能楽苦手だった私が能楽部所属しつづけた結果2 苦手意識 | 「育児書にない!」~ASD母子の育児&お勉強&歴史の授業~

「育児書にない!」~ASD母子の育児&お勉強&歴史の授業~

ASD(自閉症スペクトラム)当事者で、娘もASDである、元社会科塾講師のセザール=れくす、が描く、「ASDのお子さん向けの受験勉強についてのブログです。
育児についての話や不登校の娘への対応の話、自分自身の生き方についても語ります。

みなさま、昨日もありがとうございました。

毎週水曜日は、私の能楽部思い出シリーズ♪

前回は能楽部に入る動機について
お話ししましたが、
今回は入部した直後から夏休みの発表会後の
一回目の退部決意の話です。






私は、趣味づくり&友達づくり
の目的で能楽部に入部しました。


しかし、自分以外の部員さんは

高校のときの社会科選択が日本史の人が
ほとんどで、世界史選択をしていた人も
日本史について詳しい人でした。




能楽というと、
ただ綺麗な人や鬼が登場する、
というイメージですが、
そのキャラたちも
歴史人物だったり
神話や宗教、
古典文学の登場人物、
ばかりです。
そして、日本古来の価値観だったり
伝説、がベースになっています。





国語や社会で習った内容が
舞台になっているなです。


つまり、能楽とは
「日本のあらゆるものがぎゅっと
詰まったもの」
とも言えるので

「能楽を知れば日本が理解できる」

と言っても過言ではないのです。


これは、日本史や国語を教えるとき、
非常に役立ちます。


なぜこのような行動を
登場人物や歴史人物を
おこすのか?

もわかるし、

古典文学、たとえば、
「源氏物語」についても
詳しくわかるし、
「源氏物語」について後世の人々が
どう捉えていたか?も
垣間見できます。

垣間見文学の垣間見~♪


でも上記のことは、
今だから言えることで
当時の私にはサッパリ、ちんぷんかんぷん。



私は、源頼朝が中学のころから好きだった。
その理由は、
幕府という、従来の価値観(貴族が政治も権力も文化もすべて担う)とは違った
政治的権力を作り出した人であること、
たとえ血のつながった弟であろうが
未来のビジョンの妨げになるなら
容赦なく切り捨てる、
という人物だからです。

人を殺すのが良い、とか、ではないです。


「血の繋がっているから何でも許す」

が苦手なだけです。


平家や源義経の素晴らしさは
理解できるんです。

でも、どうして、
能楽では、
平家や義経関連の能楽はあるのに、
源頼朝メインのものはないのだろう、
とか思ってしまって、
それが大学1年の入部時は
辛かったんです。
(今なら理由はわかります。)


また、日本神話について、ある程度は
知っていたけれど、
当時は「古事記」も「日本書紀」も
読んだことがなく、
また、古代中国の陰陽五行説も
聖獣たちも神も知らなかった。
仏教についても。

なので、能楽の謡本(いわゆる台本、楽譜)を
読んでも、その行間が読みこなせなかった。


しかし、他の同級生たちは
「源氏物語」を全巻読みこなしてたり
すごく知識が豊富だったので、

たとえば、
「春日龍神(かすがりゅうじん)」
「猿沢池(さるさわのいけ)」というだけで
それが何を意味しているのか?
猿沢池がどこにあり、
その周辺に何があるのか?
その周辺にあるものは歴史的に
どんな意味があるのか?
がわかってしまったり、

「鞍馬天狗(くらまてんぐ)」
「安宅(あたか)」というのを聞いただけで
関連する人物の「牛若丸」「義経&弁慶」が
すぐ出てくる。

でも私は無理だった。えーん

それくらい無知だった。





また、能の装束(衣装)も扇の柄も
当時は何が良いのか、わからなかった。



今だと、日本の絵の特徴は
記号美、形式美なんです。





漫画でも、実際の目や鼻の形とは
違うのに、慣れてくると、
それが目や鼻とわかるし、
自分の好みや、美しい形がどれか、
わかってきます。
ゆるキャラもそう。
およそ、熊とは違うのに
リラックマはかわいい。

