生活保護の本第2章4 | 茶々丸的生活

生活保護の本第2章4

高齢者ケース① 

(申請書及び添付書類に記載された内容)

 

世帯の構成

(世帯主)A男さん(昭和16年4月4日生 申請時70歳)

(妻)  B子さん(昭和17年5月3日生 申請時69歳)

世帯の収入については、世帯主の厚生老齢年金(月額38,066円)、国民老齢基礎年金(月額29,400円)のみ

居住している家屋、土地については、世帯主名義である。

申請理由については、65歳で仕事を止めた後は、退職金で生活をしてきたが、それが尽きてしまったためとのこと。

(生活しているところ)3級地の2

(生活歴)

(世帯主)S16年4・4、(亡父)C男、(亡母)D子の次男として、○○市にて出生、中学校を卒業後、集団就職で大阪市に行き、山田工業所にて9年、就労する。その後、××商店にて3年間、配達の仕事をする。3年ほど、日雇いをした後、△△鉄工所に7年間勤務する。1年ほど、日雇い仕事をしたが、腰痛がひどくなり、S54.12・4より○○市にて生活保護を受給、H3・6.1付で▲▲工業に就労開始したため、廃止、▲▲工業では10年ほど就労した。以後は日雇いにて生活するも、仕事がなくなり、H11.5.1生活保護申請。

(妻)S17・5・3、(亡父)E男、(亡母)F子の長女として、○○市にて出生、中学校を卒業後、○▲商店にて10年就労した後、(前夫)G男と結婚、なお、夫は日雇い仕事をしていた。13年連れ添ったが、G男の酒癖の悪さから離婚、以後は、アルバイトにて就労する。A男とはS57年に結婚、結婚後は専業主婦をしていた。

なお、A男、B子ともに子供はいない。

 

(茶)この世帯について、先ほどの①年金の受給についてはどうか?②扶養義務者の状況は?③預貯金及び現在の所持金はどうか?④生命保険の加入状況はどうか?⑤不動産・自動車等の資産はどうか?⑥介護保険の保険料、介護認定、介護の状況はどうか?⑦医療費はどうか?ということを考えていったら、生活保護が必要かどうかが判断できるんだよ。さっきと重複するけど、ひと通り、再度説明していこうね。

(彩)①については、世帯主の厚生老齢年金(月額38,066円)、国民老齢基礎年金(月額29,400円)の合計67,466円だけね。

(茶)奥さんはもらってないということだけど、一応、調査しなくちゃいけないんだよ。年金事務所に行って、B子さんの厚生年金加入期間、国民年金の加入期間を調べなくちゃあね。その場合、Aさんとの婚姻期間がわかるものとして、戸籍謄本、(前夫)G男さんの戸籍謄本をとって、婚姻の期間を明らかにした上で調査しないといけないんだ。

(彩)どうして、戸籍謄本がいるの?

(茶)配偶者が厚生年金に入っている期間は、昭和61年4月以降、国民年金の第3号被保険者というのに該当して、保険料を払って加入している扱いになるからだよ。それ以前は、カラ期間といって、保険料は払ってないけど、加入していることになるんだ。他にも、生活保護を受けている期間や刑務所に入っている期間が保険料を払わなくていい法定免除期間になったり、保険料を払うのが難しい人が申請すれば、申請免除といってお金を全額払わなくても加入していることになる制度もあるんだよ。申請免除は遡及しないけど、生活保護歴がある人は、生活保護を受けていたという照明があれば、遡及して手続きできるから、こうしたことも検討して年金をもらう資格があるかどうかを調べないといけないんだ。年金事務所の人もその人の生活歴を知っているわけじゃないから、そこまで細かく教えてくれないので、ケースワーカーが注意しないとダメなんだよ。

(彩)そこまでしないといけないのは大変だね。

(茶)ううん、こうやって調べるんだと機械的に覚えとけばいいだけだよ。

(彩)②扶養義務者の状況については?

