ることなく早々とリングを降りた。

“日本に帰りてぇ…”
もうリングを見るのもイヤだった。
タイに来て4日目。僕はムエタイの洗礼を受けた。