先日9月20日に、経団連の十倉会長が「消費税増税から逃げてはいけない」と発言し大炎上しました。
人々からは「国民を殺す気か」「法人税増税から逃げるな」との声があがっています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/de7b3ed3941b40cc6778a9d528ec72a4c7b27e03

上記FLASHの記事では「税を含めて一体的な改革をしなければ、日本の社会保障制度はもたない」と強調したとありますので、十倉氏が真正の経済ド素人であることがわかります。


さて、前回記事の続きに移ります。

【前回記事】▼経団連のおバカ提言に反論します。   2023-09-14

 

経団連のおバカ提言は、「令和6年度税制改正に関する提言」と「2023年度規制改革要望」の二つに分かれており、メディアで話題となったのは前者のほうのみです。
https://www.keidanren.or.jp/policy/

前回は「令和6年度税制改正に関する提言」を扱いましたので、今回は後者の「2023年度規制改革要望」にツッコミを入れていきましょう。

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Policy(提言・報告書) 産業政策、行革、運輸流通、農業
「2023年度規制改革要望」 ―日本経済にダイナミズムを取り戻す―
2023年9月12日 一般社団法人 日本経済団体連合会
https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/061.html

【概要】
https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/061_gaiyo.pdf

【本文】
https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/061_honbun.pdf
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まずは【概要】部分から。
下記画像は概観といったかたちです。


大きな問題は、やはり「規制緩和」という邪神に対する熱き信仰心でしょうか。
90年代にはすでにこの手のサプライサイド経済学は「ブゥードゥー経済学」としてバカにされてきたのに、いまだにバカなことを言っています。

そしてここでもまた「成長分野の振興」という「選択と集中」や「トリクルダウン」の名を変えた愚策も見えます。



「大企業のために規制緩和してもトリクルダウンはしない」と元々ネオリベだったバイデンにさえ完全否定されているのに、経団連は40年以上前の経済学の流行りを信じ切っています。宗教って怖いですね。

「文鮮明はキリストの生まれ変わり」と信じる統一教会みたいなもんです。

なぜ(不完全雇用時に)何でもかんでも規制緩和してはダメなのか
基本的な考え方もお伝えしておきます。




参考:「改革して生産性を上げても給料は増えない」~新自由主義者の間違い【下】
2020-07-21 
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12612426911.html


さて、経団連提言の【本文】部分も見ていきましょう。



「規制・制度の中には、技術進歩や経済社会の変化に迅速に対応できず、GXやDXを阻んでいるものがいまだに存在する。…時代にそぐわない規制・制度をスピード感をもって不断に見直していく(p.5)」とのことです。

確かにそういう規制も存在するでしょう。
例えば[p.17]で示される「洋上風力発電の作業船の活用に向けた規制緩和」などは勘案すべき事項かもしれません。

しかし、続いて「人手不足が深刻化している産業の課題解決へのデジタル技術の活用や、デジタル完結が進んでいない手続の改善に向けた規制を変革し、DXを推進していくことが求められる。(p.6)」とあります。
「人手が足りないからデジタル化を進めれば人手不足をカバーできる」というロジックですね。

デジタル化は進めるべきでしょうが、しかし供給側を強化したからといってモノが売れるというわけではありません。
需要側が疲弊してるのに、一体誰がデジタル化で供給を増やしたモノやサービスを消費するのでしょうか。

上掲した画像でスティグリッツが指摘したように「適切な需要が伴わないと、供給サイド改革はGDPを低下させえる」のです。
経団連のおバカ提言には一貫してこのような需要サイドの視点が欠けています
というか、30年間同じ間違いを続けてきて、まだその間違いに気づいていません。


同じ[p.6]にはこうあります。

要するに「イノベーションを起こして成長してから分配だ!」という話です。
バカなんでしょうか。
需要が足りず、給料が上がらず、経済成長しないから分配が滞ってるんですよ。
イノベーションを起こしたら人々の購買力が増えるんでしょうか?(笑)
まずは「分配が先」で、話はそれからです。
 


