もう早くも春らしい気配が漂う3月です。2023年3月1日から国立新美術館で「ルーブル美術館展 愛を描く」を開催しています。
乃木坂駅から向かう道
すごいピンクの洪水
国立新美術館
昔の待ち合わせ場所の名残、電話ボックス
公式サイト
【公式】ルーヴル美術館展 愛を描く|日本テレビ (ntv.co.jp)
展覧会概要
人間の根源的な感情である「愛」は、古代以来、西洋美術の根幹をなすテーマの一つであったといえるでしょう。ギリシア・ローマ神話を題材とする神話画、現実の人間の日常生活を描く風俗画には、特別な誰かに恋焦がれる神々・人々の情熱や欲望、官能的な悦び、あるいは苦悩や悲しみが、様々なかたちで描かれています。一方、宗教画においては、神が人間に注ぐ無償の愛、そして人間が神に寄せる愛が、聖家族、キリストの磔刑、聖人の殉教といった主題を介して、信者たちに示されています。
本展では、西洋社会における様々な愛の概念が絵画芸術にどのように描出されてきたのか、ルーヴル美術館の膨大なコレクションから精選された73点の絵画を通して浮き彫りにします。16世紀から19世紀半ばまで、西洋各国の主要画家の名画によって愛の表現の諸相をひもとく、かつてない趣向の展覧会です。ぜひご期待ください。
出展:みどころ|【公式】ルーヴル美術館展 愛を描く|日本テレビ (ntv.co.jp)
私にとって嬉しかったのは、バロックからロココへの流れの中の絵画でバトーやブーシェの作品が見れることでした。鑑賞後、当時のパトロンが王侯貴族だったこともあって、その時代の権力者の影響を強く受けているんだなぁと再認識。
バトー
1715年 ニンフとサテュロス
ルイ15世が即位した頃に描かれています。
ブーシェ
1745年
出典:【公式】ルーヴル美術館展 愛を描く|日本テレビ (ntv.co.jp)
1745年といえば、ポンパドゥル夫人がルイ15世の公妾になった時期です。
出展:手持ちの絵はがき
↓13年後
1758年
ブーシェはポンパドール夫人の寵を得て、ルイ15世のお気に入りとなります。
出典:【公式】ルーヴル美術館展 愛を描く|日本テレビ (ntv.co.jp)
↓
1774年 ルイ16世即位を経て…
フラゴナール
1778年 閂(かんぬき)
「官能的な愛の戯れの賛美なのか、道徳的警告なのか、あるいはその両方なのか。一義的には解釈できないこの豊かな曖昧さこそ、《かんぬき》の最大の魅力といえます。悦楽が一瞬にして暴力に転じかねない性愛の繊細さ、複雑さを、フラゴナールはみごとに描き切っているのです。」
出典:【公式】ルーヴル美術館展 愛を描く|日本テレビ (ntv.co.jp)
片やオランダは東アジアとの交易で中産階級が勢力を増して、中産階級からの発注が多くなったので、神話よりも日常生活の中の愛が描かれているようです。中産階級勃興の波はフランスにも影響を及ぼして、展覧会の紹介にはありませんが、ニコラ・ベルナール・レピシエの「マルク=エティエンヌ・カトルメールと家族の肖像」という1780年当時の絵画も展示されています。
今回購入した絵はがきを年代順に並べました。
18世紀 ブルボン王朝最盛期
18世紀末 市民革命以後
左側:
No. 57 ユベール・ロベール
「かつてヴィーナスに捧げられた神殿」
展示会の説明
「この作品を描いた18世紀フランスの画家ユベール・ロベールは、イタリアで学び、崩れかけた古代建築のある幻想的な風景画を得意とし、「廃墟のロベール」とも呼ばれました。前景で二人の女性が眺めている古代のレリーフの断片には、ヴィーナスが恋人の軍神マルスに寄り添う様子が彫られています。」
またロベールはナポレオン帝政以後、ルーブル美術館の創建に尽力されたのだそうです。
右上:
No. 63 ニコラ・ベルナール・レピシエ
「マルク=エティエンヌ・カトルメールと家族の肖像」
右下:
No. 66 ギヨーム・ボディニエ
「イタリアの婚姻契約」
展示会の説明
「19世紀フランスの画家ギヨーム・ボディニエは、27歳のときにイタリアを訪れると、この土地の人々の風俗に大いに魅了されました。ここで描かれているのは、ローマ近郊アルバーノの裕福な農民一家で、婚姻契約が執り行われています。美しい丘陵を背景に、公証人は契約書の起草に没頭し、その手前では、結婚する若い男女が向かい合って座っています。青年がまっすぐに許嫁を見つめる一方で、美しい衣装で着飾った娘は恥ずかしげに目を伏せています。その横では、母親が娘の手を優しく握っていますが、背後にいる父親は、宴席の準備をする召使いの女性にすっかり目を奪われているようです。様々なかたちの愛が見え隠れする、陽気で微笑ましい光景には、描かれた人々に対する画家の愛情も感じられます。」
そして、圧巻の最終章
IV. 19世紀フランスの牧歌的恋愛とロマン主義の悲劇
この展示室のみ写真撮影が可能となっています。
絵を見慣れている人はわかると思うんですけど、絵に近づきすぎると、絵が光を反射してうまく撮れません。私が行ったときは、わかっている人が多かったようで、3メートルくらい離れて撮影している 人が多くて助かりました。
No. 73 ウジェーヌ・ドラクロワ
「アビドスの花嫁」
展示会の説明
