生活保護の本 第3章2
(茶)まず、一時扶
助には被服費と言うのがあります。これは、保護開始時や長期入院・入所していた人が退院・退所した時に布団類が全くないか、使用に耐えない場合に出したり
(新規購入の場合で16,900円以内)、平常着が全くないか使用に耐えない場合に出します(12,700円以内)。また、学童服について、小学校4年に
進級する児童に対して出します(12,700円以内)。それから災害にあい、災害救助法が発動されない場合に布団類や日常着用する被服を出したりします。
それから新生児のための寝具、産着、オムツ等を用意する必要がある場合の出産準備金、常時失禁状態にある者の紙おむつ代等があります。
(彩)通常の衣服を買うのはダメなの?
(茶)通常の衣服代は、第1類の基準生活費に含まれているということでダメです。
(彩)あくまで被服費を認めるのは特別な場合ってことなんですね。
(茶)その通りです。では、次に家具什器費についてです。
(彩)それ、言葉の意味がわかんない!
(茶)家具什器とは、炊事用具、食器等のことですね。
(彩)それならわかるわ?ガスレンジとかでもいいの?
(茶)具体的には、
ガスレンジ、冷蔵庫、炊飯器、電気ポット、なべ、フライパン、食器とかはOKです。でも、これが認められるのは保護開始時に家具什器の持ち合わせがないと
か、災害にあい、災害救助法が適用されない場合、転居した場合で新旧住宅の設備の違いにより、家具什器を補填しなくちゃいけない場合に限りますね。
(彩)普通にガスレンジとか使っていて壊れたからといって、お金が出るわけじゃないのね。
(茶)次に移送費について話そうね。移送費というのは、人が移動するためのお金とか引越しのお金なんだよ。医療機関にかかるための交通費は医療移送費って言うけど、医療機関以外への交通費ってとこだね。後で話す生業費にも移送費用はあるけどね。それはまた後でね。
(彩)移送費ってどういう場合に認められるの?
(茶)すべて例示は
しないけど、例えば、保護を要する人を遠隔地の保護施設に移送する場合、福祉事務所の指導により年金などの他法による給付の手続き、施設入所手続き、就職
手続き、検診などのためにそうした施設等へ出向いた時、三親等以内の血族、二親等以内の姻族の遺骨などを引き取りに行ったり、葬儀に参列したりする場合、
転居する場合などだね。それからアルコール中毒患者が断酒会に参加したりする場合などだね。
(彩)詳しく知りたい場合はどうしたらいいのかな?
(茶)生活保護の関
連の通達をまとめた生活保護手帳というものが出版されていて、細かく書いてるので、詳しいことを知りたい人はネットで買うといいですね。Yahoo!オー
クションとかで安く買えるし。この生活保護手帳がケースワーカーがお仕事する上でのバイブルとなってるんだよ。今まで説明してきたことも全部、この生活保
護手帳に書いてあることなんだ。
(彩)ちなみに新品のお値段は?
(茶)確か2500円だったね。では、次に入学準備金について、お話します。これは小学校入学時に39,500円以内、中学校入学時に46,100円以内で認定します。うちの事務所の場合は、電算で3月に自動的にこの金額が出るようにしています。
(彩)やっぱり、ランドセルとか制服とかがいるから、こういうのって必要よね。
(茶)ちなみに学校を転校する場合とかは入学時でなくても出せます。これは一律に出すのではなく、購入リスト等の提出を求めてなどして、必要な額を確認しないといけないけどね。
(彩)転校する場合でも出るのね。
(茶)次に家財保管
料についてです。医療機関、介護老人保健施設、職業能力開発校、社会福祉施設などに入院、入所している単身の被生活保護者がやむを得ない事情で家財を自分
の家以外で保管してもらう必要がある場合、原則、入院入所後、1年間を限度として月額13,000円の額を認定できるんだよ。ただし、明らかに入院または
入所後、1年以上の入院や入所が必要とする者はダメだけどね。
(彩)どうして1年以上、入院とかしてたら、出しちゃいけないの?
(茶)そういう人は、次の家財処分料で家財を処分しなさいってことなんだろうね。家財処分料は入院入所見込み期間が6ヶ月を超える人で家財の処分が必要な人に対して出すものなんだけど、敷金の返還金や親族からの援助などで十分賄えない場合に出すんだよ。
(彩)どうして6ヶ月以上の入院入所の人に家財処分をさせちゃうの?
(茶)入院入所して
る人に家賃を出せるのは6ヶ月までなんだよ。まあ、6ヶ月以内で退院退所できそうな人には6ヶ月家賃を出すんだけど、病状が悪化して当初、6ヶ月以内に退
院できる見込みだった人がちょっと、伸びてしまったという場合は、確実にあと、3ヶ月以内に退院できるならば3ヶ月延長できるんだけどね。
(彩)長くは、住宅費も家財保管料も出さないってとこなのね。
(茶)必要最小限が生活保護の基準だから、9ヶ月以上入院入所してるのなら、もう、家に戻ることはないだろうという考えみたいだね。万一、退所してきた時は、敷金出してあげるし、家具什器費も出してあげるから、それでやりなさいということだね。
(彩)極めてドライなのね。思い出の品物とかもいっぱいあるでしょうに!
