皆さん、いかがお過ごしでしょうか?

今月後半はグリーンニューディール政策研究会の主導する書籍化事業でノーベル経済学賞のスティグリッツ教授の翻訳を行っていたり、個人的にも久しぶりにRapする曲を作っていたりして能動的に過ごしています。

 

さて、本稿は若干ふざけたタイトルをつけましたが、スガ政権の一連の政策の背後にあるコロナ禍を利用したシャレにならないくらいヤバい「ショックドクトリン」をまとめたものになるので、国会議員さんにぜひ見てほしいと思っています。

本国会・財務金融委員会で法案成立を阻止してほしいです。

 

そして中小企業の経営者さん達にとっても非常に重要な記事となりますのでぜひともシェアならびに注意喚起していただきたいとも思っています。

 

スガ政権は規制改革を旗印にする内閣であることは皆さんもご存じだろうと思います。

 (*「ディスインフレ下における規制緩和がいかに日本を衰退化させるか」に関する簡単な説明はこちらにまとめてありますので、初めてこの手の話を知る方はどうぞです)

 

その彼らの規制改革の中心に「中小企業を淘汰し、(外資)大企業に買収させて労働生産性を上げよう」というような政策があるのですが、これが完全に間違っているどころか、日本の衰退化を加速させる、というか「日本オワタ」状態になることが確実となるため、絶対に阻止しなければならない案件となります。

政府支出が少なく、需要がないことから経済成長できないのに、規制改革で供給側をいじくろうとしているのだから愚かでしかありません。

 (*スガ首相とブレーンのアトキンソン氏の「中小企業を潰して生産性向上」論がいかに間違っているのかは、こちらでまとめています。

 

その「中小企業潰し政策」の中で最もヤバいのが「銀行法の改訂」です。

今回はこの銀行法改訂について、テレビなどでもご活躍の政策コンサルの室伏謙一氏の報告を参考にする形でまとめます。(ぜひ本稿と突き合わせてこの動画もご覧ください)

 

この銀行法を改訂するという事に関しては先日ニュースがあり、政府方針は以下のようになりました。

 

 

このスガ政権の「中小企業潰しのために銀行法を改訂する」という案は、内閣府管轄にある金融庁の「金融審議会」の報告書の内容に沿っています。

これは、簡単に要約すると、「銀行の権限を拡大する」というもので、おそらく本国会・財務金融委員会の俎上に上がると見込まれていますが、これを全ての国会議員に阻止してほしいのです。

 

この案の重要な点を抜き出すとこうなります。

 

・ 銀行が出資者となり他業の企業経営に参加できるようにする

・ 銀行が企業向けに「全額出資が可能(100%の株式取得)に」できるようにする

     (今までは融資のみだった)

・ 非上場の会社の議決権取得制限の例外を拡充し、銀行が参入できるようにする

 

下図で詳細を確認してください。

 

画像:室伏謙一氏

 

これらが実現すると何がまずいのか?

まず、銀行という成果主義の業態の人たちが企業経営に参加してしまうと、中小企業にまで「株主至上主義」が横行するようになります。

「無駄」と評価された部署や人員はリストラされ、逆に有益だと判断された技術や人材はお金儲けのために外資企業などへ売却されかねません。

そして、M&Aでお金儲けをしているような銀行が参入してくると、企業自体の大企業への売却も実現してしまいます。米国や中国のグローバル資本への売却もありえるでしょう。

 

もともとこの提案は、安倍政権下で、悪名高き竹中平蔵氏が所属する日本経済再生本部の「未来投資会議(現・成長戦略会議)」が作ったもの でした。

下図にある「成長戦略フォローアップ」とはその竹中氏らの提案を元に閣議決定されたものでした。

 

画像:室伏謙一氏

ソース: 官邸: https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/portal/follow_up/

 

そこにスガ政権下で、敵対的買収(TOB)を得意とするコンサル企業の三田証券の社外取締役であるデーヴィッド・アトキンソン氏(元ゴールドマン・サックス)が「成長戦略会議」に抜擢され、この方向づけが加速したと見られています。

 

これは、いわばまさに「日本を草刈り場にしようとする政策」ではないでしょうか。

 

もともと前川レポート年次改革要望書、そしてアーミテージ・ナイ・レポートの頃から、米国を中心とする外資グローバル勢力に要求されていたことが、今回の銀行法改訂でクライマックスを迎えるようにも思えてなりません。

 

米国は80年代から日本に規制緩和や構造改革を押し付け、グローバル企業の参入の邪魔になる日本企業の体質やシステムの改善を求めてきました。

世界でもまれに見る豊かで多種多様な中小企業の多さを前に、侵略計画の遂行が進まなかったグローバル勢力の新たに仕掛けた計略に、スガ政権がまんまと乗った形ではないでしょうか。

 

合併・再編を繰り返し、失われた20年の間に二倍に膨れ上がった上場企業

 

国内全企業の99.7%を占める中小企業を株式会社化し、その経営を銀行が株主至上主義に則って行ってしまえば容易に合併・再編が進むことは火を見るよりも明らかですし、その先にはグローバル企業の触手が伸びる事態が控えていることは間違いないでしょう。

 

これは鳩山由紀夫氏の意志を継ぐ民主党系の議員さんも、亀井静香氏の意志を継ぐ経世済民派である自民党の議員さんにも絶対に許せないことだと思います。

 

 

