6月10日土曜日に第78回カンヌ映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞をとった是枝監督作品『怪物』を見てきました。

 

 

大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きる。それはよくある子ども同士のケンカのように見えたが、当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく。そしてある嵐の朝、子どもたちがこつ然と姿を消してしまう。

「怪物」とは何か、登場人物それぞれの視線を通した「怪物」探しの果てに訪れる結末を、是枝裕和×坂元裕二×坂本龍一という日本を代表するクリエイターのコラボレーションで描く。中心となる2人の少年を演じる黒川想矢と柊木陽太のほか、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子ら豪華実力派キャストがそろった。2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され脚本賞を受賞。また、LGBTやクィアを扱った映画を対象に贈られるクィア・パルム賞も受賞している。

出典:怪物 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

 

キャスト:

麦野早織……安藤サクラ
保利道敏……永山瑛太
麦野湊………黒川想矢
星川依里……里柊木陽太
鈴村広奈……高畑充希
正田文昭……角田晃広
星川清高……中村獅童
伏見真木子…田中裕子

 

監督:是枝裕和
脚本:坂元裕二

音楽:坂本龍一

 


花束参考

右矢印映画『怪物』公式サイト

 

 

 

以下、ネタバレの感想です。決め付けや乱暴にくくっている点があります。ご容赦のほどお願いいたします。

 

 

注意注意注意ネタバレ感想注意注意注意

 

 

 最近、【時事】嘘にまつわる徒然 | いろいろといろ (ameblo.jp)で、子供の頃の話を吐露しました。昔からよくある話で、嘘が嘘を呼んで、本当に怪物が具現化しちゃった話です。

 

第一章 湊のお母さんの早織の物語

出典:kaibutsumovie

 

 ある火事の日、彼女は湊の様子がおかしいことに気づきます。突然、伸びた髪をきったり、スニーカーを片一方なくしたり、水筒には泥が入っていたり…。そして、ある日、耳に包帯を巻いて帰ってきた湊に、早織は学校に出向きます。

 

沙織は「シングルマザー」という偏見と戦っているお母さん。狭い社会なので、父の不在の大きさを埋めるように働き、気にかけています。それが却って、いろいろなものを見えなくしていました。息子の嘘を疑わない、自分の筋を押し通す人です。

 

陰で、本人が知らないところで「シングルマザーだから、あの人『アレ』なのよね」といわれていそうな感じ…。でも、早織からの見方が一番共感が持てるのかもと思いました。

 

 

第二章 湊の先生の話

出典:kaibutsumovie

 

 キャバクラの火事の日、野次馬の子供達が動画をとって、「キャバクラいったの?」と言われ、それを見た人々にそのまま「キャバクラ先生」とあだ名をつけられた人です。ご本人はそういう声に気づかず、小説家を目指したこともある内省的な人。

 

 偶然、湊が星川くんに暴力を振るっているように見えるところを目撃してしまって、「湊が星川をいじめている」と誤解します。また、人のいうこともあまり聞いていません。ある女子が「麦野くんが遊んでいた」といっていた話を「麦野くんが殺した」と思い込んでいて、少ない味方からも見放されてしまいます。

 

出典:kaibutsumovie

 

知らないうちに広まった「キャバクラに行っている先生」の噂と湊がいった「先生から『湊の脳は豚の脳』って言われた」「先生にたたかれた」といった嘘がマリアージュになって、退職を余儀なくされてしまいます。

 

第三章 湊と星川依の話

出典:kaibutsukmovie

 

 クラスからいじめられていたのは、星川でした。小学校5年生という微妙な時期だと思うんですけど、ちょっと大人の視点から見ることができる子供はまだ少人数。親やテレビからの偏見が大きい子供が大半のクラスにあって、星川依里の存在は異様。物事が俯瞰でみえるから、いじめられても次にすべきことを行動できてしまうし、カワイイし、ファッションも垢抜けているから、女子にモテモテ。よって、その衝動の根源がジェラシー的なものからきていることも本人達が気づかず、いじめがエスカレート。

 

 そんな中、湊は依里に惹かれていきます。スニーカーを片方貸したり、依里をかばうために暴れたり。ですが、暴れたはずみで先生の肘が顔に当たって鼻血を出してしまうという事態に。湊くんが一番我慢ができなかったのは、ラーブ!ラブ!とはやし立てられたことじゃないかと。湊くんはただの友達と思っていたのに、「あれ…?」というのがふつふつと湧いてきてしまっていたんじゃないかと…。

 

出典:kaibutsumovie

 

 ショックだったのは、秘密基地で遊んでいるときに、星川くんが転校するといったこと。「どうしても離れたくない」という気持ちでいっぱいになってしまった湊君の心の痛みがつらかった…。

 

 そして、自分の嘘が嘘を呼んで、一人の先生の人生を変えてしまったこと。「やさしい」と思っていたから、ちょっとぐらいの嘘は許してもらえると思っていた自分の甘さを思い知るんです。そして、また人知れず「心の負債」を重ねてしまいます。

 

音楽室で校長先生に会い、やっと「嘘を言っちゃった」と吐露します。校長先生は「私も嘘をついた」といい、嘘はこうやって吐き出せばいいといって渡したのが、トロンボーン。自分もフルダブルホルンを吹いて奇妙な合奏。

 

出典:kaibutsumovie

 

実は、第一章も第二章でもその音色が流れています。最初は吹奏楽部が楽器を温めているのかなと思っていたんですが、その正体が第三章でわかるわけですね。

 

誰かにしか手に入らないものは幸せって言わない。誰でも手に入るものを幸せって言うの

 

 いろいろな意味にとれるその言葉に、湊くんは心の底からあふれるものをとめられません。嵐の夜、星川くんの家に出向いた彼は、父からの暴行を受けて風呂に沈んでいる星川くんを発見します。ほとんど歩けなかった星川くん。

 

 場面は変って、あの秘密基地。(あの腰の傷で、どうやって到着したのかがわかりません驚き)山が崩れる音を「出発の音だ」と笑いあう少年たちぐすん

 

昭和で育ったせいか、脳裏に浮かぶのは「さらば宇宙戦艦ヤマト」のこのシーン。

出典:さらば宇宙戦艦ヤマト

 

 

 最後、自力で這い出したかにみえる二人が、草原をかけぬけていきます。坂本龍一さんの遺作となったAquaがかぶってきますが、憶測を許さずエンドクレジット!!

 

 

2023年6月16日 Tジョイ横浜であったティーチインで是枝監督にいただいたサインです。最後のシーンの写真にいただきました。

 

 

それにしても、湊君役の黒川想矢くん、VIXXのエン、俳優チャハギョンによく似ているような気がして、よけい気になった私でした。この写真なんてそっくり!!

 

 

出典:hiiragi_hinata_official