日本は各国の映画をたくさん見ることができる国だそうです。この一本もそのうちのひとつ。特に東京はすごい。今回は川崎の映画館で鑑賞しました。
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※以降ネタバレを含みます。
■概略
主人公は伝説的なバレエダンサーとして名前が残る、ルドルフ・ヌレエフ、ソ連のレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)のキーロフバレエ団(現在のマリインスキーバレエ団)の一員としてパリで公演。パリで亡命に至るまでを彼の過去を織り込みながらのドキュメンタリーです。ヌレエフの師は監督でもあるレイフ・ファインズが演じています。
■監督について
レイフ・ファインズは1995年ロイヤル・シェークスピア・カンパニーでハムレットを演じてトニー賞を獲得、1993年「シンドラーのリスト」ではドイツのSS将校アーモン・ゲートを演じて米英両国アカデミー賞の助演男優賞を受賞…。20年前は若くて美しい上に、卓抜した演技力の持ち主。心技【美】一体の最高峰を体現していました。1996年ごろだったか、赤坂BLITZで彼主演の「コーネリアス」、見に行きましたよ~。
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そんな彼が監督、ヌレエフを指導するバレエ教師を演じているなんて、見逃せない映画でした。
■なぜ、踊るのか
貧しい家に生まれた彼がステージに立つきっかけになったのは、母が引き当てたオペラ座のチケット1枚。どうやって家族数名で入場したのかわかりませんが、そのときの思い出が強く残って「ステージに立ちたい」と思ったのだそうです。
そんな彼にレイフ・ファインズが「なぜステージに立つのか」の問答の末行きついた言葉は「心にある物語を語りたいからだ」。そして、美しいフォルムを形作るため、ヌレエフは貪欲に美術館に通い、その表現を学ぶんです。
パリに到着したとき、真っ先に行ったのがルーブル美術館。彼が見たかったのは、中野京子著の「怖い絵」でも紹介されていた「メデューズ号の筏」(1819年、ジェリコー、ルーブル美術館)
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醜悪なリアリティから生まれた芸術性…。
事実、このリアリティを出すために、ジェリコーは生存者へのインタビューを繰り返し、処刑された人間の生首や手足を譲り受けて、自宅で腐敗するにまかせ、その段階を克明に描写したのだそうです。
ヌレエフを演じたのばタタール国立オペラ劇場のオレグ・イヴェンコ。彼のレパートリーは【ラ・パヤディール】とあるので、劇中のダンスは迫力。
また、亡命の前日、踊るのは白鳥の湖。特にピックアップしているのは第三幕の舞踏会の王子のソロと黒鳥の大回転。
ナタリー・ポートマンが米国アカデミー主演女優賞を獲得した「ブラック・スワン」でも、運命を司る魔性の演舞として使われています。
■参考:ミハイロフスキー劇場 白鳥の湖第三幕
私がVIXXくんたちを好きになったのも、そのグループ名の意味「「Voice」,「Visual」,「Value In Excelsis」 = 最高のVoice(声)、最高のVisual(ヴィジュアル)、最高の Value(価値)を兼ね備えた6人組」と絶え間なく努力し続ける彼らの姿を見たからでした。
アイドルとしては成功していると思いますが、まだまだ道は遠い…。
その道の果てのなさ…を理解して心技【美】一体を目指してほしいなと思うのです。