(茶)ま、お国の言うことだから、我々は逆らえないしね。それでは、次に住宅維持費の説明に移りたいと思います。住宅維持費とは、被保護者が現在、住んでいる家の畳や建具、水道設備、配電設備などの住宅に付属した設備の修理や家屋の補修や維持をするための費用です。
(彩)何かわかりにくいわね。
(茶)具体的には、畳替え、ふすまや障子の張替え、水道の水漏れの修理、お風呂の浴槽や風呂がまの修理、雨漏りの補修などに使う費用だね。
(彩)自分の家でも借家でもできるの?
(茶)そうだね。借家の場合は、契約で自己負担となっている部分についての修理になるね。
(彩)何か決まりはあるの?
(茶)住宅維持だか
ら、現状維持が原則だね。例えば、畳の部屋をフローリングにするなんてのはダメだね。でも、風呂が初めからないとかトイレが無いとか、網戸がないなどと
いった場合は、新設を認めているよ。それから変ったところでは、シロアリが出た場合、シロアリ駆除費用を認めている。認めないと、家が倒壊しちゃう可能性
があるからね。ちなみに24年度の限度額は118,000円までとなっています。これは、過去一年間でこれだけの額までとなっています。具体的にいうと、
24年の1月に畳替えで住宅維持費を7万円もらったとします。同年12月に雨漏りがするので、10万円の住宅維持費の申請をしたとしても12月時点では残
額が4万8000円しかないので、全額認められることはありません。1月以降に申請をすると限度額が11万8000円に戻るので、その時点だと全額認めら
れることになるのです。
(彩)でも、緊急性がある場合はどうするの?
(茶)やむを得ない事情があると認められる時は、特別基準といって、限度額の1.5倍の基準まで認定できる場合もあります。それから災害の場合はすでに認定した住宅維持費に関わりなく認められるんだよ。
(彩)そこらへんは考えてくれてるのね。
(茶)さて、次に出
産費について説明します。細かい認定額は言いませんが、出産費は金額的には、通常の病院で産む最低限の費用は出ます。出産費は医療扶助ではないので、非保
護者に対して出ます。なお、母子世帯や単身の女性が妊娠した場合は、原則、相手の男に出してもらえってことで出産費を出さない場合もあります。
(彩)母子世帯で妊娠なんて、おかしいわね。内縁の夫がいるって思われて当たり前じゃない?
(茶)昔は、母子家庭の母が妊娠したら、即、母子加算を削除してたんだけど、最近は相手の男性が一緒に住んでない限りは、母子加算を落とさない傾向にあります。理由は、恋人がいたからといって、子供の養育に当たるわけではないからです。内縁関係があれば、別ですけど。
(彩)なんか腑に落ちないですね。
(茶)その通り、そもそも母子加算なんて必要ない制度とも言えるしね。以前、自民党政権の時になくなったこともあるんだよ。民主党から自民党政権になったから母子加算は、なくなるのでは、ないかな?まあ、それは置いといて、次に生業扶助について述べたいと思います。
(彩)生業扶助ってなあに?
(茶)
生業費と技能習得費と就職支度金の3つがあるんだよ。まず、生業費だけど、これは小さな規模の事業を営むために必要な資金を出すというものなんだけど、実
際、ワタシはコレは出したことないなあ。この基準額は45,000円以内だから、これじゃ、事業なんかできないしね。
(彩)昔の行商とかが対象なんでしょうね。
(茶)
技能習得費についてだけど、この中には技能習得費と高校学校等就学費があるんだよ。技能習得費については、代表的なのがヘルパー資格の受講料なんかだね。
技能習得費の基準額は73,000円以内だよ。高等学校就学費は基本額として月額5,300円、学習支援費として月額5,010円が毎月支給されてるん
だ。その他に教材代、授業料、入学料及び入学考査料、通学のための交通費なども支給されます。
(彩)授業料とかは高校授業料の無償化で払われてないんでしょう。
(茶)基本的にはそうだね。でも、今後、無償化の見直しが行われるんじゃないかな?
(彩)就職支度金ってどんな感じなの?
(茶)
就職が決まった人に対して、就職するに当たって必要となるスーツなどの洋服代や靴なんかの購入費用に充てるのに必要な額を認定するんだよ。基準額は
28,000円以内です。なお、アルバイトとかじゃなくてちゃんと就職しているのが用件となるから、内定通知書とかで確認をしてるんだよ。
(彩)へえ、バイトじゃだめなんだ。
(茶)
では、次に葬祭費について説明します。葬祭扶助というのは、生活保護を受けている人が死んだら葬式代を支給するというイメージを持っている人が多いんだけ
ど、実際には葬儀を行う人が生活に困っているかどうかで判断されます。具体的に言うと、生活保護をもらっていた単身の老人が亡くなって、その長男が葬式代
を出してくれと言って申請しても、長男に葬儀をまかなうだけの預貯金があったりすると、出すべきじゃないんですね。でも、身寄りのないお年寄りが亡くなっ
て、仕方なく民生委員が個人的に葬祭を行った場合とかは、縁故関係がないので、葬祭扶助を出せます。葬祭扶助の金額については、1級地、2級地が大人で
201,000円以内、3級地が大人で175,900円以内なんだけど、ドライアイス代とか死体検案費用とか火葬料、死体運搬料とかで上乗せできる金額が
あるから、はっきりとは言えません。概ね、20万円から25万円と思っているといいと思います。
生活保護を受けた場合のデメリット・・・省略