昨年五月のことですが、なぜか金融担当でもないスガ官房長官(当時)がわざわざ訪米し、「対日投資を促進するための方策について」話し合うため、Bank Of AmericaやS&Pなどのグローバル金融資本の代理人たちと会談しています。

 

実際にスガ内閣は銀行法の改訂以外でも、中小企業基本法の改訂大企業によるM&A促進税制を進めることによって、「中小企業つぶし」という日本経済つぶしを押し進めていますので、コロナ禍で困窮する中小企業を見捨て、(外資)大資本に買収させるショックドクトリンを進めているようです。

見捨てるどころかスガ首相のブレーンのデイヴィッド・アトキンソン氏は「中小企業を半分に減らす」ことを公言しているので、率先して殺しにいこうとしていることは明白となります。

 

 

前掲した拙ブログ内で関西学院大学の朴教授の論説と共に説明したように、マクロ経済学的事実として「中小企業を潰しても失業者が増え、経済を悪くさせるだけ」なので100害あって1利なしです。


アトキンソン自身は、M&Aや敵対的買収(TOB)を得意とする三田証券で社外取締役に就いており、レントシーカーとして我田引水のぼろ儲けを狙っていることを隠そうともしていません。
彼らはコーポレートガバナンス強化至上主義、つまり「株主至上主義」の行動原理で生きているため、日本経済を焦土化させる尖兵となるでしょう。
 

法人税率、配当、賃金、利益の推移

 

「株主至上主義」に則って改革した結果、国際競争力落ち、日本が衰退しました。

 

菅首相は、銀行法改訂などの施策をもって、生産性の低い企業を潰し、生産性の高い企業を大きくする「選択と集中」を講じるという算段のようですが、どうやってその生産性の低い企業・生産性の高い企業、つまり将来性の有無を見分けるおつもりなのでしょうか。

 

生産性を上げるには、政府が財政出動し実体経済の需要を底上げし、好景気にして給料を上げていくしかありません。

不完全雇用下で供給側をむやみにいじくっても悪い結果になるだけであることを、規制改革を続けた「失われた20年」が証明してきたじゃないですか。

その間に平均所得は100万円も減り、中央値も30万円も下がったことをお忘れでしょうか。

 

企業規模が大きくなると賃金が増え労働生産性も高まるのは事実ですが、それはミクロの視点で見た場合です。企業規模の拡大は同時に効率化を進めることになるので、失業者や負け組も生むことになる。だからマクロ視点では労働生産性が上がらず、わが国だけが成長しない国になったのです。

 

関西学院大学・朴勝俊教授作成

 

 

最後に、1/20の国会におけるスガ首相と立憲逢坂議員の質疑応答を要約いたします。

 

https://youtu.be/dyW4AsSflRk?t=9885 (再生時間指定)

 

立憲・逢坂議員:

政府は劇場や映画館、ライブハウスなどに営業時短をお願いしているが、減収で営業が成り立たない。

文化事業には支援策が殆どない。

この分野は零細やフリーが大部分だが、法律にも基づかず支援・補償もなく廃業を迫るのか? 単なる働きかけだから責任は取らないというのか?

固定費の補助など事業者に納得のいく支援が必要だ。 キャンセル料の支援だけでは不十分。

文化芸術は人間の生命維持装置だ。

 

昨年、財政制度等審議会が持続化給付金や家賃補償の終了を求める次の建議を提出した。

「非常時の支援を常態化させれば、支援への依存を招き、産業構造の変革や新陳代謝の遅れ、モラルハザードを通じて今後の成長の足枷になりかねない」と。

あまりにも心無い冷酷な言葉の羅列だ。

今は平時ではなく非常時だ。事業者への継続的支援を求める。

菅総理は支援を中止し縮小させるのでしょうか。

菅総理の言う経済構造の変化や生産性の向上も大事だが、今声高に叫ぶことでしょうか?

コロナ禍で苦しむ事業者の皆さんを、産業構造の変革や新陳代謝のチャンスだと総理は受け止めているのでしょうか?

 

対するスガ首相:

事業者には雇用調整助成金、無利子無担保融資、キャンセル費支援などを利用してもらって、配分は自治体に任せま~す。

コロナ禍で中小企業の中には積極的に事業転換に取り組みたいとの声もあるので支援を行いたいで~す。

 

 

まともな知性のある人間なら即座に理解できるでしょうが、まず雇用調整助成金はフリーランスには関係ありませんし、また、多くの文化芸術関係者が7割、8割と所得を失うなか、その事業者が将来の見通しも見えないのに金を借りることはありません。普通に廃業します。

そして文化芸術分野のイベント業者は、イベントを敢行すること自体ができないのでキャンセル料が発生することもなく、ただただ収入が激減するばかりです。

私にはスガ首相がとんでもないバカか、わざと中小企業を潰し大企業に買収させたいがために支援を打たないかのどちらかしかないと思います。

 

もしスガ首相が「わざと中小企業を潰し大企業に買収させたいがために支援を打たない」のであれば、暴動やクーデターが起こることも覚悟すべきです。

国民は、基本的人権である生存権と抵抗権を行使することも視野に入るでしょう。

 

以上、何としても「銀行法改訂」は止めねばなりません。

日本の将来がかかっています。

 

 

cargo

 

 

 

追記:

第三次補正予算の内容を見れば、いかに菅政権が国民を見捨て、中小企業を潰す「経済構造の転換」とやらに注力しているかがうかがえる。

 

出典:財務省