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<変態>の時代

学術用語であった「変態」が、流行語となり、政府の弾圧の
対象になっていく過程を論じる。

オナニーも「変態」としてとられて、あらゆる病気の元凶とされる
一方で、擁護者も現れ、スイスの精神病学者フォーレルの
「性慾研究」(大正4年)ではそれを「救急手淫」と呼んでいる。
(72-75)

大正・昭和初期の猟奇事件もいくつか紹介されている。
小口末吉事件。マゾの妻の求めに応じて行く内にその妻が死に至る。
谷口富士郎事件。SMプレイの秘密を知られた老婆を弟と殺害。
発覚を恐れて弟も殺害。それを目撃した別の弟は精神業に仕立てて
松沢病院に送り込む!
増淵事件。愛人を殺害後、乳房陰部などをくり抜く。頭髪付きの頭皮を
自らかぶり、被害者の衣服を身につけた上で自殺。ポケットには被害者の
眼球と耳が入っていた。
車次久一事件。同性愛売春の売れっ子で、恋人の浮気に腹を立て殺害。
首をかめに入れて保存し、一年間持ち歩く。
(127-128)

そしてご存知阿部定事件(昭和11年)。しかし暗い時代に突入しつつある
中であったため「一服の清涼剤」とまでいわれる。
その機運は時代を追うごとに強まっていく。

すなわちグロテスクは「『健常』社会の裏にある異常なものを明るみに出すことに
よって、『健常』幻想を破壊し、その欺瞞性を暴露することができるのです。たとえば
戦争の残虐さや戦場での強姦や捕虜の処刑など、表ざたにされない事実を
つきつけます」(170)
性地獄や戦場の残虐を掲げるグロテスク嗜好と対置されるのが、軍国美談と
聖戦論です。汚いもの見たくないものを排除し美化する言説が隆盛する時代に、
変態は対峙していました」(170)

東映エログロ映画を数多く送りだした岡田茂や天尾完治、石井輝男は、本能的に
上記の引用箇所を理解していたのであろう。

【書物としてGOOD】 2005年

菅野 聡美
〈変態〉の時代 講談社現代新書

企業買収の焦点

この手の新書では最もよい。
「第4章 M&Aと財務理論」を除いて平易で整理されている。

垂直統合(川上と川下を統合。只今実施中の信越化学による三益半導体のTOBが
これにあたろうか)・水平統合(去年でいえば第一製薬と三共製薬の合併)、
これらとは別に80年代の米国のM&Aブーム時に流行ったのが「分散化理論」に
よる統合。まるで無関係の業態を組むことでリスクを回避しようというもの。

さて巷の話題をかっさらうライブドアは、「ネットとの融合」「シナジー」を標榜しては
いたが結局は図らずも「分散化」で終わるのか。

【通勤用にGOOD】 2005年

中村 聡一
企業買収の焦点―M&Aが日本を動かす

あの戦争は何だったのか

日本は日清・日露とちゃんと戦争に勝っているのであるから、立派な軍隊を持って
いたのは間違いなかろう。
では、その立派な軍隊がいつからインパール作戦をやるような へなちょこな軍隊と
なったのか?

本書のテーマはこれであろうか。

参謀本部の情報部にいた堀栄三-アメリカの株式市況などから米軍が次にどこを
攻めてくるかを次々予想・的中させていた-など、優秀な人材がとことん無視され
閑職にまわされた、その手のエピソードが随所にあり興味深い。

戦争そのものの賛否、太平洋戦争の賛否、いろいろとあろうけれども、軍部が
天皇がものを言わないのをいいことに統帥権をたてに、合理性を捨てて、神話に基づく
精神論でもって戦争した結果が敗戦であったこと、それが昭和12年を起点としている
ことは、各人、きちんと整理しておく必要があろうかと思う。

【話のネタ本にGOOD】 2005年

保阪 正康
あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書

現代建築の冒険

副題に「『形』で考える - 日本1930~2000」。
その副題通りにカタチで建築物をとらえて、門外漢にも入り込みやすい。
それでいて建築史をちゃんとフォローもされている(と思われる)。

ここにおけるカタチとは側面・正対からの視点であるが、俯瞰からの
視点によるカタチ-東京拘置所など-による建築史もお願いしたいところ。

【通勤用にGOOD】 2003年

越後島 研一
現代建築の冒険―「形」で考える 日本1930~2000

お寿司、地球を廻る

ニューヨークで最初の寿司屋を開業した著者による。

写真が少ないなど、魅力に欠ける。

【車窓からの眺めの方がマシ】 2002年
松本 紘宇
お寿司、地球を廻る

映画は予告篇が面白い

予告篇ディレクターによる業界案内。
著者がディレクターでありながら競合相手の他のディレクターの
紹介をしている。

表面的でいまひとつ。

一時期この著者はTVなどでも紹介されていて、やはり映像制作だけに
映像での紹介のほうがよいということになる。

【車窓からの眺めの方がマシ】 2002年

池ノ辺 直子
映画は予告篇が面白い

ユダヤ人とローマ帝国

ヤハヴェのみに従い皇帝に服従せず、野蛮な「割礼」を行うユダヤ人は
ローマ帝国においても迫害された。

それにくわえて
「(イエス・キリストの処刑の責任はローマ側にあるにもかかわらず)
紀元一世紀の中頃には、イエスの処刑責任をユダヤ人だけに
帰そうとする考え方がはっきりと打ち出され、それが新約聖書の
発展的成立の中で、不動の地位を築いていくのである。
つまり<<キリスト殺し>>はローマ支配を飛び越えてユダヤ人だけの
責任に転嫁されてしまう。この責任転嫁のため、福音書には多くの
事実無根の記述が挿入されたといわれる。」(133)

そのキリスト教がヨーロッパ全域に行き渡るわけであるから、ユダヤ人は
たまったものではない運命を辿ることとなる。

【通勤用にGOOD】 2001年

大沢 武男
ユダヤ人とローマ帝国

新宗教と巨大建築

なぜ前近代の宗教建築は賞賛され、近代以降の教殿は
いかがわしいまなざしで見られるのか。

丹下健三による代々木競技場によく似た大石寺正本堂はなぜ評価されないのか。

 
     代々木競技場(左)と大石寺正本堂

手の込んだ装飾の仏教寺院は賞賛され、手の込んだ新宗教の建築物は
批判される。(宗教学者井上順孝の指摘)

こうした疑問をベースに天理教(この場合は街作り)、大本教、PL教団などの
新宗教建築史を展開している。

【話のネタ本にGOOD】 2001年

五十嵐 太郎
新宗教と巨大建築

昔、革命的だったお父さんたちへ

副題に「『団塊世代』の登場と終焉」。
戦後風俗史みたいな感じ。

第一章が新左翼運動
第二章がサブカルチャー
第三章がモーレツに働いた世代論

参考文献が三ページに渡って載せてあるが、
それをまとめて随所に皮肉を書き込んだだけの代物。
第一章など立花隆の「中核vs革マル」を手短にまとめて
あれこれウンチクを足していったのが読めば露見する。
また広告コピーをいちいちけなすのも無意味。

【読むだけムダ】 2005年

林 信吾, 葛岡 智恭
昔、革命的だったお父さんたちへ―「団塊世代」の登場と終焉

日常佛教語

愛、退屈、馬鹿、花代、魔羅、旦那……の由来は仏教語である。
本書ではかのように日常語と化したものを中心とした仏教語辞典である。

【話のネタ本にGOOD】 1972年

岩本 裕
日常仏教語