すみっコぐらしのキャラも
最初は知らないと正体わからない
とんかつ、もかわいいし、引き付けられる。

似絵も浮世絵も、そのまま人物を
写し取らないで
その人物をとらえ、記号化します。

そのように、
日本の美は
記号化の美、
形式を知ると美しさがわかる美
とも言ってもよいかもしれません。

あくまで私論ですが。アセアセ


それについてわかったのは、

西洋美術史が好きになったので
それを調べていくうちに
気がついたことで
当時はわかりませんでした。

ジャポニズムから気がつきました。


とにかく、大学入学時は

私の頭の思考は、
生まれつき西洋、欧米的、であったことを
自覚してなかったため、
生まれついて自然に日本の思考や美意識が
なかった。

そして、知識もなかった。


よって、
能楽に対して

「わからない」
「価値が見いだせない」

で、すごく困りました。えーんえーんえーんえーんえーん


さらに、困ったのは
自分が左利きであったこと。


扇を開ける動作がどうしてもできない。

他の新入生はできるのに、
自分だけどれだけやってもできない。


だけど、先輩や先生も
「自然に何も考えずにやればいいよ」
とか
「フツーにやればいいよ」
とアドバイス。

私も右利きだったら、同じアドバイスを
してたと思います。

私は、すごく緊張し、扇だけでなく
全体、力を入れすぎてガチガチだったので、
「力を抜けば扇を開けること
できるだろう」
と思われるのは当然。


いっそ、部活のみなさんが
小学校の先生のように怒ったり
小学校の同級生のようにあからさまに
バカにした発言をしていたら、
憎むこともできたし、
その瞬間、バスケ部のときのように
何の迷いもなく退部したでしょう。



でもね、みんな、優しかったんですよ。

心の底では
「なんでそんな簡単レベルのもが
できないねん!」と
ツッコミをしてたのかもしれませんが

それを表に出さない優しい配慮。

とにかく、できるようにしてあげたい!
という心が感じられした。

でも、それにより、
自分がすごく恥ずかしい存在に
感じてもしまったんです。


「ここまで優しく、何度も教えてくれたのに
自分はできなくて申し訳ない」
という罪悪感でいっぱいだったんです。

それで泣いてしまったことも
ありました。

もう恥ずかしさと罪悪感でいっぱい。

他の子が楽々開ける扇を扱えない私が
なんで能楽部にいるんだろう、
とずっとモヤモヤしてて、やめようと
思いました。

初めて練習した演目は
仕舞の「熊野(ゆや)」というものでしたが、
当時はその「熊野」の内容が意味している
「(一部の女性は別として)
女性に発言権がなかった時代に
舞う、うたう、という手段は
唯一、女性が自分の要求を
伝えられる手段とも言える」
ということも知らず、調べようともせず
ただただ、謡本の言葉をそのまま言葉に出し、
言われた通りの動きをしようとした、
だけでした。


そのあと、
8月の発表会で
新入生が舞うことができる演目から
やりたいものを選ぶ日がありました。
(能の中で仕舞という数分だけ
舞う舞台があり、それは基本的に
一人が舞って、数人が謡う、という形式。
部員全員が仕舞を1演目ごとに舞い、
残りのメンバーでどの演目を謡うか?を
割り振る)


私は舞っている途中で扇を開けるのだけは
絶対に嫌だったので、
舞うのを始める前に扇を開いておくものか
扇を開かない演目にしよう、と
心に決めていて、4年間、ほぼ
扇を演目中に開かないものを演じました。

演目の内容は扇を開かない、開いてから始める、途中で開ける、という三種類があり、
扇を途中で開けるものは優美なものが多く、
開かないものは雄々しいものか多かったので
私は雄々しくて強い舞ばかりやってたなぁ、と
今さら思います。


…と、話を戻しまして、
もう、
能楽の楽しさや素晴らしさがわからない、
扇を扱うのも苦手、
所作(しょしゃ)もきれいに動けない、

ので、私は精神的にキツくなりました。

同期生も先輩もみんな良い人で好きだったけど
みんなは能楽好きだし、
扇をうまく開けることできるし、
女性らしい所作はできるし、
女性として生きることに苦痛はなさそうな感じの人が多くて、
なんとなく、隔たりを自分で感じてました。

(実際には、みんなそれぞれ悩んでいることは
あったと思いますが…)


それで、8月の発表会が終わった後に
辞めることを言おう、と思いました。


そして、その日がやってきました。


そしたら、私が言おう、とした瞬間、
別の子が「退部したいです」と発言。


「えええええー!
それ、私のセリフやーん!
うわーん!」

と心の中で叫ぶ私。えーん



さすがに、そのとき、
「私も!」
とは言いづらかった。


バスケ部のときみたいに
たくさん部員がいるところなら
躊躇わず言ったでしょう。


でも当時の能楽部は、
各学年で1人から数名。
そして1年生が私を含めて4人。

舞台に出るのに、
最低、人数が必要なので。
そうなると、私がやめると、
かなりキツキツです。


なので、
今すぐ辞めるとは言いづらくなりました。

せめて、一年のうちは続けて、
二年生になった機会に、辞める旨を伝えよう。
そうしたら、次の新入生が入るだろうから
痛手も少ないかも?と。

ただ、予想だにしてなかった新入部員が!

それにより、退部する旨を
言えなくなるんですが…。
ただ、その、ある人、というのが、
実は…!


また来週の水曜日に更新したいと
思います。

長文ありがとうございました。