「19世紀フランスのロマン主義の巨匠ドラクロワは、同時代のイギリスの詩人バイロンの著作に心酔しました。この作品は、バイロンが1813年に発表した「アビドスの花嫁」を題材にしています。舞台はオスマン帝国、高官の娘ズレイカと、その兄(じつは従兄)で海賊の首領であるセリムの恋仲を死が引き裂く悲恋物語です。画面では、二人が洞窟の前で何やら揉めています。ズレイカは父から政略結婚を決められたことを打ち明けたのですが、セリムはそれに反対し、愛するズレイカを守ろうとします。しかし父が娘を取り返そうと放った軍隊がすぐ背後に迫っており、まさに多勢に無勢。波打ち際まで追い詰められ、死に瀕しつつも応戦しようとするセリムをズレイカが必死に引き留める ― こうしたドラマティックな場面が、豊かな色彩表現と激しい筆致で想像力をかき立てるように表現されています。」
No. 72 テオドール・シャセリオ―
「ヘロとレアンドロス」、または「詩人とセイレーン」
展示会の説明
「アフロディテに仕える純潔の巫女ヘロと、その恋人レアンドロスは、ヘレスポントス海峡を隔てた対岸の町に住んでいました。そこで毎晩、レアンドロスはヘロに会うために海を泳いで渡り、ヘロは塔に松明を灯して待っていました。しかしある嵐の夜、その火が消えてしまい、レアンドロスは無残にも溺死し、それを知ったヘロも絶望して塔から身を投げて死んでしまいました。この古代ギリシアの悲恋の物語は、19世紀初頭に人気となり、画家たちも好んで題材に選びました。ロマン主義を代表する画家シャセリオーによるこの作品では、物語の壮絶な場面が劇的に表されています。前景では、レアンドロスが荒れ狂う海から這い出ようともがき、その視線の先には、ヘロの姿が幻想的に描かれています。」
No71 テオドール・シャセリオ―
「ロミオとジュリエット」
No69 ジャン=パティスト・ルニョー
「友情の杯を交わすヒュメナイオスとアモル」
No. 68 アンヌ=ルイ・ジロデ・ド・ルシー=トリオゾン
「エンデュミオンの眠り」※スケッチ
展示会の説明
「1793年、26歳のジロデはサロンに出品した《エンデュミオンの眠り》(ルーヴル美術館)により、一躍脚光を浴びました。本作はそのエスキース(準備スケッチ)です。羊飼いの美青年エンデュミオンに恋した月の女神セレネは、全能の神ゼウスに頼んで彼を永遠の眠りにつかせ、毎晩、彼のもとを訪れました。この物語を絵画で扱う場合は、セレネがエンデュミオンの寝姿を見つめる様子を描くことが一般的でした。しかしこのエスキースでは、セレネは空に浮かぶ三日月として間接的に表現され、ジロデの独創性が際立っています。若きジロデは、師であった新古典主義の巨匠ダヴィットとは異なる作風を打ち出そうとしていました。エンデュミオンのほっそりとした優美な裸身は、ダヴィッドによる英雄的な男性像とは対極の、両性具有的な官能性を帯びています。」
※こちらが最終版のようです。
この下3点は圧巻です。
No. 67 フランソワ・ジェラール
「アモルとプシュケ」、または
「アモルの最初のキスを受けるプシュケ」
展示会の説明
「愛の神アモルとプシュケの恋物語は、フランス美術では特に18世紀末に流行しました。新古典主義の画家ジェラールが1798年のサロンに出品し、注目を集めたこの作品には、若く美しいアモルがプシュケの額にそっとキスするロマンティックな瞬間が描かれています。当時の批評家たちの多くは、何も見えていないようなプシュケの眼差しや思春期を思わせる未成熟な身体の表現に、初めて愛を意識した無垢な少女の驚きを読み取りました。春の野の花が咲くみずみずしい自然も、ピュアな愛の芽生えを感じさせます。恋人たちの頭上に蝶が舞っているのは、「プシュケ」がギリシア語で「蝶」と「魂」を意味するからです。当時アモルとプシュケの恋は、プラトン主義の解釈に基づき、神の愛に触れた人間の魂が、試練の果てに幸福を知る物語と解されていました。」
No. 70 クロード=マリー・デュビュッフ
「アポロンとキュパリッソス」
涙が出そうになったのはこの絵。
No. 74 アリ・シェフェール
「ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊」
展示会の説明
「イタリアの詩人ダンテ(1265-1321年)の叙事詩『神曲』は、フランスでは19世紀前半、ロマン主義の時代に流行し、なかでも「地獄篇」に登場するパオロとフランチェスカの悲恋は人気を博しました。古代ローマの詩人ウェルギリウスの案内で地獄を巡るダンテは、不義の恋のために断罪され、永遠に地獄を漂うパオロとフランチェスカの亡霊に出会います。フランチェスカは政略結婚で嫁いだ先で、夫の弟のパオロと恋に落ち、ある日、嫉妬した夫によって二人とも短刀で刺し殺されてしまったのです。ロマン主義の画家アリ・シェフェールは、パオロとフランチェスカの官能的な裸体を大胆に斜めに配置し、ドラマティックな雰囲気を巧みに強調しました。許されぬ愛で結ばれた恋人たちは、悲しげに目を閉じ、固く抱き合ったまま地獄の風に吹かれています。画面右ではウェルギリウスとダンテが物思いに沈んでいます。」
一方で、
ヴィクトリア朝のイギリスではラファエル前派が大きな影響力をもっていました。ダンテの「神曲」を題材に使ったということは、ドーバー海峡を挟んで相互に影響しあっていたのかもしれないなぁと思いました。
また、中野京子氏の運命の絵にも取り上げられておりました。
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