例えば米中に比べて圧倒的に劇ショボなのが日本のデジタル投資額です。投資をしなきゃ需要は生まれず、成長も分配も起こりません。
米中は投資こそが需要とイノベーションを生み出すのだと理解しています。
一方で経団連は経済学の基本中の基本「有効需要の原則」を理解していないため、提言も明後日の方向を向くことになります。

政府だけでなく企業側も、自分達はまったく投資しないでいて「イノベーションで経済成長!」なんて考えはやめた方がいいです。

*上記の設備投資増減率は対GDP比



また、[p.8]では、公共サービスの民営化が薦められています。これも需要を減らす向きで作用します。


世界中で失敗が明らかになっていることを、30年間変わらずまだやろうとしているんだから、このカルト宗教の信仰心には頭が下がります。

スティグリッツ先生も民営化の正体を下記のように指摘しています。


経団連が民営化を推し進める理由は、利権を手に入れたいためであり、今回のような提言も要するに「我田引水のためのお為ごかし」です。

そしてその民営化の効用に関しては「これらを効率化できれば、地方公共団体の事務処理の迅速化と負担軽減に大きく貢献する[p.8]」、「これにより、地方公共団体サービスを維持したまま組織のスリム化と業務効率性向上が図られる[p.8]」、「地方公共団体における事務負担の軽減に向けて、改めて対応を求める[p.8]」と続きます。

しかし、デイヴィッド・グレーバーの「ブルシット・ジョブ」でも指摘されるように、また、実際に規制緩和すると、緩和された規制を規制するルールがむしろ増えることがデータから明らかになっています。
事務負担を軽減」するどころか、逆に負担を増大させることもあると言えます。
 


そしてたとえ「組織のスリム化」や「業務効率性向上」、「事務負担の軽減」に成功したとしても、それは、ただ実体経済に対する供給貨幣量を減少させる結果に繋がるだけになります。需要を減らす向きで作用するということです。

我が国はすでに公務員数も公共事業額もかつてより半減し、総雇用者数あたりの公務員数はフランスの4分の1、あのネオリベ国家アメリカの3分の1程度にまで減り、世界一ともいえる「小さな政府」になり果て、世界が「Japanification」と反面教師にするほどの低需要国になりました。

 


公共事業関係費の推移

経団連のように「経営者目線」で行政の業務を考えると、このようなトンチンカンな発想に拘泥するようになってしまいます。


[p.9]では、役員の自社株保有を奨励しています。


「自社株買い」を奨励することは、貨幣流通を実体経済から離れさせ金融市場に向かわせることであり、「金融不安定化」にも繋がり、格差拡大を助長します。

元財務長官のライヒが言うように、企業役員が自社株買い(Buyback Stock)で得たお金は従業員には還元されません



出所:落合貴之議員(立憲)

 
労働者が稼いだ利益は、株主配当と役員報酬に消えていきます。


そして儲かる、儲からないに関わらずやってはいけないのが環境破壊です。
[p.17]では「保護林でソーラー発電させろ」と要求しています。


これではまったくGx「グリーン・トランスフォーメーション」ではありません。
SDGsのスローガン「誰一人取り残さない」や、「2050年までのカーボンニュートラル」誓約における「公正な移行」を無視するのが経団連スタイルです。
「グリーン」の名を騙るまがいものと言えるでしょう。


この他にも提言には、「副業・兼業における労働時間規制を緩和して増やせ」、「家族の介護をする労働者のために深夜労働の規制を緩和せよ」、「運送業が人手不足だから荷台連結トラックを解禁せよ」などと綴られています。

いやいや、その前に労働者の報酬を増やせよとしか言えません。  
彼らは大企業の利権を増やし、労働者には「労働凄惨性」を高めるためのお為ごかしの方策を押しつけようとしているに過ぎません。


以上、長くなりましたが、経団連の提言にツッコミを入れてきました。
相変わらず酷いもんです。

科学をまったく無視して日本経済をぶっ壊す、提言という名の日本政府に対する命令を発するカルト的組織には解散命令を出すべきではないでしょうか?


①②⑥⑦⑧⑨⑩に該当しそうですよね。


長文をご覧いただきありがとうございました。
ではまた。

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