(茶)親、兄弟姉妹、子供について、扶養義務照会と言って、『この世帯に扶養できませんか?』と照会するんだけど、実際のところ、扶養してくれる人がいる場合には、申請をしてこないんだよね。だから、ほとんどが『扶養できません』という回答ばかりだね。様子を見たり、電話をかけたりするという精神的な援助はしてくれるけど、お金まではなかなかね。

(彩)扶養義務者については、所得を調べたりするの?

(茶)基本的にはそこまではしないよね。ただ、明らかに扶養する能力がある人については、所得証明を取って判断することも必要だとは思うよ。例えば、医者の息子がいるとかだったら、生活保護なんて必要ないだろうしね。

(彩)そりゃそうだね(笑)。③預貯金、所持金についてはどうなの?

(茶)申請時点での預貯金について、各金融機関に問い合わせをして、口座があったものについては、最近の出入状況を調べたりするよ。直前に大金を降ろしたりする悪質な事例もあることだしね。所持金については、申告してもらうだけだね。財布の中身のチェックまではしていません。

(彩)生命保険の加入状況調査については?

(茶)調査して、解約返戻金があれば、基本的には解約してしばらくの間、生活してもらうことになるね。解約返戻金がない掛け捨ての保険とかの場合だったら生活に支障がなければ保有を認めることもあるよ。でも、入院の時に給付金が出る保険とかだったら、保険金をもらったら収入があったものとして、認定するので、その分、生活保護費が減るから掛けるだけ損になるんだけどね。

(彩)預貯金とか生命保険の調査って、すぐ回答は来るの?

(茶)1ヶ月以上かかる場合もあるんだよね。全部が返ってくるまで待っていたら、本当に困っている人の場合、下手すると死んじゃうから、ある程度が返ってきたら、保護を適用するかどうかを判断しているね。生活保護は基本的には2週間以内に適否を判断するんだけど、そうした調査の遅れからそれ以上かかる場合が多いね。1ヶ月以上経って判断が下されない場合、申請者は却下されたとみなすことができるんだよ。

(彩)⑤不動産・自動車等の資産については?

(茶)不動産については、基本的には市の福祉事務所では、自分のところの税務関係部署でわかるし、県の福祉事務所では町村の政務関係部署に聞くとわかるよ。でも、住んでいる市町村以外に不動産を持っていたらわからないだろうね。自動車については、軽自動車については同じく市町村の税無関係部署でわかります。普通自動車については、陸運事務所や県の税務関係事務所でわかるはずなんだけど、そこまでの調査協力はしてもらっていないのが実情です。

(彩)大人の事情ってやつなの?

(茶)最近は、個人情報うんぬんがうるさいからね。ナンバーがわかってたりすると陸運事務所の方で調査はできるんだけどね。

(彩)⑥介護保険の保険料、介護認定、介護の状況については?

(茶)保険料については、介護保険の広域連合、単独で介護保険をやってる市町村に聞けばわかります。介護認定については、介護保険証を見たらどの程度がわかるし、介護の状況については担当ケアマネージャーに聞けばOKです。

(彩)⑦医療費については?

(茶)通院している医者に聞いたらわかるし、市町村の国民健康保険、後期高齢者保険担当部署に聞いたら、その世帯の最大にかかる医療費はわかるよ。⑥、⑦については、医療費等の自己負担=本人支払額が出る場合、詳しく調べないと生活保護の要否判定ができないけど、本人支払額が出ない場合は、保護開始なので、金額までは調べる必要がありません。

(彩)この世帯は生活保護に該当したの?

(茶)預金や生命保険、資産もなかったし、誰も援助してくれる人もいなかった。年金収入も最低生活費を下回っていたから開始になったよ。奥さんの年金については、調べたけど、受給資格は無かったね。

(彩)こういう世帯は仕方ないよね。

(茶)うん、仕方ない。死ぬまで生活保護を受けるしかないだろうね。しかし、老後のことを考えないで、年金や貯蓄もしないで生活をしてきたんだから、仕方ないで片付けられない面はあるよね。

(彩)最近は不況で年金を掛けない人も多いというから、将来的にはもっと生活保護って増えるかもしれないね。

(茶)そうした問題については、後でじっくり話すことにします。では、次に高齢世帯の事例②に移りたいと思います。